('A`)は撃鉄のようです

247  ◆gFPbblEHlQ[sage] 2015/05/21(木) 22:56:08 ID:ZATrzIH.0

≪1≫


【一年前、なおるよの実家】


【以下、レムナント監獄に入っていたなおるよ】

  ハ_ハ  
('(゚∀゚∩ 「みんな~」
 ヽ  〈 
  ヽヽ_)



【以下、なおるよの弟妹6人】

  \ワイワイ/
      ハ,,ハ   ハ_ハ \ドッ/
  ハ_ハ('(゚∀゚∩∩゚∀゚)'ハ,,ハ  
(^( ゚∀) ハ_ハ Y ハ,,ハ('(゚∀゚∩
  )  (^(    )^)    )^)   〈
  (_ノ_ノ )  /´ `ヽ  ( ヽヽ_)
     (_ノ_ノ     ヽ_ヽ_)
248 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 22:57:01 ID:ZATrzIH.0

('(゚∀゚∩「にーちゃん!」(六男)

('(゚∀゚∩「兄ちゃん!」 (五男)

('(゚∀゚∩「兄ちゃんだ!」 (四男)

('(゚∀゚∩「おみやげだ!」 (三男)

('(゚∀゚∩「みんな手を洗ってから食べるんだぜ!」 (次男)

('(゚ー゚*∩「兄ちゃんおかえり!」 (長女)


('(゚∀゚∩「ただいまだよ! なおるね(五男)は元気だった?」

('(゚∀゚∩「今日は隣のおばさんにオヤツ貰ったよ!」 (五男)

('(゚∀゚∩「おおっ! それは良かったんだよ~!」


('(゚∀゚∩「……なおるかな(長女)、あっちで御土産広げてくるといいんだよ!」

('(゚ー゚*∩「……分かった! みんな、あっち行くよ!」 (長女)

('(゚∀゚∩「一番乗りなんだよ!」 (三男)

('(゚∀゚∩「ぼく一番大きいの食べる!」 (六男)

('(゚∀゚;∩「ずるい!」 (五男)

('(゚∀゚;∩「みんな手を洗ってからだよ~」 (四男)

.
249 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 22:57:41 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚∩「……兄ちゃん」 (次男)

('(゚∀゚∩「ん? どうしたんだよ?」

('(゚∀゚∩「……やっぱ俺も働きに……」 (次男)

('(゚∀゚∩「それはダメだよ! みんなの面倒を見られるの、なおるぜ(次男)だけなんだよ」

('(゚∀゚;∩「でもっ! 兄ちゃんが体壊したらみんな悲しむぜ!?」 (次男)

('(゚∀゚∩「……ごめんね」



('(゚∀゚∩「……今度、ちょっと長い出稼ぎにいってくるよ。
      いつ帰れるか分かんないけど、いっぱいお金貰って帰ってくるよ」

('(゚∀゚;∩「……危ない橋は渡らないでほしいぜ」 (次男)

('(゚∀゚∩「その橋を渡れるのは僕だけなんだよ、分かってほしいんだよ。
     大丈夫、絶対に帰ってくるよ――」


.
250 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 22:58:22 ID:ZATrzIH.0



 ――なおるよは、唸るようなエンジン音で目を覚ました。


('(゚∀゚∩(……良い夢を見たんだよ)


.
251 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 22:59:17 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

       第二十一話 「不治のくらやみ その1」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

.
252 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:00:43 ID:ZATrzIH.0



 ドクオとミルナはその日の内に酒場・バーボンを出発する事にした。
 逸早く目的地に行き、今出来ることをやる為に。

('A`)「よっし。大体オッケーだ」

 店の軽トラックを無断拝借して車の荷台に銃器を積み終えると、ドクオはすぐさま運転席に乗り込んだ。
 ミルナは先んじて助手席に座り、アホ面で荒野を眺めていた。


( ゚д゚ )「……」

('A`)「なんだよ、まだ気分悪いのか? 昨日も変だったし」

( ゚д゚ )「これが俺のデフォだ。覚えとくんだな」

(;'A`)「そんなツラで偉そうに……車、揺れるからな。吐くなよ」

 ドクオはキーを回し、レバーやハンドルをガチャガチャして車を発進させた。
 次なる目的地はレムナントの中心街・クソワロタだ。



( ゚д゚ )「……」

 気の抜けた様子のミルナ。
 しかし彼は、周囲に隠れ潜んでいる なおるよ の気配を鋭敏に察知していた。

( ゚д゚ )(普通の感知能力なら見逃すんだろうが、tanasinnの感知能力に弱点は無い。
     お前が何をしたいかは知らんが、場合によっては……)

 場合によっては、殺すつもりだった。
 人を殺すということに対して、今の彼には迷いも戸惑いもなかった。

.
253 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:02:05 ID:ZATrzIH.0








('(゚∀゚;∩(……ああ、行っちゃった)

 なおるよは岩場の陰に身を潜め、望遠鏡を構えてドクオ達を見ていた。


('(゚∀゚∩(予定より早いけど、ドクオを追って街に入らなきゃ)

('(゚∀゚;∩(また長距離移動……がんばろう……)


 車が土煙を上げて走っていくのを確認してから、彼もリュックを背負って歩き出した。
 彼が今こうしているのは、監獄で棺桶死オサムと交わした約束があるからだった。


.
254 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:03:05 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 棺桶死オサムが行動を起こしたのは、ドクオがレムナント監獄を出発した直後だった。
 なおるよを故郷に送り返すという名目で二人きりになった時、オサムはなおるよに、ある頼みを持ちかけた。


【+  】ゞ゚)「お前に、ミルナという男を追って欲しい」

('(゚∀゚∩「……なんで?」

 なおるよは首をかしげて聞き返した。

【+  】ゞ゚)「向こうに感知能力があった場合、俺では確実に気付かれる。
       だが、お前の無効化があれば気付かれずに追跡出来るはずだ」


('(゚∀゚∩「……オサムも恩人だよ。
     だから受けた恩は返すけど、頼み事があるならちゃんと話さないとダメだよ」

【+  】ゞ゚;)(……子供に正論を語られた……)

 彼の正論を受け入れ、オサムは大人ぶるのを止めた。

.
255 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:03:52 ID:ZATrzIH.0


【+  】ゞ゚)「なんと言うかな……ちょっと気になっててな。
       こないだの戦いで、向こう側の奴が俺に言ったんだ」

 オサムは脳裏にシャキンの顔を思い浮かべて言った。

【+  】ゞ゚)「――『ミルナに気をつけろ』。
       たったそれだけ、本当に一言なんだが、気になっている」


('(゚∀゚∩「……良い意味で? 悪い意味で?」

【+  】ゞ゚)「後者だ。ドクオとは仲が良いらしいが、信用ならん。
       仲間として受け入れるかどうか、その判断材料が欲しい」

('(゚∀゚∩「……要は、ミルナがどんな人か見てくればいいの?」

【+  】ゞ゚)「気付かれずに、だ」

 オサムは、はっきりとした口調で念を押した。


【+  】ゞ゚)「相手は監獄の最奥に幽閉されてた危険人物だ。
        もし引き受けるなら、本当に気をつけてくれ」

【+  】ゞ゚)「……俺だって人殺しだが、もしもミルナが危険な奴なら、迷わずに逃げろ」

 オサムの忠告を聞いた上で、なおるよは胸を叩いてしたり顔を作った。

.
256 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:05:13 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚∩「これでも危機管理は出来る方なんだよ!
     でないと、こんな所まで出稼ぎには来れないよ!」


('(゚∀゚∩「……それに、オサムも結構その人を信用してるでしょ?
     僕に行かせるくらいだし、そこまで脅さなくてもいいんだよ!」

 なおるよの言った通り、これはオサムにとっても杞憂と言える行動だった。
 もしも、万が一、仮に――そういう言葉を並べた末に思いついた、なおるよという保険。
 この時の棺桶死オサムは、まだその程度の危機感しか覚えていなかったのだ。


【+  】ゞ゚)「……まあ、ドクオと仲が良いからな。
       ある程度なら信用出来ると、思っている」

('(゚∀゚∩「……まぁ追っかけるのは正直面倒だけど、恩返しって大抵面倒だからね」

【+  】ゞ゚;)「その年で何を言ってるんだお前は……」



('(゚∀゚∩「オサムの頼み、引き受けるんだよ」

 その後、オサムから事細かに注意を言い渡されたなおるよは、
 リュックを背負ってレムナントの荒野を歩き出した。


.
257 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:06:16 ID:ZATrzIH.0



 ――なおるよが監獄を出発して数分後。


(。人。)



('(゚∀゚∩


('(゚∀゚;∩(オッパイが落ちてる……)

('(゚∀゚;∩(あの垂れ具合からして、多分看守長のオッパイなんだよ……)



      ハ_ハ  (とりあえず埋めておこう……)
    ∩;゚∀゚)')
     〉  /            
   .(_/ 丿  :;""'':';⌒"゛゛;:
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~^'"\(。ノ""'':,√~^ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   地面    . \,( ゚ )/
258 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:07:19 ID:ZATrzIH.0


 ――さらに数時間後、ドクオを追って入った森にて。



('(゚∀゚;∩「道に迷ったよ!」


    _,,,  チュン
   _/::o・ァ
 ∈ミ;;;ノ,ノ

('(゚∀゚∩「スズメだ! こっちで初めて見た!」



    _,,,  チュン _,,, チュン
   _/::o・ァ   _/::o・ァ
 ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ

('(゚∀゚*∩「増えた! かわいいんだよ!」



    _,,,  チュン _,,, チュン  _,,, チュン
   _/::o・ァ   _/::o・ァ   _/::o・ァ
 ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ
     。
('(゚∀゚*∩「エサあげたら懐くかな~……」


.
259 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:08:15 ID:ZATrzIH.0


  \KILL/ \YOU/
    _,,,      _,,,     _,,, 
   _/::o・ア   _/::o・ア   _/::o・ア <エサ置いてけ
 ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ  ∈ミ;;;ノ,ノ


    。
('(゚∀゚∩


('(゚∀゚∩`。 ポロッ

 ※このあと食料の大半を渡して和解、道案内をしてもらった。
260 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:10:03 ID:ZATrzIH.0


 ――森の出口、すごい崖のところ。


 ヒュオオオ~……

('(゚∀゚;∩「こんなのどうやって渡ればいいの!?」



   ノノノノ
  (゚∈゚__) 「向こうまで、食べ物で送っていく」
  /⌒  )
 ミイ  //
  | ( (   【ドクオとの接触により、等価交換を学習したクックル】
  |  ) )
  | //
  | ノノ
  |ノノ
 彡ヽ`



('(゚∀゚;∩「もう食料が全然残ってないんだよ……」

( ゚∋゚)「……森の食べ物でいい」

('(゚∀゚∩「本当に!? 優しいんだよ! 取ってくる!」

 ※このあと三匹スズメに再会。残りの食料を取られ、身包みをはがされる。

.
261 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:10:53 ID:ZATrzIH.0


 ――ドクオの故郷。から少し離れた岩陰。



('(゚∀゚∩「あれがドクオの育った場所……」

('(゚∀゚;∩「……うちと良い勝負だよ、ドクオとは仲良く出来そう」



<_プー゚)フ「じゃあ俺、町の方に行って来ます」

(´・_ゝ・`)「おう。気をつけてな」



(;´・_ゝ・`)「……んで、なんだアイツ」


('(゚∀゚ |岩| コッソリ

(;´-_ゝ-`)「……誰かアレを捕まえて車に突っ込んどけ。邪魔だ」


('(゚∀゚∩「……えっ? まさか向こう側の……」


('(゚∀゚;∩「ギャー!」


 ※このあと普通に補導され、車両に突っ込まれる。

 ※ミルナが隊員を倒してる最中に頑張って逃げ出した。とても頑張った。

.
262 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:11:34 ID:ZATrzIH.0


 ――深夜。酒場・バーボン付近の岩陰。


('(゚∀゚;∩「なんか酷い目にあってばっかりだよ……」

('(゚∀゚;∩「恩返しって本当に面倒臭いよ……早く帰りたいよ……」



( ゚д゚ )「――悪いな、夜中に呼び出して」

「まったくだ。俺は明日も早いんだぞ?」


('(゚∀゚∩(ミルナと……でっかい人だよ。なんか話してる?)


「そんで話って何だよ? 悪いが金の掛かる事はッ――」

( ゚д゚ )「……」

「――……てめえッ……!」





('(゚∀゚∩(……えっ)

.
263 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:12:22 ID:ZATrzIH.0

≪2≫




('(゚∀゚;∩(あー疲れた……)

 なおるよはドクオ達に続いてレムナントの中心街・クソワロタに入った。
 既に日は落ちており、街は夜の活気に満ちていた。

 なおるよは夜の商店街を歩きつつ、適当なホテルを探した。


('(゚∀゚∩(……あのホテルとか、ドクオが選びそうだよ)

 路地に破格の安ホテルを発見し、足を止める。
 なおるよは即断してそこに入り、風呂とトイレが別になっている部屋を取った。


.
264 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:14:25 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 なおるよはリュックをベッドに放り投げた。

('(゚∀゚;∩(やっと休める……)

 壁際にあった椅子に腰掛け、電気も点けずに窓を覗く。
 路地のホテルなので壁しか見えなかったが、彼は構わずに思案し始めた。

('(゚∀゚∩「……」

('(゚∀゚∩「……殺したのかな……」

 ミルナがした事を思い返し、自分自身に問い掛けるように言う。


('(゚∀゚∩(ダディ達がここに来るまであと四日、どうしようかな……)

('(゚∀゚∩(見張りを続行する? でも、もし本当に殺してたなら危険だよ)

('(゚∀゚∩(……殺したかどうかで考えるなら、見た限り、ミルナは大男を殺した)

('(゚∀゚∩(僕個人の判断では、ここで見張りは終わり。
      殺しの事実だけをオサムに伝えて身を引くべき……)


('(゚∀゚∩(……でも、その危険に一番近づけるのも僕なんだよ)

('(゚∀゚∩(オサムが僕に声を掛けたのも、僕が超能力を打ち消す力を持ってるから)

('(゚∀゚∩(能力者相手の生存確率は僕が一番高い。逃げるだけなら一番上手いだろうし。
      危険を冒して行動できるのが僕だけなら、確証を得るまで続けるべきかな……)


.
265 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:15:45 ID:ZATrzIH.0



('(゚∀゚∩(――うん、見張りは続行する。
      明日改めてミルナ達を見つけて、追うんだよ)

 なおるよが決意を新たにした、その時。
 彼は眼下の路地裏に、二人の男を見つけた。




( '`_ノ´')
  
 かたや見知らぬ男。切れ目で、目尻には謎の刺青がある。
 彼の風体は猛々しく、なおるよの目にも彼が強者だと見て取れた。



( ゚д゚ )

 そしてもう一人の男は、件のミルナだった。

.
266 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:16:26 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩(なんでここにッ!?)バッ!

 なおるよは咄嗟に窓から離れた。
 ミルナの顔を見てビクンと跳ねた心臓に手を当て、息を殺す。


('(゚∀゚;∩(やっぱりこの辺のホテルに泊まってたんだよ……!)

('(゚∀゚;∩(……感知能力を発動される前に、こっちも能力を発動して……)

 なおるよはゴクリと音を立てて生唾を飲み込み、今さっきの決意を強く念じた。

('(゚∀゚;∩(……ミルナを追いかけるんだよ……!)


.
267 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:19:11 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 人気のない場所に到着して間もなく、男は振り返ってミルナと向き合った。
 両手を後ろに組み、鋭い視線をミルナに投げかける。


( '`_ノ´')「アナタ、何者カ?」

( ゚д゚ )「……見ての通りだが」

( '`_ノ´')「……ナラ、喧嘩屋?」

( ゚д゚ )「そう見えるなら」

( '`_ノ´')「……コノ街、意外と喧嘩屋は少ナイ。
      見ての通りの喧嘩屋にしてハ、アナタ、目が優しい」


( '`_ノ´')「……なのに気配ハ邪悪ソノモノ。共存しないハズのモノが、アル」

( ゚д゚ )「人間色々居るんだ。その一人さ」

( '`_ノ´')「……マ、売られた喧嘩は買ウのが常ネ。さっさとやるヨ」

 男は組んでいた両手をするりと解き、大きく開いて身構えた。
 周囲の電灯から光を吸収し、能力を発動して――




.
268 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:20:47 ID:ZATrzIH.0




(; '゚_ノ´')「ハァ……ハァ……」 ボタッ・・・ボタッ・・・

 ――ものの数分で、男は両腕をちぎられていた。


( ゚д゚ )「……どうした、威勢が衰えたな」

(; '゚_ノ´')「……理解不能……」 ボタッ・・・ボタッ・・・

 ミルナの背後でうごめく黒煙を睨みつけ、男は声を絞り出した。
 黒煙は巨大な手をかたどっており、その手中には男の両腕を握っていた。

( ゚д゚ )「……」

(; '゚_ノ´')「……ココに来てカラ初めて思ったよ、マジでヤバイ……!」

( ゚д゚ )「……命までは取らん。腕は貰っていくが、逃げたきゃ逃げろ」

(; '゚,_ノ´')「フン。屈辱に甘んじて生きてくほど、自分の命に執着は無い……!」

 男は両腕の切断面から多くの血を流しながら、なおも戦意を失っていなかった。
 血に染まった狂的な笑み。ミルナはそれを見て、男を最後まで殺しきる決心をした。


(; '゚_ノ´')(弟子を育てきる前に死ぬのは未練だけど、許すネ……)

 数瞬後、男はミルナに肉薄し、最後の一撃を仕掛けた――

.
269 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:21:52 ID:ZATrzIH.0

≪3≫




 ――夜が明けていく。


 路地裏のホテルにも多少の日差しが入り込み、なおるよの部屋をほのかに照らし出す。



('(゚∀゚;∩ モゾモゾ

 埃っぽい布団から顔を出し、朝日を一瞥。

 なおるよが街に到着してから今日で四日目。
 今日はいよいよダディクール達との集合の日。今日でなおるよの仕事は終わりだ。



('(゚∀゚;∩「……」

 集合時間は午前十二時、場所は近くの噴水広場。
 徒歩10分で着けるその場所に、今日なおるよは一つの報告をしに行かねばならない。

.
270 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:23:47 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩(今日までの四日間で完全に理解した……。
      ミルナはほぼ毎晩、誰かを殺してる……)

('(゚∀゚;∩(全部見ちゃった…………)


 黒い煙。

 ミルナが使っていたそれの禍々しさは、なおるよの短い人生では到底表しきれるものではなかった。
 しかも、その煙は日を追うごとに進化していった。

 大男を殺した時は腕にまとわりつく単なる煙。
 その後、この街で最初の犠牲者になった男の時には、手の形。
 更に翌日には腕一本。昨晩には、黒煙は遂にあらゆる形状に変化出来るようになっていた。


('(゚∀゚;∩(あの能力はたぶん、人間をエサに進化してる)

('(゚∀゚;∩(……人を食べて進化する能力なんて、聞いた事ない……)

.
271 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:24:40 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩(今日はオサムと合流して、見たものを全部話すんだよ)

('(゚∀゚;∩(……でも、ミルナにも理由があるかも知れないから、ちゃんと話を……)


('(゚∀゚;∩「……」

('(゚∀゚;∩(人を殺した理由を聞いて、『そうなんだ』って言えるのかな……。
      もしかしたら僕達だってエサなのかも知れないのに……)



 ――こんこん。


 部屋のドアがノックされた。
 駆け巡る思考を止め、ドアに目を向ける。

('(゚∀゚∩(ルームサービス?)

 一瞬、そんな呑気なことを思う。
 それも束の間、弾けるような悪寒が彼の体を駆け巡った。

('(゚∀゚;∩(いやっ――これは――!)

.
272 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:25:40 ID:ZATrzIH.0


 言葉に出来なかったあの禍々しい気配、その一端がドアの向こうに確かにあった。
 次いでオサムの言葉が脳裏を過ぎる。


『もしもミルナが危険な奴なら、迷わずに逃げろ』


('(゚∀゚;∩(――逃げなきゃ!)ガタッ!

 なおるよはベッドを飛び起き、財布だけ持って窓枠に足をかけた。
 だがその時にはドアは開けられ、素早い足音が背後に迫ってきていた。

('(゚∀゚;∩(飛ぶッ! 迷ってる暇はッ――)


.
273 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:27:26 ID:ZATrzIH.0




(;'A`)「――お前ッ! なにやってんだよッッ!!」ガッ


('(゚∀゚;∩「――おおおおッ!? ドクオッ!?」

 そう言ってなおるよの肩を掴んだのは、ミルナではなくドクオだった。

('(゚∀゚;∩「な、なんでドクオ……?」

(;'A`)「っていうか先に戻れっ! 落ちるぞ!」グイッ

 ドクオに力強く引き戻され、なおるよは床に尻餅をついた。


('(゚∀゚;∩(なんでっ、なんでドクオが来たんだよ!?)


('A`;)「あッぶねえな……。おい、お前の言うとおりだったぞ!」

 ドクオは呆れた様子で振り返り、廊下に佇む男に言った。


('(゚∀゚;∩「……」

 なおるよの予感は当たっていたのだ。
 しかし、ミルナがドクオを連れて来る事までは想像が及ばなかった。

.
274 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:28:08 ID:ZATrzIH.0



( ゚д゚ )「……だから言ったろ」


('(゚∀゚;∩「……」

 なおるよは目を丸くし、しかし平静を装いながら、彼が部屋に入ってくるのを見守った。


( ゚д゚ )「何があっても、誰であろうと、絶対に見つけ出せるってな」


.
275 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:31:18 ID:ZATrzIH.0


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



( 'A`)σ「あんまり危ないことしちゃダメだぞ、分かったな」

('(゚∀゚;∩「わ、わかってるんだよ……。
      向こう側の人かと思って慌てたんだよ、もうしないよ……」

( ゚д゚ )「お前のが死にたがりだろ、何偉そうに言ってんだよ」

('A`;)「うるせぇ!」

('(゚∀゚;∩「……アハハ……」

 三人は部屋で談笑しつつ、集合時間が来るのをゆったりと待っていた。
 ただし、なおるよの内心は激しい焦燥に駆られていた。


('(゚∀゚;∩(確実にバレてる。この場所が分かったんだから、僕の見張りは絶対バレてる)

('(゚∀゚;∩(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……)

('(゚∀゚;∩(……ドクオを連れて来たのは僕を逃がさないため?
      でも正直、居場所がバレた状態でこの人から逃げ切るのは無理……)


( ゚д゚ )「――だがまぁ、怖くて逃げ出すって感じはよく分かる」

( ゚д゚ )「だから、いつでも逃げ出していいんだからな」


('(゚∀゚;∩「……えへへ。考えておくんだよ……」


.
276 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:33:19 ID:ZATrzIH.0


( 'A`)「そうだ、なおるよ」

('(゚∀゚;∩「なに?」

('A`)「お前、この先一緒に行動するのか?
    俺らを追ってきた理由、それぐらいしか浮かばないんだが」

( ゚д゚ )

('(゚∀゚;∩「……一応、そのつもりだよ」

(;'A`)「……大丈夫かよ。声震えてんぞ。
    つーかお前、たしか故郷に帰るとか言ってなかったっけ?」

('(゚∀゚;∩「……そうだね、帰らなくちゃいけないよ。家族が待ってるから」

('A`)「……だったら帰れよ。帰る場所があるんだから」

 なおるよはミルナを一瞥してから言った。
 一瞬の目の動きだったが、ミルナはしっかりとそれを把握していた。

('(゚∀゚;∩「でも、せめて、みんなに会ってから帰りたいんだよ。
      ドクオが起きた後、すぐ出発でちゃんと話せてないから……」


( ゚д゚ )「――誰かに伝言があるなら、聞くが」

 ミルナは静かに提案し、なおるよに冷たい視線を送った。


('(゚∀゚;∩「……いやっ、別に……、急いで帰る必要は、ないし……」

( ゚д゚ )「大事な話でもあるのか? ただの囚人仲間相手に」

 前のめりになり、じっとなおるよを見つめる。
 ミルナが言葉の裏に隠した真意は、明確になおるよに伝わっていた。

.
277 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:34:31 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩「……」


('(゚∀゚;∩


('(゚∀゚;∩「帰る」




('A`)「……そうしとけ。みんなには俺から言っとくよ。
    悪いな、無駄金を使わせちまって」

('(゚∀゚∩「……ううん。僕が一人で勝手に来ただけだから。
      ドクオ、僕を監獄から出してくれてありがとうなんだよ」

('∀`)「気ぃにすんなって。俺も勝手にやっただけだ」

( ゚д゚ )「慣れない先輩面なんかするなよ、似合ってないぞ」

ゞ('A`;)「うるせっ」 シッシッ


.
278 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:35:11 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚∩「……それじゃッ!」

 なおるよは元気に言って立ち上がった。


('(゚∀゚∩「早いし越した事はないし、さっさと帰るんだよ!
      みんなに『頑張れ、ありがとう、またね』って言っといてね!」

('A`)ノ 「おう。今回は短い付き合いだったけど、またな」

('(゚∀゚∩「……うん! いつか改めて、ちゃんとお礼をしに来るよ!」


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279 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:35:55 ID:ZATrzIH.0


 なおるよはテキパキとホテルのチェックアウトを済ませ、外に出た。

 表通りに行き、ドクオとミルナに見送られながら帰路を行く。
 ドクオは自分より年下のなおるよの背中を、じっと見送った。


('(゚∀゚∩「またね~~~」

('A`)ノ 「おー」

 最後に大きく手を振ってから、なおるよは軽快な駆け足でどんどん離れていった。


('A`)「……なんか、良いヤツだったな」

( ゚д゚ )「……そうだな」

('A`)「ダディがアイツを助けた理由が分かったよ。
    優しいけど向こう見ずって感じ、ちょっと話しただけで分かったぜ」

 ドクオは踵を返し、ダディクールとの待ち合わせ場所へと歩き出した。
 しかしミルナはドクオが歩き出してからもしばらく、なおるよの背中を見続けていた。


( ゚д゚ )

 やがてなおるよが角を曲がり、姿が見えなくなったところで、
 ミルナもようやくドクオの後についていった。

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280 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:38:08 ID:ZATrzIH.0

≪4≫



 なおるよは、クソワロタ周辺の荒野をとぼとぼ歩いていた。


('(゚∀゚;∩「……」

 出来るだけゆっくり、それでいて、しっかり歩いているように見せかける。
 そんな小細工で時間を稼ぎながら、なおるよは一つの可能性に身を委ねていた。


 その可能性とは、クソワロタに来ている筈の棺桶死オサムが自分を見つけるというものだった。
 棺桶死オサムにも十分な性能の感知能力がある。
 彼がそれを発動してなおるよを感知すれば、必ずなおるよを迎えに来るはずだ。


 しかし、なおるよが時間稼ぎを始めて一時間、現在午前十時。
 最早その可能性は完全に途絶え、なおるよは次の事を考えていた。

 こうなればもう一度、自分から会いに行くしかない。

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281 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:39:49 ID:ZATrzIH.0


('(゚∀゚;∩(生きて帰る。故郷に帰る。
      それだけが目的なら、このまま歩いて行けばいい……)

('(゚∀゚;∩(……家族をずっと待たせてるし……)

('(゚∀゚;∩(それに、僕じゃ絶対にミルナに捕まって終わっちゃうよ。
      オサムだってミルナが危ないって疑ってたし、たぶん何も起きないはず……)


('(゚∀゚;∩「……」 ピタッ

 なおるよは一通りの言い訳を並べ終えてから、足を止めた。


('(゚∀゚;∩「……」


('( ∀ ;∩「……~~~~~~ッ!!」 ググッ・・・


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282 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:42:13 ID:ZATrzIH.0



('(゚∀゚;∩(……ああっ! もうっ!!)


('(゚∀゚;∩(恩は勝手に返すもの!
      だからこれは恩返し! 全員分合わせてこれが最後!)

('(゚∀゚;∩(終わったら帰る! 何が何でも!) ザッ!

 なおるよは威勢よく踵を返し、クソワロタに向かって踏み出した。


('(゚∀゚;∩(僕だけがミルナのやった事を知ってる!
      真実であれ杞憂であれ、この事を誰にも伝えないのはダメだ!)

('(゚∀゚;∩(しかもミルナが人殺しなら一番危ないのはドクオじゃん!
      一番恩返ししなきゃならない人を見殺しなんて、気分悪い!)

 なおるよは足元の石ころをコツンと蹴り飛ばした。

('(゚∀゚;∩(クッソォ~~帰ったらみんなに自慢してやるんだよ!)

('(゚∀゚;∩(にいちゃんは良い事をしたんだ、悪い人を出し抜いたんだって!
      みんなに自慢して褒めちぎられないと割りに合わない!)


('(゚∀゚#∩(牛歩で稼いだ一時間時間、クソワロタには人も車も入っていかなかった!
      ってことは、オサム達はとっくに街に入ってるんだよ!)

('(゚∀゚#∩(じゃあ集合場所まで行ければ何とかなる!
       ミルナが何だって言うんだよ! チクショウ!)



('(゚∀゚#∩「……恩返しは大抵面倒。その通りなんだよ、まったく……」

 ささやかな愚痴を最後に腹を括り、そこから先、なおるよは無駄口を叩かなかった。

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283 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:43:40 ID:ZATrzIH.0


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【クソワロタ中央・噴水広場】


 噴水とは水が上に向かってドバーとしているモニュメントである。

 この噴水広場はクソワロタでは待ち合わせ場所として有名で、
 昼前の時間帯でも多くの人がここに集っていた。


(゚д゚;);'A`)「人多すぎだろ!」 ギュウギュウ

 時刻は午前十時。
 ダディクール達との待ち合わせまで、まだ二時間も残っている。
 人混みの中で待つのは辛いので、ドクオとミルナはひとまず噴水を離れた。


(;'A`)「あー都会こえー……噴水にこんな集まるってバカかよ……」

(;゚д゚ )「なんだ、都会は初めてか?」

(;'A`)「こんなん初めてだよ。なんか気分悪くなってきた……」

(; д )「俺も人混みは苦手だ。は、腹が……」

(;'A`)「前から思ってたけど腹弱いの? ださくね……」

(; д )「それ酷くないか……?」

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284 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:44:48 ID:ZATrzIH.0


(;゚д゚ )「……あーダメだ、出してくる」

(;'A`)「おう、分かった」


(;゚д゚ ) ギュルルル~


(;゚д゚ )「しばらく出してくる」

(;'A`)「どういう表現だよ。分かったから、この辺に居るから」

(;゚д゚ )「悪いな、行ってくる……」

 ウンコマンはそう言って弱々しい足取りで歩き出し、人混みに紛れてどこかに消えた。
 ドクオはそれを見届け、近くにあったベンチによろよろと腰を下ろした。


(;'A`)(あー気持ちわる……)

(; A )(ていうか、もう昼寝するっきゃねえ……) ガクッ

 ドクオは深々と俯き、眠った。

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285 名も無きAAのようです[sage] 2015/05/21(木) 23:45:28 ID:ZATrzIH.0





 人気を離れ、静かなところで立ち止まる。
 ミルナは両手をポケットにしまい、やさぐれた様子で青空を見上げた。


( ゚д゚ )(……警告はした)

 ミルナの感知能力は既になおるよを捉えていた。
 なおるよの進行方向からして、彼が噴水広場に向かって来ているのは明白だった。


( ゚д゚ )(警告を無視するなら俺も容赦はしない。
     見られたからには、それを秘密にできないなら、子供だろうと……)

 ミルナはそこから先を考えなかった。


( ゚д゚ )「……」

 沈黙の最中、ミルナの体から黒煙が立ち上り始める。
 ミルナが念じると、黒煙は彼の足元に集中した。

 軽く膝を曲げ、跳躍。
 直後、彼はその場から消えた。


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