('A`)は撃鉄のようです

201 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:10:22 ID:zp1et/P60

≪1≫


 支給された新品のスーツに袖を通し、デミタスは住処のボロアパートを後にした。
 今日でこのボロ家ともオサラバだ。そう思って口角を緩めたまま、彼はメシウマのとある場所へと自転車を走らせた。

 自然に富んだメシウマの住宅街から、自転車を漕いでとろとろと都市部へ向かう。
 十分ほどで都市部に入ると、数々の高層ビルが隙間無く立ち並んでデミタスを迎えた。


 デミタスは車道と歩道に挟まれた自転車用の道をとろとろと進んだ。
 車道の忙しなさと歩道の息苦しさに挟まれながら、朝食のゼリー飲料を悠々と飲み干す。
 必死の形相で自転車道を突っ走る謎の編集者ホマ氏も居たが、デミタスにはそんな事全然関係なかった。


 一ヶ月前、素直クールを依頼者に引き渡せた瞬間から、デミタスはスカッと爽やかな気分だった。
 ようやく踏み出せた一歩に、こぼれ出る笑みと充足感を禁じえなかった。

 今後の生活が一転し、次の目的の為に動き出せるという事は、彼にこの上ない開放感を与えていた。

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202 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:11:50 ID:zp1et/P60

(´・_ゝ・`)「おっ」

(`・ω・´)

 いくつかの曲がり角を経た先で、相棒のシャキンが道の先を走っていた。
 デミタスは立ち漕ぎでシャキンの後ろに迫ると、彼の横につき、爽やかな挨拶を送った。

(´^_ゝ^`)「おはようシャキン君! 今日もマユゲが揃ってるね!」

(`・ω・´)「そうだな」

 シャキンは有頂天のデミタスを適当にあしらった。

(´・_ゝ・`)「へーへーつれないでやんの。このコミュ障クソマユゲ」

(`・ω・´)「は? 死ね」

 慣れ親しんだ応答をしている内に、二人の視界に、雲を刺すほど巨大な建築物が飛び込んできた。
 それはメシウマの都市部、その更に中心で建設中のビル――ステーション・タワーだった。

 今日、二人は先日の素直クールの一件についてそこに呼び出されていた。
 呼び出された理由はたった一つ。仕事の報酬、その受け渡しのためだった。

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203 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:12:38 ID:zp1et/P60


 ステーション・タワーは200階からなる巨大な尖塔で、地上部分はきっかり1000メートル。
 今はその70%ほどが出来ており、完成後には街の中心として“ある機能”を有する予定だった。


(;´・_ゝ・`)「……高いな」

(`・ω・´)「落ちたら死ぬな。まぁ俺は大丈夫だが」

(´・_ゝ・`)「あとで落としてもいい?」

(`・ω・´)「ああ、一緒に落ちてやるから安心しろ」

(´・_ゝ・`)「はっはーマジうける」

 完成度70%と言えど、その高さは現在でも実に700メートル。
 落ちれば死ぬとかいう子供っぽい話をする高さではないのである。

 子供っぽい話をタワーの麓で済ませた彼らは、スーツと一緒に支給されていた案内を片手に、ステーション・タワーに入った。
 仮設エレベーターに乗り、高度300メートルまで上昇。エレベーターを降りると、新築特有の臭いが彼らの鼻を突いた。

(`・ω・´)「……どっちだ?」

(´・_ゝ・`)「迷ったことにして観光しようぜ」

 デミタスの意見は魅力的だったが、シャキンはその誘惑を絶って目的地へ歩き出した。
 冗談をガン無視されるのは普段からの事なので、デミタスも気にせずシャキンの後を追った。

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204 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:13:51 ID:zp1et/P60


 しかし、その道程は大変に険しかった。


 荷台に乗って螺旋状のスロープを爆走せざるをえない状況には三度巻き込まれた。

 トイレに変な落書きを残さないと死ぬような気がしたり、空き部屋があればそこでサンバのリズムを刻むしかなかった。

 ちなみに給湯室のコーヒーは中々の味だった。茶菓子も少し貰った。


(´・_ゝ・`)「……行くか……」

(`・ω・´)「ああ……」

 過酷な試練を乗り越えた彼らの顔は、どこか逞しく栄えていた。


 それから二十分くらい遊んでから、二人はようやく目的の一室に到着した。
 質素なスチール製のドアを前に、彼らは今一度服装を整える。

(;´・_ゝ・`)「……柄でもねえけど、やっぱ緊張するな」

(`・ω・´)「じゃあいつもみたいにしろよ」

(;´^_ゝ^`)「……そうだな!」

(`・ω・´)「……」


(`・ω・´)「ほんと呆れるほど表情変えるの上手いな」

(´・_ゝ・`)「今のは自前の笑顔だよ……」

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205 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:14:31 ID:zp1et/P60



――失礼。


 ドアの前でふらふらしていた二人の背中に、老練染みた低い声が掛かる。
 途端、二人の心臓が小さく跳ね上がった。


(;´・_ゝ・`)「あっ……」

(`・ω・´;)「……」

 二人は冷や汗を垂らして振り返った。



/ ,' 3 「ちょっとドア、開けてもらえるかね」

 書類の山を抱えた男が、山の横から顔を覗かせて言った。

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206 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:16:47 ID:zp1et/P60





 ――同日、レムナント北の電気街“イッテヨシ”。




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207 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:17:35 ID:zp1et/P60


爪'ー`)「んじゃあ行ってくる! 色々助かった。また何かあったら世話になるぜ!」


('A`)「……世話んなりました……」


( ・-・ )「……」

 男はソファに座ってそっぽを向いたまま、フォックス達に軽く手を振って見せた。
 二人はそれを見ると、玄関を出て、街の外へと向かった。

 ドクオはもう、立ち止まることを忘れていた。

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208 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:18:20 ID:zp1et/P60


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       第四話 「そして明日へと歩き出す」

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209 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:20:50 ID:zp1et/P60


 レムナントとメシウマを断絶して一周する“壁”。
 学者などの一部の人間は、あの壁のことを“明暗の境”だとか“tanasinnの内側”だとか呼んでいた。

 壁の建造理由は一切不明。
 古代文明の云々という説もあるが、壁についての具体的な確証は未だに得られていない。
 だが長年の研究の結果、あの壁はレムナントを囲んでいるだけの平凡な壁として決着がついていた。

 堅い、デカイ、分厚い。
 要はそれだけの、ただの壁なのだった。


 一方、ドクオとフォックスの二人は今、その壁沿いにある“廃棄物搬入口”を目指してレムナントの荒野を歩いていた。

 壁には出入り口となる通路がレムナントの東西に一つずつ、二ヶ所だけ存在している。
 コンクリートで舗装された道の先に、黒い穴のようなトンネルが開通しているのだ。

 ただしトンネルは基本的に完全封鎖、開けるにも特別な審査と相応の身分が必要。
 端的に言えば、レムナントで育った人間がメシウマ側へ入ることは絶対に不可能である。

 しかしレムナントとメシウマの間に蟻一匹の通る道も無いのかと問われれば、そういう道は、確かに存在しているのだった。


 メシウマはかつて、ゴミ処理を筆頭とした環境問題に直面したことがある。

 増え続ける人口、莫大な金額を弾き出す生産と消費のルーチン。他国の世界進出に伴う輸出入の激化。
 対し、相対的に悪化していくメシウマの自然環境。ゴミ処理場の増設及びその24時間稼働と、騒音異臭など他様々な問題。
 当時の各メディアはこれら環境問題と政府の無能さを大いにバッシングし、街には瞬く間に政府のネガティブイメージが流布した。

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210 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:21:39 ID:zp1et/P60


 環境問題を皮切りに体制の脆弱性が露呈したメシウマ政府。
 支持率低迷と二度のトップ交代を経ていよいよオワコンクソ国家死ねカスと思われた時、そこに、二人の男が現れたのだ。


 一人は“荒巻スカルチノフ”。
 メシウマで長らく総合技術研究所――総技研の所長と、特殊特化課という独立機関の課長を兼任してきた男である。
 実体の掴めない男ではあるがその手腕と実績は信頼に足るもので、メシウマの体制崩壊を立て直したのは彼一人の功績といっても過言ではない。

 もう一人は“シーン”という名前の男だ。
 今やレムナントの中心人物に数えられ、“パラレル・ネットワーク”という独自の通信網を作り上げたシーン。
 メシウマのトップに立ってすぐの荒巻スカルチノフにハッキング攻撃でコンタクトを取り、環境問題に進展をもたらしたのはシーンの仕業だ。

 この二人の登場から、環境問題はあっという間に好転する。

 まずレムナント北部の土地(現在はイッテヨシと呼ばれている場所)に巨大なリサイクル事業が立ち上がった。
 シーンを中心に生まれたこのリサイクル事業。その存在が荒巻スカルチノフに伝わると、荒巻はすぐ事業への資金援助と人材派遣を行った。
 事実上の事業提携だった。

 その後、環境問題は浮上からたった一年で解決。
 これまで完全に関係を絶っていた双方が、互いの利益と都合のために奔走したことで、結果的に事態は粛々と幕を閉じたのだった。

 問題解決後は新体制の指示に則り、メシウマで処理しきれなかったゴミは廃棄物搬入口を通じてイッテヨシの処理場へ送られた。
 イッテヨシはこのゴミを再利用して電気街として発展。現在に至り、レムナント有数の街として今なお拡大を続けている。
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211 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:22:21 ID:zp1et/P60


 そして半ば当然のように、廃棄物搬入口にはシーンの策略によって隠し通路が作られていた。
 滅多にないチャンスをシーンが無駄にする訳がなかった。むしろ最初から隠し通路の為に動いていた節さえある。

 とにかく今現在、メシウマに続く蟻一匹の通れる道といえばこの隠し通路だった。
 ドクオとフォックスが目指している場所も、、詳しくいえば“廃棄物搬入口”ではなく、その中の“隠し通路”なのだった。

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212 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:23:22 ID:zp1et/P60

≪2≫


 隠し通路を進むと、二人は酒樽の積み上がった薄暗い場所に出た。
 みすぼらしく天井に吊るされた豆電球が、ささやかに辺りを照らしている。


( 'A`)「……貯蔵庫? それも地下の」

爪'ー`)「バーの地下だってよ。ま、無人らしいけどな」

 フォックスはそう言い、酒樽の一つを軽く叩いた。
 樽はコンという音を立てると、またすぐ深い沈黙に戻った。

爪'ー`)「中身は無し。ただの空樽。こりゃただの演出だな」


「年に一回、審査が入る。ここの樽は、その時の為の物だ」

 奥の闇から、男の声が聞こえてきた。
 フォックスは闇の中に目に向けた。



( ゚_つ゚)「……依頼主から話は聞いている。お前達の護衛、誘導を依頼されたワイズマンだ」

 レザージャケットを羽織った強面の男が、光の下に姿を現した。

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213 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:24:02 ID:zp1et/P60



 二人はワイズマンの誘導に従い、地下貯蔵庫を出て上階のバーに上がった。
 バーに人影はなかった。防音が成されているのか、外からの音もあまり聞こえない。
 店内はほのかに光が差し込むだけで、その人気の無さは店に無機質な印象を持たせていた。


 ワイズマンに聞くと、この店は各地に点在する隠れ家の一つだと言った。
 仕事の都合上、色んな場所にこういった隠れ家を確保しているそうだ。ちなみに掃除は年に一回だけ。


 彼の仕事はレムナントからメシウマへの違法取引、違法侵入等をサポートする運びがメインだった。
 だが依頼によっては荒事の解決を引き受けたり、他国へ渡って交渉、仲介の仕事もするらしい。
 過去に軍役の経験がある事から、今でも彼はその方面からの依頼に世界中を飛び回っている。


 言ってしまえば、彼はフリーランスの下っ端である。
 しかしその仕事の規模と報酬は、同じ境遇のデミタスとは比べ物にならない。

 ワイズマンは裏のプロフェッショナルというに相応しい経験と知識、そして何より“超能力”を持ち合わせていた。
 その力の名は【サンド・ストーム】。砂を操る超能力だった。

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214 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:25:35 ID:zp1et/P60


 ワイズマンがきびきびとした足取りでバーを出ると、ドクオとフォックスもそれに続いた。
 店の戸締りを済ませた後、彼らはワイズマンを先頭にして、近くの屋内コインパーキングに入った。

 コインパーキングお奥の方に青の軽自動車が停まっていた。
 ワイズマンはそれに駆け寄り、車に異常が無いか確かめてから、ドクオとフォックスに視線を送る。
 視線に応え、二人も軽自動車に歩み寄った。

爪'ー`)「おいおいセンスねぇな。俺もっとイカしたのがいい」

( ゚_つ゚)「無駄に目立つ必要はない。目的地までこれで送る。乗れ」


('A`)「……」

爪'ー`)「……おいドクオ」

 遠くを眺め、今にも素直クールを探しに駆け出しそうなドクオを、フォックスが静かに宥めた。
 もうここは壁の向こう――メシウマの中だ。動こうと思えば、今すぐにでも彼女のために動き出せる。

('A`)「……分かってる……」

 だが、彼らが今ここに居る理由はそれではない。
 彼らの目的地は、このメシウマから更に先の場所にあった。

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215 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:27:28 ID:zp1et/P60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



( ゚_つ゚)「俺の能力について……?」

( 'A`)「はい。ちょっと、気になって……」

 都市部の中空を横断する高速道路に乗ったところで、後部座席のドクオが運転中のワイズマンに言った。
 ドクオの口調には歯切れの悪い、根暗童貞腑抜けゴミクズクソ野郎時代の雰囲気が混じっていた。

('A`)「例えば、なんすけど……」

 ドクオは前屈みに構えて独白を始めた。

( 'A`)「砂って言っても、大小あるじゃないすか……砂浜のとか、あるいはレムナントの大粒のとか。
    俺、イッテヨシで色々勉強したんすよ。能力の事とか、俺の知らないことを全部、ありったけ」

( ゚_つ゚)「……」

爪'ー`)(そんでもまだ中学生並みの頭だけどな)


('A`)「そんでワイズさんは『砂を操る』なんて言ってますけど、実際のところはまるで違う筈です。
   『砂を操る』っていうのは、それは、ワイズマンという人間が定義するところの『砂』が操れるっていう事ですよね……?」

 ドクオが顔を上げると、バックミラーでワイズマンと目が合った。

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216 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:29:22 ID:zp1et/P60


( ゚_つ゚)「……能力についての論議は既に大体の結論が出ている。
     それが聞きたいというなら、それを話すが……」

 バックミラーの中でドクオが深く頷いた。
 ワイズマンは視線を前に戻すと、以前読んだ能力と能力者についての論文を想起した。


( ゚_つ゚)「そうだな……とりあえずお前の言った事を確認する。
     俺の『砂を操る』という能力は、確かにお前の言った通りだ。俺は俺の定義した『砂』を操っているに過ぎない。
     狭義で言えば砂ではないものも多分操れるし、細かく砕けていて粒状になっていれば、恐らくなんでも操れるだろう」


( ゚_つ゚)「それでも俺は自分の能力を『砂を操る』ものだと認識している。
     理由としてはまぁ、砂が一番動かしやすいという事だが、もう一つ理由がある」

 その時、真昼間にも関わらず、ワイズマンが車のヘッドライトを点けた。
 だが次の瞬間にはヘッドライトの光が消滅しており、代わりに、ワイズマンの能力が発動していた。


(;'A`)「……!」

 ワイズマンの上着のポケットから、少量の砂がゆっくりと浮かび上がる。
 砂はドクオの目の前まで行くと、ふわふわと中に浮いて不規則に動いた。

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217 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:30:31 ID:zp1et/P60


( ゚_つ゚)「俺は昔、戦争で国を失った。そこに浮いてるのは、今は無き俺の故郷の砂だ」

(;'A`)

 ドクオは沈黙で答えた。

( ゚_つ゚)「……俺が読んだ論文にはこうあった。
     能力とは『結晶』である。能力者の身に刻まれた『過去』の『結晶』であると」

( ゚_つ゚)「俺にとって『砂』とは過去の象徴だ。その砂が俺の過去であり、今の俺を作りだした全てだ」


( ゚_つ゚)「付け加えるなら、能力にも幾らか分類があってな。
     俺のような、いわゆる『物質支配型』は、ある種の媒体を中心にして物質を操っていることが多い」

(;'A`)「……ワイズさんは、この故郷の砂を中心にしてるんすか?」

( ゚_つ゚)「そうだ。故郷の砂を中心に置くことで、俺は俺の定義する砂を操れる。
     分かりやすく例えれば……そうだな、『砂だけを吸い寄せる磁石』を俺が操っている……といったところだな」

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218 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:31:58 ID:zp1et/P60


( ゚_つ゚)「あとは能力の細かい分類だが、能力はまず最初に二つに分けられる。
     維持費が必要な能力と、使い切りの能力だ」


( ゚_つ゚)「どちらも一長一短だが、俺の能力は前者に入る。
     俺のような『物質支配型』や、能力そのものに実体を付与する『具現化型』は前者である事が多い。
     後者に入るのは具現化の装着型か、他の特異な能力か……まぁ詳しくは知らん」


( ゚_つ゚)「ただ、現在でも人類が獲得した『超能力』はその全貌をまるで見せていないらしい。
     前にも総技研が超能力の解明に挑んでいたが、結局よく分からない謎の物質を生み出しただけに終わっている。
     それに能力分類も便宜上存在しているだけで、実際は十人十色で、分類は不可能だとも言われている」


('A`)「……」


爪'ー`)「ドクオ、お前頭パンクしてんじゃねえ?」

(;'A`)「いやっ! 全然そんな事っ……」

爪#'ー`)「つーか話なげえ! もう言えよ! 僕も超能力欲しいですうって!」

(;'A`)「ショス・・・」

.

219 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:32:53 ID:zp1et/P60


 ワイズマンは少ししてから話を戻した。


( ゚_つ゚)「……ある学者が言っていた。超能力は人間が持つ超自然的治癒能力だ。
     人は過去に経験した精神的傷跡を埋めるために、超能力を開花させるのだと」

( ゚_つ゚)「俺も大したことは言えないが、能力が欲しいなら、これだけは気をつけるといい」

 バックミラーを介して、ワイズマンの鋭い視線がドクオに突き刺さった。


( ゚_つ゚)「過去から逃げず、立ち向かえ。そしていつか自分だけの過去の象徴を見つけ出せ」

( ゚_つ゚)「俺の場合、それでこの能力に目覚めている」

('A`)「・・・ウス・・・」

( ゚_つ゚)「……時間に遅れている。飛ばすぞ」

 ワイズマンは中に浮かべていた砂をポケットに戻すと、堅く口を閉ざし、アクセルペダルをじわりと踏み込んだ。

.

220 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:34:49 ID:zp1et/P60

≪3≫


/ ,' 3 「いやぁ助かった。書類の始末はどうにも苦手でな」

 窓辺の事務机に向かって書類整理をしていた荒巻が、立ち上がって大きく背伸びをした。
 来客用のソファに座り、ローテーブルで整理の手伝いをしていたデミタスとシャキンも、ようやく雑用が終わったと安堵した。


/ ,' 3 「もう大丈夫。あとは一人でやれる程度だ」

 荒巻は席に掛けなおし、ペットボトルのお茶を口にした。


(´・_ゝ・`)「こないだの仕事の件ですが」

 余計な間を挟まず、デミタスが本題を持ち出した。
 こういう話はコイツの得意分野だ。シャキンはソファに深く腰を沈め、話の進展をデミタスに任せた。

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221 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:35:37 ID:zp1et/P60


(´・_ゝ・`)「報酬として提示された分の入金は確認しました。
      一人五百万円で、計一千万円。どうも、久々に口座が潤いました」

(´・_ゝ・`)「ところで――」

/ ,' 3 「今日君達を呼んだのは、金銭とは別のものを、君達にあげる為だ」

 デミタスの攻め立てるような話法が、荒巻の開口で止まった。


(´・_ゝ・`)「……別のもの? 仕事の口封じの為に、ですか?」

/ ,' 3 「はっはっは、いやまさか」

 荒巻は軽快な笑い声を上げた。


/ ,' 3 「報告書は読んだよ。その、エクスト君……だったかな?
     ところで――の続きは、どうせ彼の話なのだろう?」

(´・_ゝ・`)「察しが良くて助かります」

 デミタスは、話を自分のペースに戻そうと画策した。

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222 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:38:54 ID:zp1et/P60


(´・_ゝ・`)「まぁ話といっても簡単なものです」


(´・_ゝ・`)「我々が保護した少年が正当に審査を通り、今後この街で生活出来るよう配慮してもらいたい。
      現状、エクスト君は違法侵入者です。今は我々と荒巻さんとで匿っていますが、メディアへの密告なんてあった日には大変だ」


(´・_ゝ・`)「……私の申し上げていることが、分かりますか?」

/ ,' 3 「意訳しよう」

(´・_ゝ・`)「ありがとうございます」


/ ,' 3 「それじゃあ二人には今度新設される機動隊で働いてもらおうかな。
    では今後とも、隊長として頑張ってくれたまえ」

 荒巻の唐突な言葉に、デミタスの思考が錯綜する。
 機動隊……? その疑問で思わず口を閉ざしかけたが、デミタスは思考を切り替えて聞き返した。

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223 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:40:16 ID:zp1et/P60


(´・_ゝ・`)「……何のお話ですか?」

/ ,' 3 「何のって、最初からこの話が目的だったんだろう? 確固たる地位の獲得だよ」


/ ,' 3 「君はこないだまで多額の借金があったらしいじゃないか。
    まぁ今回の報酬でチャラだろうが、ワシはな、借金を作る人間とは『金を道具以下にしか見ていない者』だと思っておる」

/ ,' 3 「ある者は油断で、ある者は自滅で、金を失い、破滅してゆく。
    だがしかしデミタス君、君はどうかね? そうではないだろう。君は頭が切れる。策略も無しに借金を背負うとは思えん」


/ ,' 3 「君は金を道具以下にしか見ていない男だ。数ある手札の一つとしか見ていない、そういう輩だと感じたよ。
    では現在、君の手に無い手札とは何か? 欲しい手札とは? それは金ではない、地位だ」

/ ,' 3 「……エクスト君を連れてきたのも手札を増やすためだな?
    今回の仕事は表には晒せん誘拐だった。特に素直クールの存在は、極秘中の極秘だ」


/ ,' 3 「そこで君はこう考えた」

/ ,' 3 「自分達の要求を聞かなければ、エクスト君と素直クールのことを世間に公表する」

/ ,' 3 「あの荒巻スカルチノフが誘拐を指示したのだからな。これで脅迫取引は可能だ」

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224 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:40:56 ID:zp1et/P60



/ ,' 3 「……まぁ要は、たったそれだけの簡単な話だ」


(´・_ゝ・`)「……何の事だか、と白を切らせてもらいます」


/ ,' 3 「構わんよ。再三言うが、頑張ってくれたまえ。
    ワシからの話は終わりだ。近々また呼ぶだろうから、よろしく頼むよ」




(`・ω・´)「待ってください」

 早々に話が終わりそうだった所にシャキンが割り込んだ。
 余計なことをするな、とデミタスは咄嗟に思ったが、その時にはもうシャキンの話が始まっていた。

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225 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:42:24 ID:zp1et/P60


(`・ω・´)「エクストの処遇がまだ決まっていません。
      確かに彼は違法侵入者ですが、彼の行動によって素直クールが確保できたのも事実です」

(`・ω・´)「たった一言、ここで言質が欲しい。彼を悪いようにはしないと言って頂けますか」


/ ,' 3 「……そりゃ、お安い御用だが……。君達はこれから部隊長の階級に就くのだぞ?
    はっきり言って今回君らに渡した報酬――つまり地位だが、それを活用すれば少年一人の人権確保など造作もない」

/ ,' 3 「安心するといい。君らは『成功』した。少年のことも、こちらから何かするという事は無い」


(´・_ゝ・`)「……では、我々はこれで」




/ ,' 3 「おっと、こちらにも一つ聞き忘れがあった」

 部屋を出ようとソファを立った二人に、荒巻が微笑んで言った。
 だがその微笑みも束の間、荒巻は顔に張り付けていた笑みを剥がし、威圧的な目でデミタスに問いかけた。

.

226 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:43:32 ID:zp1et/P60


/ ,' 3 「こないだワシは特課――特殊特化課の連中にこう命令した。エクスト君を『保護』しろとな。
    それから特課で捜索班を作り、街をくまなく捜索した。しかしどういう訳か……彼は見つからなかった」

/ ,' 3 「おかしな話だとは思わんか? 報告書にあったエクスト君の所在……デミタス君のアパートにも、彼の姿は無かった。
    そして勝手ながらシャキン君の所も捜索したのだが、結果は同じ。エクスト君は居なかった」

 瞬間、威圧感の激流がデミタスとシャキンを襲った。
 唐突な敵意を前に、反射的に二人の心身が殺気立つ。

/ ,' 3 「さて、今や聞く意味も無いだろうが……」

/ ,' 3 「……二人とも、エクスト君をどこに匿っているのかね?」


(;`・ω・´)「……」

(;´・_ゝ・`)「……」

 沈黙だけが二人の安全を確保していた。
 下手に何かを言えば、それが仇となるのは目に見えていた。

 そしてデミタスは自覚した。
 荒巻スカルチノフは、俺の手に負える相手ではない。

.

227 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:46:40 ID:zp1et/P60



(;´・_ゝ・`)「……」


(;´-_ゝ-`)「……ええ、ハイ。その通りですよ」

 威圧感の激流に、デミタスがその一言と共に飛び込んだ。


(;´・_ゝ・`)「我々が欲しいのは地位だ。金ではない。それは確かです。
      エクストを使った脅迫を企てたのも事実です。今回、彼はトランプでいう所のジョーカーだった」


(´・_ゝ・`)「しかし思いませんか? ババ抜きで、ジョーカーの居所を隠すのは当然だと……」

(´・_ゝ・`)「そして私がジョーカーを囮に、特課の壊滅を目論んでいたとしたら……?」

/ ,' 3 「……」

 僅かに荒巻の表情が崩れる。デミタスはそれを見逃さなかった。
 荒巻の動揺を察知したデミタスは、この作り話を続ける事にして言葉を思い浮かべた。


(´・_ゝ・`)「今ここでエクストの居場所を教えるのも一つでしょう。
      しかし、もし教えた場所が爆薬だらけの危険な場所だったら貴方は、特課はどうなりますか?」

(´・_ゝ・`)「……いいえこう言いましょう。もしそうだった場合、貴方は『敗北』する。
      数少ない優秀な特課員を失い、そして我々に『エクスト殺害』の意図を悟られてしまうから……」

(´・_ゝ・`)「もちろんそんな意図が分かった場合、こちらも相応の手段で行動を開始します」

.

228 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:47:54 ID:zp1et/P60


(´・_ゝ・`)「……では、最早聞くまでもないでしょうが……」

(´・_ゝ・`)「荒巻さん、我々に何か『失態』がありますか? 我々の関係に『無益』がありますか?
      咎めるべきところは? やり直すべき事柄は? 全てが上手くいった今、我々が争う理由がどこにありますか?」

/ ,' 3 「…………」



/ ,' 3 「……なるほど。饒舌だな」

 声色を下げ、荒巻は呟いた。


/ ,' 3 「ま、話はそれだけだよ。そう敵意を向けんでくれ、心臓に悪い」

(;`・ω・´)(こっちのセリフだ……)

 場が和やかな雰囲気に戻ると、シャキンも懐のペンライトから手を離した。
 彼はいざとなればデミタスを抱えてタワーを飛び降りる気でいたが、それも杞憂に終わった。


/ ,' 3 「今日はありがとう。助かったよ」

 荒巻は最後に笑みを作り、デミタスとシャキンに手を振って見せた。

.

229 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:49:44 ID:zp1et/P60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ステーション・タワーを出て、二人は広場の木陰に逃げ込んだ。
 汗がどっと噴き出すような感覚に、二人は揃って肩を撫で下ろす。

 木の葉の隙間から青空を見上げ、シャキンは改まって言った。

(;`・ω・´)「これで、いよいよだな……」

(;´・_ゝ・`)「おうよ。まずは第一目標クリア……」

(;`・ω・´)「お前、荒巻相手によく食い下がれたな……」

 安堵からか、普段は寡黙なシャキンが多弁になっていた。
 デミタスはそれを馬鹿にしようかと考えるも、今は素直に言葉を返した。

(;´・_ゝ・`)「いーや負けた……互角だったとも思えねえ……」

(;`・ω・´)「……さっきは悪かった。俺が余計なこと言ったからだな……」

(;´・_ゝ・`)「別にー……。つーか、もう現実感ねーわ今、俺……」

.

230 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:50:27 ID:zp1et/P60



(;´-_ゝ-`)「はぁぁぁ~~~……」

 デミタスは息を吐きながら、レンガ張りの地面にぐったりと座り込んだ。


(;`・ω・´)「……電話? 誰にかけるんだ?」

(´・_ゝ・`)「最後の詰め。もう少しエクスト隠しとかねーとヤバイだろ」

 地面に座ったデミタスは、もう既に平然とした表情でケータイを構えていた。
 やがて相手と繋がったのか、デミタスは饒舌に要件を伝えた。

(´・_ゝ・`)「ああ、もう少し頼むわ。報酬もちゃんと払う。頼んだぞ」



(`・ω・´)「……いよいよだな」

 もう一度、自分の意思を確かめるようにシャキンが言った。

(´・_ゝ・`)「ああ。この街はもうじき、俺達の物だ」

 シャキンの意思に応えるように、デミタスが言った。

.

231 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:51:16 ID:zp1et/P60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


( ゚_つ゚)「対象の受け渡しを延期、か……」

 ケータイに向けて、ワイズマンが他二人に聞こえないよう聞き返した。


( ゚_つ゚)「構わないが、その分の報酬は貰う。
     ああ、分かっている。対象は今も無事だ」

 ワイズマンは通話を切り、ケータイを上着の内ポケットに戻した。


爪'ー`)「女の子?」

( ゚_つ゚)「……もうすぐ目的地だ。降りる準備をしておけ」

 フォックスの茶化しを無視し、ワイズマンは運転に集中した。

.

232 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:52:47 ID:zp1et/P60

≪4≫


 メシウマから高速道路を二時間。
 料金所を抜けて高速道路を下り、青看板に従って進むと、十分ほどで“マリスポ”という港町が見えてくる。

 ワイズマンの運転でマリスポに程近い駐車場に着いたドクオとフォックスは、ワイズマンに礼を言い、荷物を持って車を降りた。
 二人が降りると車はすぐに発進し、車道に乗って凄まじい速さ遠のいていった。俺ら嫌われてるんじゃないかと疑うほど速かった。


爪'ー`)「よっしゃ次は船だ!」

('A`)(船は初めてだ……)

 二人は目前の港町マリスポ目指し、日差しの中を歩きだした。

.

233 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:53:46 ID:zp1et/P60





|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「オレ、海の男」


 マリスポに入ってまっすぐ停泊所に向かった二人は、そこで“榊原マリントン”というセーラー服の男に出会った。
 すぐ出港可能な船を探していた二人に、.榊原マリントンが上記のセリフと共に現れたのだ。


 意味不明だった。
 しかし自信には満ちていた。

 二人は榊原マリントンのジェットボートに乗せてもらうことにした。


 かくして二人は、海の上に出た。

.

234 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:55:04 ID:zp1et/P60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 広々としたバウシートに掛けるドクオと榊原マリントン。
 操縦はマリントンとフォックスが交代でしており、現在はフォックス運転のもと、時速70キロ前後で海上を移動中だった。
 マリスポを発ってかれこれ一時間は経っていたが、彼らの目的地――ウォーク大陸までは、あと四時間以上掛かりそうだった。

 そんな中、ドクオは自分との戦いで必死だった。

(;゚A゚)「ゲロっ……!」

爪;'ー`)「ドクオ! 吐くなら海に吐け!」


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「マリントン、思うんだけどさ」


('A`)「あっ」

 ドクオの吐瀉物が海上を舞った。


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「海、良いよね。ホント」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「無敵? オンリーワン? みたいな」

 マリントンはシートの縁に両腕を回し、広大な海を見ながらそう言った。
 今さっきゲロが混入したのだが、マリントン的には全然オールオッケーらしかった。

.

235 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:55:52 ID:zp1et/P60


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「ところでボク、オレに何か聞きたいこと無いの?」

(; A )「あ、すんませんビニール袋を……」


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「オーライ。ぜんぶ海に吐きな。魚の餌になるからオッケー」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「海は全部許してくれる。母なる海って、みんな言うじゃん?」


('A`)「おうっぷ」

 またもやドクオの口からゲロが飛び出した。
 ほぼ胃液のゲロがキラキラと舞い、青い海に沈んでゆく。


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「ノープロブレム。オッケー?」

('A`)「yeah」

 素晴らしい英会話だった。

.

236 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:57:06 ID:zp1et/P60


(;'A`)(俺、乗り物弱いんだな……)

 ドクオは顔面蒼白になってシートに腰を落とした。もう出せる物は出しきったらしい。


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「それじゃあボク、ちょっとオレ聞きたい事あるんだけど」

(;'A`)「……あ、はい」


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「ボクの足首の包帯、あと運転中の彼の包帯。マリントン的に、ちょっと見逃せない」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「オレ、人に船貸す時はそいつから面白い話聞く。
           だからマリントン、ちょっとワケアリな感じのアンタらに声掛けた」


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「だからオレ、そういう話を聞きたいんだけど?」

(;'A`)「……」

 開口を迷ったドクオが操縦席のフォックスを一瞥する。
 その視線に気付いたフォックスが振り返って言った。

爪'ー`)「いいじゃねえか! 運賃代わりにしちゃ安い方だ!」

(;'A`)「マジか……」

.

237 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 04:58:20 ID:zp1et/P60


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……彼ちょっと海に似てる。それも、声掛けた理由の一つ」

 マリントンは緩やかな笑みを見せると、シートの縁に回していた腕を懐に戻して組んだ。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「陸の話、マリントンすっごく興味ある」

( 'A`)「……長くなりますよ」

 ドクオは、これまで自分の身に起きた事の一つ一つをマリントンに話した。
 マリントンは時折頷き、のめり込むようにしてその話に聞き入った。

.

238 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:00:13 ID:zp1et/P60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「じゃあ何、君ら怪我した後すぐに町出たの?」

( 'A`)「まぁ……あそこじゃ簡単な手当てしか出来なかったんで。
    とりあえず止血して、クソワロタ経由で、知り合い頼りにイッテヨシまで……」

('A`)「車もまぁ、あったんで……」


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「なるほど。結構タフじゃん。ナイス根性」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「懐かしい……。マリントンもそうだった。故郷を捨てた男、みんな海に導かれる」

 マリントンは哀愁溢れる横顔で言った。


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「オレにも故郷があった……でもダメ。大草原とかつまんない。
            昔っから、男の居場所は海の上でファイナルアンサー。だってそっちのが自由だから」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「ボク、レムナントの育ちじゃ海は初めてなんだろ?
           海をよぉ~く見ときな。そして、惚れちまえ」

(;'A`)「お、おす……」

.

239 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:02:02 ID:zp1et/P60


('A`)「……」

 マリントンに言われるがまま、ドクオは海を見た。
 視線を動かすと嫌でも海が視界に入るので、諦めて海を見たのだ。

 海は青かった。
 本当にそれだけで何を楽しめばいいのか一切分からなかったが、ドクオは少し、物珍しそうに海を見ていた。


 思えば、今日はドクオにとって未知のものばかりが近くにあった。

 メシウマでは当然のように車が走り、ビルが建ち、電気が通り、水に制限も無かった。
 イッテヨシでは見たこともない機器がそこらじゅうで売っていたし、マリスポでは大きな魚が売っていた。


 これまであの名無しの町で生きてきたドクオにとって、イッテヨシやメシウマという街は、余りにも衝撃的だった。
 それを思うと、十四年間も壁の内側で閉塞していた自分の人生というのが、酷く小さなものに思えてしまった。

 ただ、あんなに惨めでちっぽけな場所だったとしても、ドクオにとってはどうしても捨て切れない大切な居場所だった。
 いつかはあの町に帰る。今ではないいつか、現実に立ち向かう覚悟を決めた時には、かならず。ドクオの胸には、そんな決心があった。

.

240 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:03:17 ID:zp1et/P60


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「もひとつ聞きたいんだけど、アンタら海を渡ってどこ行くの? つか何しに行くわけ?」

 マリントンにそう聞かれると、ドクオは黙って胸のペンダントを握り、間をおいて答えた。


( 'A`)「俺は、なんつーか……『戦える』ようになりたいんだ……」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「へぇ」


('A`)「ちょっと勉強して、世界が広いっていうのも少し分かったから……俺はその広い世界で『戦える男』になりたい……」

( 'A`)「……俺はいつかクーを助けに行くんだ……。でも俺はまずその為に、俺自身を納得させなきゃならない……。
   俺はこれからシベリアに住んでるっていう『八極武神』に会って、俺自身を納得させに行く……」

( 'A`)「能力とかよく分かんねえけど……俺が今欲しいのは『確かめる為の力』なんだ。
   その力はいくら弱くてもいい。とにかく俺が『俺自身の道』を確かめられれば、それで……」

.

241 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:04:24 ID:zp1et/P60


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「武神ねぇ……オーライ、それは流石にオレも知ってる。
           無能とも能力者とも一線を画した奴らだってね。ああいうの、格闘家っていうの?」

( 'A`)「フォックスがちょっと、そいつらに縁あるらしくて。
    あわよくば弟子入りー……なんて、少し考えてるんだ」



|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……ドクオ、お前には強さみたいなの、感じない」

 ふと、マリントンが改まって言った。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「でもなんか違うのを感じる。なんだろう聞こえてくる、確実に、着実に……」

(;'A`)「……そ、そっすか?」

.

242 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:05:54 ID:zp1et/P60


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「……いいねぇ。その青臭さ、海の青にちょっと似てるぜ」

 その時、マリントンの垂れた双眸が鋭い輝きを見せた。


|;;;;| 。゚っノVi ,ココつ 「オッケーブラザー!! ロッケンローと洒落込もうか」

 マリントンはボタン型ライトを取り出して立ち上がり、良い感じのポーズになってボタンを押した。
 そのライトの光が放たれた瞬間、光は消失し、彼の周囲に能力者特有の気配が漂い始める。


(;'A`)(おい……まさかコイツ……!)


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「――今からドクオ、お前に超能力の『入口』を見せたげる。
           助け舟になるかは分かんないけど、大船に乗ったつもりで万事オッケー!」



|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「アーユーレディ!?」 ドンッ!!

('A`)「えっ?」

 返答の間もなく、ドクオは海に突き落とされた。

.

243 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:08:41 ID:zp1et/P60

≪5≫


 地球儀で言えば上の方、世界地図で言えばメシウマの左上辺りにある大陸・ウォーク。
 その大陸に入って北緯60度を突破すると、いよいよそこから先が目的のシベリア地域だった。

 シベリアはその特異な環境ゆえに第一区から第四区まで、環境の差異によって区分けされている。
 一区進むにつれて気温は10℃下がり、雪が豪雪、猛吹雪に変わり、どんどんコタツから出られなくなる。

 大陸規模でコタツから出られないのだから、ウォークのミカン消費量は当然世界一だった。
 ミカンはエクサワロス大草原で採れたものが主流。露骨な甘味が人気の理由だった。


 山岳の麓に設けられた港町からは、シベリアを一周する機関車が四時間に一本走っている。
 機関車は始発駅のある港町から順にシベリア第一区、第二区、第三区を走行し、第四区で機関車の点検を終えた後、また港へ向かって走り出す。

 ウォークに来た観光客はこの機関車に乗って第一区まで行き、そこでのほほんと雪国を堪能して帰っていく。
 第一区は寒くなってもせいぜい-10℃ほどであり、気軽に雪国っぽさを味わえる事から、観光客をターゲットとした商売が盛んだった。
 人気商品はシベリアのご当地キャラクター“ウィンドウズ・イルカ”のウィン君グッズ。以下は町のパンフレットにも掲載されているウィン君の紹介図。


【ウィンドウズ・イルカのウィン君】

      ┌──世界最強の背びれ(木が切れる)
      ↓
    __/|_
    (・∈・ )っ ←────世界最速のジャブを放つ左腕
   (つ  /
    | (⌒) ←───ハットトリック連発の黄金の左足
    し⌒
   ↑  
   └───この右足でよくドジを踏む


決め台詞:キュイキュエェェエアェ!(予期しないエラーを起こすぜ!)

244 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:09:58 ID:zp1et/P60




爪;'ー`)「寒い」

 ウォーク港に降りた途端、急激な気温の変化にフォックスが呟いた。
 昼にマリスポ港を出て実に五時間。時刻は既に夕方を過ぎており、辺りも薄暗く、小さな雪も降り始めていた。


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「これ、マリントンのコート。持ってないならプレゼント。二人分あるから」

爪;'ー`)「ああ悪い。遠慮なく貰うわ」

 フォックスはマリントンからダッフルコートを貰い、それをいそいそと着込んだ。
 貰ったコートはウォークでは凡庸な代物らしく、辺りを歩く人々も同じようなダッフルコートを着ていた。


爪*'ー`)「ふほぉぉおぉ~あったけぇ~……」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「じゃあオレもう行くから。海が寂しがってる」

爪'ー`)「そっか。アンタ面白いから、また縁があるといいな!」


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ 「グッドラック! ハッピーニューイヤー! グッバイ、ナイスガイ!!」

 マリントンはそう言い、自分の船へと戻っていった。
 その背をしばらく見つめた後、フォックスは足元に転がるドクオに声をかけた。

爪;'ー`)「……お前もコート着るか?」

('A`)「シャムイ・・・」

.

245 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:11:56 ID:zp1et/P60


 マリスポからの船旅を終え、ウォーク港に到着したフォックス達は、次の機関車が来るまでの一時間で夕食をとる事にした。
 二人は駅の方へ行くと、観光客や帰宅者の波に呑まれないよう気をつけながら、駅周辺の店を見て回った。


爪'ー`)「おう、お前なんか食いたいもんあるか?」

('A`)「シャムイ・・・」

爪;'ー`)「コート着てても? まぁ見た感じ、顔色も顔の作りも最悪だしな……」

('A`)「ウォァァァ・・・」

爪;'ー`)(顔のこと言ってもコレか……。こりゃガチで疲れてんな)

 航行中マリントンによって海に沈められたドクオ。
 あの後ドクオは、ウォーク港に着くまで三時間以上海中を泳がされていた。


 何故か?


 それはマリントンにしか分からなかった……。


.

246 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:12:59 ID:zp1et/P60



「あれれぇ~~~?」


 その時、二人の背に声がかかった。フォックスだけがその声に気付いた。
 フォックスが振り向くと、混雑した駅前の人混みの中で、明確にこちらを見ている少女が数メートル先に見えた。


从'ー'从

 少女の素肌は白く、容姿もだいぶ未熟だった。
 そして彼女はこの寒さにも関わらず、かなりの薄着でフォックスと見合っていた。
 多くの人が服を着込んで寒さに耐えている中で、その姿は余りにも目立つものだった。


爪;'ー`)(見られてる……よな?)


('A`)「チカレタ・・・」

爪;'ー`)「あ? おお……」

 フォックスはドクオの声に反応し、ドクオを一瞥した。

爪;'ー`)「……おっ?」

 その一瞬だった。

 一瞬の間に、フォックスは少女の姿を見失った。
 彼は周囲を軽く見回したが、少女の姿はどこにも見当たらない。

.

247 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:13:39 ID:zp1et/P60




『ご静聴願います……。今後の運行について、ご連絡します……』

 勿体ぶるように沈黙を混ぜた声が、駅構内のスピーカーから大音量で発せられた。
 すると周囲の諸人は途端に立ち止まり、その声に耳を傾けた。


爪;'ー`)(なんだったんだ? さっきのガキ……)

 内心に湧いた気味の悪さを忘れようと、フォックスもスピーカーの声に意識を向けた。

.

248 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:14:19 ID:zp1et/P60



『えー……はい、雪がー……凄いので……今日はもうナシです……』


('A`)

爪'ー`)


『……そういう事なので……はい、おやすみなさい……』



『うわぁ~~~』


.

249 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:15:26 ID:zp1et/P60


 その後ピンポンパンポンという電子音が鳴り、アナウンスは完全に終了した。


('A`)「イミワカンネ・・・」

爪'ー`)「……あっ」

 反発直感によって、フォックスはアナウンスの意味を理解した。

爪;'ー`)「……もう列車、出ないんじゃね……?」

 周囲の声を盗み聞いてみても、どうやらフォックスの予想は的中しているらしかった。


('A`)

('A`)「ウボァ・・・」

.

250 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:16:32 ID:zp1et/P60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 列車が出ないならと開き直り、フォックスはドクオを引きずって旅館を探し始めた。
 ドクオは人生初の水泳に疲れ切っており、今にも「おんぶしろ」「シチューが食べたい」「寝たい」と言い始めそうな雰囲気だった。
 なのでドクオがそういった駄々をこね始める前に、フォックスは一刻も早く宿を見つけなければならなかった。


 少しすると、辺りはすっかり暗くなった。
 ぽつぽつと街灯が点き始め、立ち並ぶ家屋からの光が彼らの足元を照らすようになる。

 薄雪に足跡を残しつつ、旅館を探しておよそ五分。
 フォックスは町外れに一泊の値段も手頃なロッジ風の旅館を見つけ、そこでチェックインを済ませた。


 ベッド一つにソファ二つ、そのソファの間に丸テーブルが一つ。
 壁際には液晶テレビと冷蔵庫があり、ベッドに寝転がると、冷蔵庫を漁りながらテレビを見られるという絶妙な配置だった。

 照明は天井に一つ。暖色を放つペンダントライトだ。
 そして浴室はトイレと洗面台込みの三点ユニットバス。あまり広くはなかった。


ヽ爪*'ー`)ノ 「ビバ! 屋根のある暮らし~~い!!」

 以上、安値の一人部屋にしては上出来と言える部屋に入ったフォックスは、荷物を下ろして体をほぐした。
 ドクオと二人なのに一人部屋を取ったのは、ひとえに節約のためだった。

.

251 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:17:42 ID:zp1et/P60


('A`)「オレネテイッスカ・・・」

爪'ー`)「んあーいいぞ。ベッドか?」

('A`)「ソス・・・」

 疲れきってふにゃふにゃだったドクオは、ふにゃふにゃとベッドに倒れてむにゃむにゃ言いながら寝た。


爪;'ー`)「コートくらい脱いで寝ろよな……ったく」

爪'ー`)「んじゃ俺なんかメシ買ってくっから。鍵は開けとくけど、気ぃつけろよ」

('A`)「ウェーイ・・・」

.

252 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:19:43 ID:zp1et/P60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




「――クオさん――」


 眠りの最中に、誰かの声が聞こえてきた。


「起き――さい――」

 正直なところ起きるのが面倒だったので、ドクオは寝返りを打ってその言葉を拒んだ。


「会いに――」


(;'A`)「うっせえなぁ……メシならテーブルに置けばっ……」

(・(エ)・)

(;゚A゚)

 薄目を開けて言いかけたところで、ドクオは言葉を失った。
 ベッドの傍らに立っていた“そいつ”を見た途端、ドクオの朦朧とした意識が一気に覚醒した。

 そいつは、クマだった。
.

253 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:21:06 ID:zp1et/P60


(・(エ)・)

(;゚A゚)


(・(エ)・)「おはようございます」

(゚A゚)


(;゚A゚)「クッ……クマッ……」

(;>゚A゚)> 「――クマじゃあぁぁぁぁぁぁぁあああ!! 初めて見た! 本場のは喋るのか!」


(・(エ)・)「確かに私の名は、クマーでございます」

ヘ(;゚A゚)ヘ「しかも礼儀正しいクマァ!! う、うわあああああああ!!」

.

254 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:23:06 ID:zp1et/P60


(;゚A゚)「クマっ……」

(;'A`)「あれっ……クマ……の、マスク……?」

(・(エ)・)「ええ、特注品ですよ」

 突如として現れた謎の男。
 その正体は、クマのマスクを被ったグッドマッスルだった。


 2メートルを超える身長に、クマをも容易に絞め殺しそうな逞しい筋骨。
 彼の着ているオーバーオールも、その莫大な筋肉量によってぎちぎちに張り詰めていた。

 かつてはマスクのプリントも可愛らしいクマさんだったに違いない。
 だが顔面の方もぎちぎちなのは事実で、クマさんのプリントは無残に伸びきっていた。


(;゚A゚)(こわっ)

 ドクオの胸に湧いたのは、そんな純粋な恐怖だった。

.

255 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:24:12 ID:zp1et/P60


(・(エ)・)「ドクオ君。私は君を見定めに来ました」

(;゚A゚)「食材として……?」

(・(エ)・)「いいえ、武神達の意向によって」

(;'A`)「……えっ……」

 “武神”という単語に、ドクオの眉がつり上がった。


(;'A`)「武神……八極武神? フォックスが知り合いだっていう」

(・(エ)・)「知り合い……まぁ確かにそうですね」

 クマーは言葉を濁した。

.

256 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 05:25:43 ID:zp1et/P60


(・(エ)・)「それじゃあ、ドクオ君の準備が出来たら始めましょうか」

(;'A`)「始める……ってか、そんなサクサク進む話なんすか? えっ?」

(・(エ)・)「武神の千里眼ですよ。お気になさらず」

(;'A`)「……あっ、つかフォックスまだ帰ってないっぽいんすけど……」

(・(エ)・)「それも構わず。彼には彼の相手が居ます」


(・(エ)・)「もう目は覚めましたか? さあ、始めましょうか」

 クマーがテーブルを指差した。
 テーブル上にはもう既に、オセロ盤が用意されていた。


(;'A`)「…………」

 すらすらと話が進む一方で、ドクオはある不安を思っていた。

(;'A`)(……今は、目の前の事が先か)

 ドクオはその不安を抱えたまま、クマーの手招きに従い、ソファに腰掛けた。

.

259 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 09:20:19 ID:3uZ2fZMQ0
期待するしかねぇ

260 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/18(土) 12:46:37 ID:9lf/t0.60
はー面白えはよ続きはよ


261 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/19(日) 13:28:57 ID:AMdfEzdE0
おもしろいおもしろいぞー

262 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/19(日) 18:54:15 ID:YI94AEi.0
いいねえ
地の文の堅さと抜きどころが




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