('A`)は撃鉄のようです
- 116 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:35:54 ID:WFAf4TNY0
≪1≫
デミタスはドクオの反応から答え察した。
素直クールの居場所はここで間違いない。
しかしドクオがそれを即答しないという事は、デミタスの問いは僅かにも彼の警戒心を逆撫でた事になる。
デミタスはもう一度だけ顔に笑みを張り付け、話を再開した。
(´^_ゝ^`)「いやぁ、べつに私は怪しい者じゃあないですよ。
疑ってるなら、まずは身分を証明しましょうか」
(´^_ゝ^`)「私はデミタス。壁の向こう側の――メシウマという所から来た、ただのお迎えです。
立場としてはフリーランスの下っ端ですかね。要は雑用ですよ」
(´^_ゝ^`)「今回は彼女、素直クールさんの親族から依頼を受けましてね。
もう長いこと行方不明で、やっと見つけたから迎えに行ってくれと――」
(;'A`)「……」
(´^_ゝ^`)「……」
(´^_ゝ^`)「下手な言葉を出さないのは、利口の証拠だな」
張り付けた笑顔の下から、沈着な言葉が漏れ出てくる。
そして先の言葉を自ら否定するように、デミタスは立て続けに言い放った。
(´^_ゝ^`)「他人の笑顔を信じる奴は馬鹿だ。
特に仮面みたいに表情を変えられる、俺みたいなのは信じちゃあいけねぇ」
.
- 117 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:37:19 ID:WFAf4TNY0
デミタスは、笑顔の仮面を外した。
(´・_ゝ・`)「猶予は一週間だ」
(;'A`)「……あぁ?」
(´・_ゝ・`)「この町を潰されたくなかったら素直クールを差し出せ」
(´・_ゝ・`)「それだけだ。一週間後、また来る」
(;'A`)「は……? お前、何言ってんだ……?」
ドクオが狼狽している間に、デミタスは勝手に小屋を離れていく。
一人残されたドクオは、未だに事の大きさを把握してはいない。
“向こう側”。
レムナントにおいて“向こう側”がどれだけの脅威を示すものなのか、この時のドクオはそれを知らなかった。
.
- 118 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:39:02 ID:WFAf4TNY0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
デミタス達は荒野の一角をキャンプ地としていた。
キャンプ地には二台の車と二つのテントが配置され、その中心には粗末な出来の焚き火があった。
(`・ω・´)「あんなので良かったのか?」
焚き火を挟んでデミタスと向かい合い、シャキンはカップ麺を啜りながら言った。
先程のドクオへの対応――というには余りにも一方的な宣告。彼には、あれがどうにも気になっていた。
(´・_ゝ・`)「しゃーないだろ。だってあいつらメシ食ってる最中だったっぽいし……」
(`・ω・´)「まぁ、確かにメシは邪魔されたくないな」 ズルズル
(´・_ゝ・`)「あいつらの晩飯カレーだぞカレー。そんで俺らはカップ麺ってどういう事だ」
(`・ω・´)「お前が即席米忘れたからだろ」ズルズル
(´・_ゝ・`)「マジやってらんねー世界滅亡しろ」
(`・ω・´)「三分経ったぞ」
(´・_ゝ・`)「世界始まったわ」
デミタスもカップ麺を食べ始めた。
.
- 119 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:40:00 ID:WFAf4TNY0
(´・_ゝ・`)「まー大丈夫っしょ」ズルズル
(`・ω・´)「なにが」ズルズル
(´・_ゝ・`)「もうあの町で素直クール庇ってんのガキ二人だけだし」ズルズル
(`・ω・´)「ああ」ズルズル
(´・_ゝ・`)「そのガキ二人も一人は沈黙、もう一人はカレー食いやがってあの野郎」ズルズル
(`・ω・´)「おう」ゲップ
(´・_ゝ・`)「まーあとは厳しい現実が素直クールを町から追い出すに決まってる。
問題はこっから一週間、俺らの食生活が三食カップ麺確定ってところだよ」 ズールズルズル
(`・ω・´)「いや、メシならあの町でなんか買えばいいだろ」
(´・_ゝ・`)「お前バカだなぁ」 ゲプ
(`・ω・´)「米忘れたバカが何を」
(´・_ゝ・`)「ああそれノーカンだから」
(´・_ゝ・`)「つーか俺らがここに居るのは監視の意味もあるんだぞ?
なのにむざむざ町で買い物したら」
(´^_ゝ^`)「あーうぃっす! あんたら監視してまっす! うぃーっす!」
(´・_ゝ・`)「って言ってるようなモンだぞ?」
(`・ω・´)「……まぁ例えはバカっぽいが、言いたい事は分かった」
(`・ω・´)「とりあえず、今はカップ麺生活に耐えるしかないな……」
(´・_ゝ・`)(もうレトルトカレー飲むかー)
.
- 120 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:40:42 ID:WFAf4TNY0
デミタスがドクオの小屋を訪ねてから五日後、ドクオはようやく町の違和感に気付いた。
町の人々がドクオ、素直クールを避けるように生活しているのだ。
元々が根暗クソ野郎なので、ドクオもこの程度の事は気のせいだと高を括っていた。
しかし違和感は日に日に積もり、それは僅か五日にして確信に変わった。
八百屋のおばちゃんの一言が、ドクオの疑念を確信に変えたのだった。
(゜д゜;@「早く、町を出たほうが良い」
.
- 121 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:41:22 ID:WFAf4TNY0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
第二話 「黄昏ゆく者達」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
.
- 122 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:42:14 ID:WFAf4TNY0
≪2≫
( 'A`)「……町の様子がおかしい」
夕食の後、ドクオは小声で語りかけた。
川 ゚ -゚)「んー? なんだってー?」
クールは皿洗いの手を止め、台所を離れてドクオの前の席に腰掛けた。
('A`)「町の様子が変だ。みんな俺達を避けてる」
川 ゚ -゚)「……そうか?」
(;'A`)「そうかって、お前あのエクストでさえ話しかけて来ないんだぞ!?」
川 ゚ -゚)「喧嘩してそうなった事は沢山あるだろう」
(;'A`)「そりゃ喧嘩したらの話だ! 今度のはまるで心当たりがなっ……」
ドクオは唐突に言葉を切り上げた。
無いと言いかけた心当たりが、ぽっと脳裏に浮かび上がったのだ。
(;'A`)「……」
町を潰されたくなければ素直クールを差し出せ。
あの男――デミタスの言葉が真実だったとすれば、この状況全てに説明がつく。
すると、今度は多くの疑問は頭に浮かんだ。
デミタスが素直クールを要求し、その為に町一つを人質にする理由。
そして彼にこれだけの行為を可能とさせる後ろ盾の有無、並びに彼が町制圧に相応する十分な武力を保持しているかどうか……。
.
- 123 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:48:35 ID:WFAf4TNY0
それらの疑問を抱えたドクオは、存在すら忘れかけていたデミタスの言葉を思い返した。
恐らく、デミタスが言ったことの殆どは嘘だろう。
その殆どに入らない真実は、ドクオが思うに二つだけ。
『メシウマという所から来た』
『もう長いこと行方不明で』
ドクオはこの二つから更に考えた。
デミタスが恐らく真実として語ったこの二つ。
ここから最低限の事実だけを確定していけば、推測は容易に並び立てられた。
素直クールは壁の向こう側で生活していた。
それが何かの出来事によって続けられなくなり、最終的に空から落ちる事となった。
彼女には追手がある。追手の存在は、敵の存在を証明している。
その敵も自分自身で出向かずデミタスを送ってきた辺り、金か人脈、少なくとも能力者である素直クールを退却に追い込むだけの実力を持っている。
ここでようやく、疑問の一つが解消された。
デミタスには後ろ盾がある筈だ。
そしてデミタス自身にも町を潰し、素直クールと互角の能力があると考えられた。
実力行使が可能なだけの力を、デミタスは持っているのだ。
.
- 124 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:49:46 ID:WFAf4TNY0
(;'A`)(……って事は、クーは人に追われるだけの事をやっていたのか……?)
ドクオは素直クールと出会ってから、彼女の素性というものに一切触れてこなかった。
常識的に考えれば “空から降ってきた女性” などというミステリアス極まりない人物には質問攻めが常だ。
なのに何故ドクオが今まで質問を避けてきたかと言えば、やはり彼の中に“理解は忘却の入り口だ”という考えがあるからだった。
しかし、今度の疑問と考察は、素直クールの素性を推察するに至った。
ドクオ自身、無意識に避けていた彼女の素性にも、否応無しに触れざるを得なかった。
(;'A`)「……」
川;゚ -゚)「……一体どうしたんだ? そんな顔して」
(;'A`)「これが真顔だよ!!」
残る疑問は、デミタスが素直クールを要求し、その為に町一つを人質にする理由。
これの明確な答えを得るには、やはり素直クール本人に聞くのが一番早く確実だが――。
(;'A`)(でも……聞いていいのか? 聞いたら、俺はどうなるんだ……?)
(;'A`)(町の様子がおかしいのも、あのデミタスとかいうのが来たのも、全部クーが原因だとすれば……)
(;'A`)(……俺はコイツを差し出すのか?)
無理だ。
ドクオの思考が反射的に答える。
(;'A`)(……だったら俺は、コイツを守れるのか?)
(;'A`)(能力者かもしれないデミタスから逃げて、その先もずっと生活できるのか……?)
.
- 125 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:51:21 ID:WFAf4TNY0
(;'A`)「……」
ぐにゃり。
ドクオは慣れない作り笑顔をし、顔を歪めた。
(;'∀`)「……な、なぁ……旅行でも行かないか?」
川;゚ -゚)「旅行?」
(;'∀`)「おう。軽く一年くらいでバァーっと世界を回るんだ」
川;゚ -゚)「えっと、町の様子が変だっていう話じゃなかったのか?」
(;'∀`)「……」
川;゚ -゚)「お前の様子が一番変だぞ……本当にどうした?」
.
- 126 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:52:22 ID:WFAf4TNY0
(;'∀`)「……オレ、町の様子が変に見えるくらい気が張ってんだよ。
だから旅行とかいいな~って思うわけでさ、どうよ?」
川;゚ -゚)「……まったく」
もう分かったと言わんばかりに、彼女はテーブル頬杖を突いてだらしなく構えた。
川;゚ -゚)「なにか聞きたい事でもあるのか?」
その言葉にドクオの顔が歪んだまま強張る。
どう答えるべきか戸惑い、口先の切れが更に鈍った。
(;'∀`)「……クールの生まれ故郷とか、知りたいなぁ~……とか」
川 ゚ -゚)「……」
(;'∀`)「……」
断片的な沈黙が二人を遮る。
ドクオはもう、彼女の顔を直視できなかった。
.
- 127 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:53:57 ID:WFAf4TNY0
川 ゚ -゚)「生まれ故郷は、ここからずっと遠い場所だ」
やがて、彼女は溜息交じりに話し始めた。
川 ゚ -゚)「聞きたいのは、この先の事情だな?
どうして私がそこを出てきたのか――とか。とにかく、今まで君が聞かなかったこと全て」
川 ゚ -゚)「……悪いが私から話せることは少ない。
だから出来れば君から質問してもらいたい。そっちの方が楽だ」
それから若干の間があった。
ドクオはまだ決心がついていなかった。
頭の中で質問を作り上げ、ドクオはそれを慎重に発した。
(;'A`)「……どうして、空から落ちてきたんだ?」
川 ゚ -゚)「話せない」
(;'A`)「……どこまでなら話せる?」
川 ゚ -゚)「……その聞き方はズルイな」
彼女は微笑んで答えた。
川 ゚ -゚)「まぁ、ある者と戦い、その結果、空から落ちたと言っておこう」
(;'A`)「ある者って?」
川 ゚ -゚)「答えられない」
切り捨てるように即答された。
ドクオはこれ以上質問を掘り下げることを諦めた。
.
- 128 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:55:26 ID:WFAf4TNY0
(;'A`)「こないだ、デミタスって奴がウチに来たよな」
川 ゚ -゚)「こないだ……カレーの日か」
(;'A`)「そいつは言った」
(;'A`)「町を潰されたくなければ、素直クールを差し出せ。猶予は一週間だと」
(;'A`)「たぶん町の違和感はデミタスが原因だ。なんかしやがったのは間違いない。
でも俺は、お前がアイツに追われる理由が何一つ分からないんだ」
川 ゚ -゚)「……人に追われるだけの事は、してきた」
本命の質問に、一番望まなかった答えが返ってきた。
.
- 129 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:56:42 ID:WFAf4TNY0
(;'A`)「……今まで何をしてきたんだ?」
川 ゚ -゚)「答えられない」
(;'A`)「なんで答えられねぇ?」
川 ゚ -゚)「……すまん」
それすら答えられないのか。
ドクオは奥歯を噛み締め、また別のことを問いかけた。
(;'A`)「……クールはデミタスについていくのか?」
川 ゚ -゚)「それはないな。危なくなれば私は逃げ出す」
(;'A`)「戦えないのか? その、クールには超能力もあるんだし」
川;゚ -゚)「いやいや私のは凶悪すぎる。手加減の効く領域には無いんだ」
.
- 130 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:58:37 ID:WFAf4TNY0
(;'A`)「……」
これ以上、何を聞けばいいのか分からなかった。
ただ、少しの問い掛けで分かったことと言えば、素直クール自身が“追われても仕方ない”と高を括っているという事だけだった。
レムナントは無法の荒野だ。だからこそ“追われても仕方ない”ような人間はレムナントに集まってくる。
恐らく彼女もその一人。無法に頼らなければ身を守れない状況が、彼女をレムナントまで追い込んだのだ。
ドクオは改めて思案した。
思案すると同時に、その考えを口に出した。
(;'A`)「……俺はこんな町どうでもいいんだ」
(;'A`)「どうでもいい。いつ出て行ってもいい。
それこそデミタスに町が潰されたって興味も湧かねえ」
(;'A`)「でもクールは駄目だ。お前は……!」
(;'A`)「……ここで手放したらもう二度と取り戻せない。
だからお前が逃げるっていうなら俺も連れてってくれ。まぁ駄目でも勝手についていく」
川;゚ -゚)「すごい勝手だな」
(;'A`)「そんで逃げるなら明日の朝だ。
期限の一週間はもう五日経ってる。タイミングは明日しかない」
川;゚ -゚)「またすごい急だな」
(;'A`)「どうする? いっそ今から町を出ても……」
焦燥が表に出てきたのか、ドクオは口早にそう言った。
彼は既に必死だった。過去五年間の中で積み上げてきた素直クールとの時間は、それほど深く彼の心中に根付いていた。
.
- 131 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 22:59:31 ID:WFAf4TNY0
川;゚ -゚)「そうだなぁ」
慌て始めたドクオを見るや、クールが訝しげに呟いた。
その呟き一つで、ドクオは手懐けられた犬のように押し黙った。
彼女は居直り、落ち着いた声色で続けた。
川 ゚ -゚)「まぁ、とりあえず様子見で数日、町を離れるとしよう」
(;'A`)「マジか!? んじゃもう荷造りしねえと!」
川;゚ -゚)「だぁもう! 少し落ち着け!」
クールは手近にあった輪ゴムを指に掛け、今にも出発の準備を始めそうなドクオに向けて輪ゴムを発射した。
輪ゴムはドクオの鼻っ柱に直撃し、痛々しい音を立てた。
('A`)「イタイッス・・・」
川;゚ -゚)「人の話は最後まで聞けって、教えたと思うんだが……」
彼女は露骨に咳払いをし、話を再開した。
.
- 132 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:00:15 ID:WFAf4TNY0
川 ゚ -゚)「タイミングは明日、君が言った通りのタイミングだ。
時間にして早朝四時。今から五時間後ジャストに町を出るぞ」
(;'A`)「お、おう……!」
川 ゚ -゚)「荷物は最小限。エロ本とか余計なものはダメだからな」
('A`)
('A`)「ああ!」
川 ゚ -゚)「……今の間は?」
(;'A`)「ああ!」
ドクオはそれ以上答えなかった。
.
- 133 名も無きAAのようです 2013/04/03(水) 23:01:09 ID:f1HDUgGc0
- しぇn
- 134 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:01:25 ID:WFAf4TNY0
それから二人は幾つかの打ち合わせを済ませた。
デミタスが追ってくる事も想定し、その為の逃走経路もレムナントの地図上で大まかに決定した。
現状持ち合わせている食料、資金なども把握し、最低限の物をバックパックに詰め込んだ。
残る準備は、個人の荷物整理だけとなった。
川 ゚ -゚)「最終目的地はレムナント中央の繁華街クソワロタだ。
いいか、何があってもここへ行くんだぞ? 私が居なくても、だ」
( 'A`)「分かった。じゃ今度こそ荷造りだよな」
川 ゚ -゚)「ちゃんと時間には起きてくれよ」
二人はそれを最後に席を立ち、それぞれの部屋で荷物をまとめ始めた。
.
- 135 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:02:26 ID:WFAf4TNY0
(;'A`)(シコるのマジでどうすっかな……)
自室に入った途端、ドクオは早速自慰の如何について考え始めた。
数年前にエクストにもらったエロ本からオナニーの存在を知り、それから毎日欠かさず発射してきたドクオ。
(;'A`)(一週間以上のオナ禁は無理だ……一週間以内にシコれる環境になるのか?)
どうしようもないオナニークソ野郎は、とりあえず衣類をまとめて荷物を作った。
('A`)(……でもまぁ)
('∀`)(これで安心だな)
やがて荷物の整理を終えると、ドクオはふわふわとした気分のままベッドに横になった。
明日からはこの不安も無くなって、また近いうちに以前と変わらない生活に戻れる。
間もなく、ドクオはすやすやと安堵交じりの寝息を立て、眠りに落ちた。
.
- 136 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:15:48 ID:WFAf4TNY0
≪3≫
目が覚めた途端、肉体の不自由がドクオの寝ぼけた頭を覚醒させた。
頬に当たる感触が冷たい。床板だ。
腕も後ろ手に縛られている。脚も膝、くるぶしの部分で強く拘束されていた。
――やられた。
ドクオの不安が、一つの結論を弾き出した。
こうなる事は半ば想像できていた。
人質を構えて脅迫してくるような相手なら、そもそも素直クールを力尽くで奪い取れたのだ。
それこそ誘拐という手段を用いれば、一切の無駄無くデミタスの仕事は終わる。
誘拐は一番警戒しなければならない事だった。
警戒を怠ったのは、もう大丈夫だという漠然とした安心感のせいだった。
.
- 137 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:19:22 ID:WFAf4TNY0
(; A )(……待てよ、だったらなんで最初に脅迫してきたんだ……?)
(; A )(誘拐するなら気なら、最初から俺に存在を知らせる必要は……)
その疑問が晴れると同時に、何者かが小屋に入ってきた。
足音は多少迷った後、ドクオの部屋に近づいた。
(; A )(……)
窓が無いので部屋は薄暗かったが、ドクオはなんとか体を捻り、部屋の扉が見えるような体勢になった。
先程の疑問の答えが合ってるなら――。
間もなくドアが開き、そして、一人の男が部屋に現れた。
.
- 138 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:20:25 ID:WFAf4TNY0
<_プ-゚)フ「……」
男の顔を見た瞬間、ドクオの中で感情が弾けた。
(; A )「お前っ……!」
(# A゚)「お前ッ……!」
(# A゚)「売りやがったな!! クールを、あいつに!!」
ドクオはまた体勢を変えて床を腹這いになり、男の足元まで這いずった。
男――エクストが無機質な視線でドクオを捉える。彼の目は、まるでもう遠くを見ているかのように冷たかった。
<_プ-゚)フ「……町の総意だ。本当なら、まだ一日残っていた」
(# A゚)「なんだよそりゃあ……じゃあこの五日間はお情けだったってか……?」
(# A゚)「ふざけんなっ……俺はお前らを信じっ……」
ドクオは言葉を切り上げた。
(# A゚)「――全部裏切りやがった!! 何もかも!!」
怒号が闇に響く。
エクストは眼下のドクオを見下ろし、言い淀むことなく言った。
<_プ-゚)フ「これは、クールさんも納得済みの事だ」
(# A゚)「っ……」
途端、ドクオの気迫から鋭さが消えた。
感情が行方を失い、ドクオは目を見開いたまま沈黙した。
.
- 139 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:21:05 ID:WFAf4TNY0
<_プ-゚)フ「……」
(# A゚)「……」
<_プ-゚)フ「……朝になったら町の奴がお前を助けに来る。
後はもう好きにしろ。お前の自由だ」
(# A゚)「……お前ッ……!」
<_プ-゚)フ「お前一人のワガママで、町を潰される訳にはいかねえんだ」
エクストはドクオに背を向け、最後に一言だけ残して部屋を出て行った。
<_プ-゚)フ「俺は、この町を出る」
.
- 140 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:23:27 ID:WFAf4TNY0
(# A )「ふざけんな……」
(# A゚)「ふざけんじゃねえぞエクスト!!」
ドクオは、誰も居ない闇に向かって吼えた。
(# A゚)「殺す……ここでブッ殺してやる! 縄を解け! てめえはここで殺す!
あいつを売りやがったっ……町の奴全員も! 死ね!! 俺を裏切りやがった奴全員殺してやる!!」
(# A )「ああそうだ、信じた俺が馬鹿だった!! お前らは最初からクソだった!!
情なんか微塵もねえ……この町には何も無かった!!」
(# A゚)「ドブの中で笑ってた俺は笑えただろ! なぁおい!! おい!!」
.
- 141 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:24:19 ID:WFAf4TNY0
彼の叫びに応えるように、また部屋の扉が開き、男が入ってきた。
しかし今度はエクストではなかった。
見慣れない顔だったが、その張り付けた笑みには見覚えがあった。
(´^_ゝ^`)「どーもおこんばんは」
(# A゚)「……デミタス……!」
嘲笑してから、デミタスはあの時と同じように笑顔の仮面を外した。
(´・_ゝ・`)「……つってな。久し振り。元気そうじゃん」
(´・_ゝ・`)「今から素直クールをメシウマまで送ってくる。
協力感謝するぜ。お前の友達のおかげで手間が省けた」
(# A゚)「手間だと……!?」
(´・_ゝ・`)「……あらら聞いてない? ま、あの性格ならそうなるか」
デミタスは一人合点したまま話を続けた。
.
- 142 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:24:59 ID:WFAf4TNY0
(´・_ゝ・`)「そんでまぁエクストだが、奴は俺と一緒にメシウマへ行きたいそうだ」
(´・_ゝ・`)「んで、それが俺達に素直クールを引き渡す条件だった。言ってる意味、分かるよな?」
(# A゚)「……」
素直クールを売り、自分は新しい場所で裕福な生活を送る……。
そう思うと、ドクオの腹底であっという間に憎悪が膨れ上がった。
(´・_ゝ・`)「……じゃあな。もう会わないだろうけど、お幸せに」
全部エクストがやったのか。
そう思った時、鮮烈なフラッシュバックがドクオの意識を寸断した。
彼がこれまで手にした全て。
その一切が、闇の中に砕け散って消えた。
.
- 143 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:25:48 ID:WFAf4TNY0
≪4≫
(`・ω・´)「車の運転は出来るか?」
出発の準備を進めながら、シャキンがエクストに聞いた。
エクストは車の荷台に荷物を乗せてから、「できます」と短く返した。
(´・_ゝ・`)「んじゃお前はシャキンの車に乗れ。一人でだ。ちゃんとついて来いよ」
<_プ-゚)フ「はい」
また短く答える。
エクストは機械的な動きでデミタスを見ると、彼に一礼してからシャキンの車に乗り込んだ。
シャキンは振り返り、鋭い視線を素直クールに投げ掛けた。
(`・ω・´)「……一応聞くが、逃げ出すつもりは?」
川 ゚ -゚)「無い」
(`・ω・´)「結構だ」
デミタスは運転席に、助手席には素直クールが座った。
そして助手席の後ろにシャキンが乗ると、いよいよ車からエンジン音が上がりだした。
.
- 144 名も無きAAのようです[sage] 2013/04/03(水) 23:26:31 ID:WFAf4TNY0
(´・_ゝ・`)「……なぁよ」
車を走り出せる状態にし、デミタスはふと呟いた。
(´・_ゝ・`)「あのガキ、きっと後悔するぜ」
川 ゚ -゚)「……残せるものは残してきた。後は彼次第だ」
(´・_ゝ・`)「違う。エクストとかいう方のガキだ」
デミタスは少し声を荒げた。
(´・_ゝ・`)「あいつの考えは大体分かる。だが馬鹿げた考えだ。
お前から言ってやれよ。ガキはガキらしくしてろって」
川 ゚ -゚)「……なぜだ?」
クールは頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出した。
(´・_ゝ・`)「……」
数秒沈黙した後、デミタスは小さな声で吐き捨てた。
(´・_ゝ・`)「そう言ってくれる奴が俺には居なかった。そんだけだ」
間もなく、車は砂煙を巻き上げて走り出した。
現在時刻は午前二時。三時間後には壁の向こう――メシウマに着く。
.
- 147 名も無きAAのようです 2013/04/03(水) 23:43:02 ID:f1HDUgGc0
- 乙
さすが読み応えがあるな
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