('A`)は撃鉄のようです

406 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:51:01 ID:qWB5eOsI0



 生き急いだ者、一人。


 歩き出そうとする者、一人。


 闇に囚われた者、一人。


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407 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:51:54 ID:qWB5eOsI0



 道を違えた彼らを余所に、世界の季節が二つ巡った。

 ある場所は春に、またある場所は冬に。


 世界は巡り、時は刻まれた。

 刻まれた時を背に、ドクオは、押し出されるように前へ歩き出す。


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408 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:52:34 ID:qWB5eOsI0



 武神の屋敷を出ていくドクオに、デルタが最後に言葉を送った。


 刻まれた“時”に“誇り”を持て。
 この先どんな事があろうと、お前が過去を忘れない限り、ここに“誇り”がある。

 そして帰るべき初心も“ここ”にある。

 “誇るべき初心”がここにある事を忘れるな。


 ドクオは答えた。

 ただ一言、純朴に「はい」とだけ。


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409 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:53:24 ID:qWB5eOsI0


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 榊原マリントンのジェットボートはウォーク港に停泊中だった。
 彼は今、船体がカッコよくテカるよう鼻歌交じりに船を磨いていた。
 ジェットボートは彼のセーラー服の純白と同じくらい、真っ白に輝いていた。


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……ん。お、っと」

 掃除の片手間、彼は遠くの人混みを二目した。
 一度目は何となく、二度目は、覚えのある人影がそこにあった気がしたからだ。

 それは、気のせいではなかった。

 人混みを抜け、男二人がマリントンのところに歩いてくる。
 彼は掃除の手を止め、その二人を迎えるために身嗜みを整えた。


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「……へぇ、見違えたね、ボク」



( 'A`)「……いえ、そうでもないですよ……」

爪'ー`)「いいや、だいぶ変ったよ、お前は」

 男達は、船の隣りで立ち話を始めた。
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410 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:54:24 ID:qWB5eOsI0


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「武神には会えたかい」

('A`)「……これがなければ、俺はもう駄目でした」

 ドクオがポケットからガラス片を取り出して言った。
 それを見たマリントンは一瞬何のことかと沈黙したが、すぐにピンと来て微笑んだ。


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「オーライ。それ、上手く使えたみたいっぽいね」

('A`)「ありがとうございます。本当に……俺だけじゃあ駄目でした……」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「でも駄目じゃあなかったんだろ? だったらドクオ、お前の勝ち」


爪'ー`)「……俺は……」

爪'ー`)「俺は……ここまでだ」

 フォックスの言葉に、ドクオは一瞬だけ寂しげな表情を見せた。

爪'ー`)「お前と同じかそれ以下の今の俺じゃあ、もう居ても足引っ張るだけだしな」

爪'ー`)「……才能あるよ、お前は。また会おうぜ」

('A`)「……ああ、きっとまた会おう」

爪'ー`)「頑張れよ、弟分」

 ドクオはその一言を聞き、フォックスにエクストの面影を重ねた。


( 'A`)「……絶対に、また会おう」

爪;'ー`)「おいおい、未練がましいな」

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411 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:56:06 ID:qWB5eOsI0


|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「ドクオ、お前はオレが見込んだ男だ。行くんだろ、彼女のトコに」

('A`)「はい」

 マリントンは、海に浮かぶジェットボートを指差した。

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「乗ってくかい」

('A`)「はい」

|;;;;| ,'っノVi ,ココつ「それじゃ、乗ってきな」

( 'A`)「……ありがとうございます」


 それから少しして、ジェットボートはマリントンとドクオを乗せて出港した。

爪'ー`)「心配はしてやらねえ! だから、やれるだけやってこい!」

 フォックスの見送りが段々と遠くなる。
 やがてドクオはフォックスを見切り、大海原に目を向いた。


('A`)(行ってくる……!)

 覚悟した鋭い目付きで、かくしてドクオはウォーク大陸を旅立った。
 
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412 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:56:47 ID:qWB5eOsI0




 俺は……



 半年経って……俺はまた……変わったんだと思う……。



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413 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:58:20 ID:qWB5eOsI0


 どう変わったのかは自分でもよく分からないけど……

 根暗クソ野郎だった頃の俺よりは、確実に成長していると思う……。


 この半年間で……俺は、なんというか……心が落ち着くようになった……。


 少しは……俺は大人になれたのだろうか?

 エクストとクールに、一歩でも近づけたのだろうか……。


 俺には分からない……。

 だからこそ、確かめに行かなくては……。


 それだけだ、今の俺を動かすものは……。

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414 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:59:00 ID:qWB5eOsI0



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            ('A`)は撃鉄のようです

        第二部 Childhood's End(幼年期の終り)

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415 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 22:59:40 ID:qWB5eOsI0




 ――いつしか、季節が“八つ”過ぎていた。



 ドクオも十四歳から十六歳になり、子供から大人へと、確実に……。



「……今、そっちに行く……」

 彼は荒野に立ち、レムナントを一周する壁を睨んでいた。

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416 名も無きAAのようです[sage] 2013/07/16(火) 23:00:20 ID:qWB5eOsI0


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          プロローグ 「壁の向こうへ」

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