( ・∀・)花の終わりのようです

1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 12:48:39.20 ID:W/W6Kh130
短編連作にするつもりだったけど飽きたから投下

2 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 12:49:14.36 ID:W/W6Kh130



 ある日、その町には花があふれた。
 種が芽吹き、蕾をつけて開花したわけではない。

 人が花の塊になり、散り、崩れ落ちたのだ。

 それぞれ個人個人で様々な色の花の塊となって死んでいく。
 そんな現象は町全体を包み込んだ。








3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 12:51:17.14 ID:W/W6Kh130








 世界の王様になったって世界は退屈であると聡明な彼は悟ってはいたが、彼は周りの誰もの為に、只管全能になりたいと思っていた。


( ・∀・)「あぁ、これはどうしたもんかな」


 その日も、何時も通りに。








( ・∀・)花の終わりのようです







4 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 12:53:14.70 ID:VYt33vosO
しえしえ

5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 12:53:26.82 ID:W/W6Kh130




(,,゚Д゚)「モララー? どしたよ」

( ・∀・)「"花が咲いた"ほら見てごらんよ、黄色い花だぜ
         さすが僕だ、美しいね!」


 言って、友人に左手を差し伸ばす。その人差し指の爪先が黄色く染まり、蕾となっていた。
 途端、それを見せられた友人の顔が泣きそうに歪むのを見て、失態だ、と直ぐにその手を隠す。
 指をさして笑いたくなる程愚かしいその彼は、どうやらこの現象を酷く恐れているらしい、とモララーは察した。


(,,゚Д゚)「モララーも咲いたのか……」

( ・∀・)「どうやらその様だ。どうする? この僕が死んじゃうんだ、一つ泣き喚くコトを許可するが」

(,,゚Д゚)「喚くかよ、馬鹿」


 含みのある発言にモララーは顔をしかめる。
『終末』が始まり、この学校でまともに機能している唯一のクラスと言って良い彼らの教室は、丸で休み時間のように騒がしかった。
 当たり前だ。何時ものように授業をしようにも、その教師が居ない。



6 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 12:55:56.14 ID:W/W6Kh130


 街中が色とりどりの花にうずもれ、日常が壊れていく音を聞きながら、
最後の予防線とでも言うように、何故かモララー達のクラスメイトは強いて何時もの様に制服を着て、何時ものようにクラスで騒いでいた。
 それまでとは違ったのは、日に日にそのクラスメイトが消えていく事と、残ったクラスメイト達が異常なまでに親密に、自棄になったように明るく朗らかに日々を過ごしている事だった。

  _
( ゚∀゚)「あれ、兄者は?」

(・∀ ・)「さぼりじゃね?」

从'ー'从「あれれ~? 私のお弁当が無いよ~?」

('、`*川「甘いもの誰か持って来てぇえええ!」



 モララーは机に肘を突きながらそんなクラスメイト達を眺める。
 リノリウムの床には様々な色の花の首が転がっていた。バラに似ている、と思いながら自分の指に視線を落とす。


( ・∀・)「お腹減ったな」

(´・ω・`)「あ? ああそう」

( ・∀・)「食べ物買いに行ってくる。どうせ教師は居ないんだし、抜け出しても問題は無いだろう」

(´・ω・`)「はぁ、どうぞ」



7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 12:59:39.13 ID:W/W6Kh130

 揚々と出口に向かって歩き出す。それを見送る友人。


<ヽ`∀´>「あれ、モララー、どっか行くニダ?」

( ・∀・)「ん、腹減ったから、ご飯買いに行ってくる。王の帰還を暫し待つがいいさ!」

('、`*川「あっ、じゃああたしに何か甘いもの買ってきて。後でお金払うから」


 ひらひらと手を振る女子生徒を見て、モララーは固まる。三回瞬きしてから、左手をポケットに入れた。
 開き始めていた黄色い花が、ポケットの内側でくしゃりと散る。


( ・∀・)「……」

('、`*川「モララー?」

( ・∀・)「……君はこの僕に指図する気かい? 三百年遅い! 人生三回やり直してくるがいいさ!」

('、`*川「はいはい、言うと思った」


 意識して不遜な言葉を吐き出して、せせら笑う。
 それを彼女も、何時もの事だとばかりにため息をついて口の端をあげた。
 こうでもしなければ一つの意見も誤魔化せない、と自分の器に失笑しそうになる。

 否、彼女の意見を汲み取り実現できない自分に軽く失望した。


8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:00:58.95 ID:W/W6Kh130


 元より、モララーは病的なまでの完璧主義者なのだ。総てが総て完璧でなくてはならないと思っている。
 実際、彼は本当に完璧と言って良いまでに『なんでも出来た』
 正しく言うならば、『何でも出来るようにしてきた』

 努力をして、努力をして、努力をしてきた。
 そうして自分の求める完璧に応えてきた。

 幼い頃は周りにもそれを求め、得られず不機嫌になるばかりだったが、成長した彼は自らをこう理論武装した。
 彼らが不完全なのは仕様がないことなのだ。
 ならば、完璧な自分が完全になって彼らを包んでやれば良い。


 将来の夢、王様、もしくは神様。
 そんな子供が、モララーだ。


( ・∀・)「僕もまだまだだ」


 頭を抱えながら廊下を歩く。


10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:03:40.89 ID:W/W6Kh130


( ・∀・)「何とかして伊藤に甘いものを買っていってやる術はなかったものか……。
        けどほんとは僕腹が減ったから抜け出した訳じゃないし
        コンビニに寄って甘いものを買って学校に戻ってそれからまた出発、ではタイムロスが過ぎる。阿呆か」


 ぶつぶつと一人呟く姿は異様とも取れたが、其れをみる者は居なかった。


( ・∀・)「それに、学校にはもう戻れる気がしないしな」


 自分のつぶやきに、モララーは失態だ、と悲しくなる。
 こんなに早く消える事になるなんて、と。


( ・∀・)「まぁ、残念だが、この経験が先に生きる事を願うか」


 一人で頷き、左手をポケットから取り出す。左手全体が小さないくつかの蕾になっていた。
 握り、広げる。微かな花粉の香りがした。


( ・∀・)「なぁモナー」


 虚空に向かって呟く。


11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:07:01.08 ID:W/W6Kh130



( ・∀・)「僕は神様になりたかったよ」

( ´∀`)『そういうの言っちゃうのって引くモナー……』


 言って、彼は白い花を咲かせて走っていった友人を思い出す。
 どう努力しようとも聡明とは言えない少年だったが、その一貫した思想は学ぶ所が多かったし、素直に尊敬出来た。
 内容はともかくとして、彼はそう思っている。


 モララーは校門から出て、迷いの無い足取りで道を選んでいく。










12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:10:06.00 ID:W/W6Kh130









( ・∀・)「あ、あれ、兄者?」


 不意に口から飛び出たのは、クラスメイトの名前だった。
 見透かすように道の先をみる。緩やかな坂の向こうに見えたのは、迫り来る自転車とそれを漕ぐクラスメイト。


( ・∀・)「おお、てっきりもう咲いて死んでたんだと思ったのに。こりゃ嬉しいな!」


 言いながら、モララーは迫ってくる自転車に立ち向かうようにして道の真ん中に両手を広げ、


( ・∀・)「此処から先は通さんっ!!」

(# ´_ゝ`)「退け馬鹿ぁああああああああああっ!!!」


 自転車は聞き苦しい音を出してブレーキでタイヤを擦り減らす。
 がしゃん、と言う音にモララーは反射的に目を閉じた。


13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:14:11.21 ID:W/W6Kh130

 半ば横転するように自転車を止めたクラスメイトは顔を引き吊らせてモララーを睨みつける。


( ・∀・)「そんなに急いで何処へ行くんだ? また即売会? 出口は閉鎖されてるだろうが馬鹿だな」

(# ´_ゝ`)「違うわあほー牽かれてしね! ばかちん! 
         坂下ってきた自転車の前に立つのは止めなさい! お兄ちゃんちょっと死ぬかと思ったわ!」


 アスファルトに座り込み、足を投げ出した。
 どうやら転けた時に擦りむいたらしく、捲り上げられたシャツの袖から覗いた腕に血が滲んでいる。

 そこからパステルブルーの花びらがこぼれた。

 見れば、友人の体のそこかしこは淡い青に染まっている。
 そういえば、彼の家族は真っ先に花が咲いたんだったか、とモララーは思い出した。
 仲良く下校する姿をよく見た弟が花になったとき、どれだけ取り乱したことだろう。

 その時支えになってやれなかったことが悔しく思え、それでも立ち直っている様子の友人を誇らしく思った。


( ´_ゝ`)「あーちくしょ、いって。まじいって。最悪だ」

( ・∀・)「あ、すまん。大丈夫か、やりすぎたな」

( ´_ゝ`)「……大丈夫だよ、しにゃあしない。まだ」



14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:15:59.83 ID:W/W6Kh130


 言いながらも立ち上がり、自転車を立て直す。
 それを見守っていたモララーは、親指を突き出した。
 急に旅路を祈られた友人は、首を傾けてその親指をにらみつける。

 わずかに黄色く染まったその指を。


( ・∀・)「健闘を祈るぞ」


 この友人も、自分と似たような理由で走っていたに違いないと決めつけて、モララーは只管毅然と言う。
 それは、確かに静かな王の風格だった。


( ・∀・)「しっかり、死に花咲かせてこい」

( ´_ゝ`)「……言われなくても咲いてらーよ」


 ゆっくりとこぎ始め、その背中は小さくなっていく。
 その軌跡を追うように、淡い青が散っていた。




15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:18:09.40 ID:W/W6Kh130











 クラスメイトを見送り、モララーは無言のままで坂を登り始める。
 先ほどの彼に、自分は何か手伝ってやれることがあったのではないか。あそこで送り出したことに悔いはない。けれども、と。
 そんなことを考えながらアスファルトのあちこちに散った花を決して踏まないように、飛び石をするようにして歩く。

 そうして、ふと顔を上げ目に入った光景に、モララーは思わずバランスを崩し花の山の上に座り込んだ。


(; ・∀・)「ああ、す、すまない!」


 すでに人ではなくなったそれに対して慌てて謝りながら、立ち上がり再度その光景を見て、絶句する。


(; ・∀・)「な、なんだ、これ」



16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:21:15.61 ID:W/W6Kh130


 途中で運転席に花をたっぷり乗せたトラックが小さな民家に突き刺さっていた。
 平屋建ての薄っぺらな壁は二トントラックに潰され、今にもぺしゃりと崩れてしまいそうだ。
 誰か屋内に残っていたら、と慌ててモララーが刺さられている民家の中に飛び込む。土足のままで上がり込む事を内心で家主に詫びた。

 飛び込んで真っ先にあるのは台所。人はいない。
 だがもしも他の部屋に人がいたら?
 ぱり、と靴の下で硝子が砕けた。


(; ・∀・)「誰か居るか?! 危ないぞ、出ろ!」


 リビングらしき部屋にも人の姿は無い。
 赤い花と茶色い花、クリーム色の花が混ざり合って散っているだけだった。


(; ・∀・)「……良かった」


 少なくとも生きている人間は居ない、とモララーは一息つく。



17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:24:04.57 ID:W/W6Kh130

 室内は惨状とも言うべき状態だったが、その一角だけは崩れた屋根から差し込んだ陽に包まれ、丸で朗らかな日曜の午前のような空気を漂わせている。
 存外に穏やかでのどかなその光景に、モララーは思わず呆けたように肩を落とした。

 そのとき、みしりと崩れかけた天井が嫌な音をたてる。
 慌てて家から出ようと踵を返し、それから振り向いた。


 朗らかに笑う小さな子供と、それとじゃれ合う男性。
 更にそれに飛びかかる女性が見えた気がした。


( ・∀・)「……錯覚だ」


 モララーは、その眼球に映らないものを信じない。












18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:26:24.20 ID:W/W6Kh130








 商店街の中も同じように花で溢れている。
 商店街の片隅の骨董品屋の店主の老人は、何時もの様にロッキングチェアに揺られていた。
 手元を美しい花の頭達で埋め、それを愛おしげに眺めている。

 モララーは暫しぼんやりと彼を眺め、それから歩きだした。
 顔を上げた老人が、緩やかな年輪を重ねた笑みで彼を見送る。


 商店街を出ると直ぐ、稲荷神社が在る。
 境内へ向かう途中の階段に二色の花が入り交じった山があった。
 その隣に座り込んだ人の背中を見て、足を止める。


( ・∀・)「どうかしましたか?」

('A`)「……友達が死んだんだよ」

( ・∀・)「最近ではよくあることですよ、くよくよすんな!」

('A`)「えぇ? ぁ、ありがと」

19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:28:37.07 ID:W/W6Kh130

 モララーより幾つか年上と言うくらいの青年は、乱れた前髪の下からモララーを見る。
 ポケットに手を入れたままのモララーはその顔を覗き込んだ。

 日の光が燦々と道を照らす。まばらもまばらな人影は、けれど何時も通りの日常だった。
 それまでモララーが積み上げた日々がくすんでいく音がした。

 隣に座ったモララーから目を放し、青年は鼻を啜り上げる。


('A`)「ムカつくくらいの馬鹿ップルがさぁ。死ぬときまで一緒に居てやんの」

( ・∀・)「……」

('A`)「クーさんにゃ置いてかれるし、もう俺はだめかも分からんかもね」


 へら、と笑う。
 モララーは黙ってその青年を見ていた。


( ・∀・)「僕には夢があります」

('A`)「あ?」

( ・∀・)「神様になりたい」


20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:30:04.11 ID:W/W6Kh130




('A`)「……」



 凄く微妙な顔をされた。


 例えば、モナーが居てギコが居て、いっそ友人と呼べる全員の人が周りに居て、彼の死を悼み、悲しみ、そして喜んでくれる。
 そんな状況で無くては絶対に消えるまいと思っていた。



――こんなもの、僕にふさわしい消え方では無い。


 黄色く染まった自分の手を眺めながら、もっと、もっととモララーは渇望する。


( ・∀・)「モナーに会いたい」


 けれど、其れが叶う事は決してない。
 足りない、とモララーはつぶやく。




21 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:32:40.34 ID:W/W6Kh130


 






 何時でも彼のそばに彼は居た。所謂幼馴染みと言う人種。


( ´∀`)『僕は大きくなったらせいぎのヒーローになるんだモナ』

( ・∀・)『じゃあ僕はおうさまになるよ』

( ´∀`)『僕よりえらくなる気まんまんモナ……』

( ・∀・)『ばかだなぁ、モナー。ぼくはせかいで一番えらいんだよ』

( ´∀`)『えええー』


 其れはモララーに言わせれば詰まらない関係だったが、彼は何よりそれを尊んだ。



22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:35:11.43 ID:W/W6Kh130


('A`)「嫌な子供だなお前……」

( ・∀・)「今でも僕の意見は何ら変わっちゃいないんだぜ」

('A`)「嫌な人間だなお前……」

( ・∀・)「何とでも言うがいいですよ。僕の心はめっちゃ広いから許してやります」

('A`)「四畳半くらいだろ絶対」


 青年とのやりとりを、急になった坂道をゆっくりと上りながら思い返す。
 友達と呼べるような人間が居なかった事。酷く癪ではあるが、モナーと言う友人に支えられてきた事。
 自分の思考は歪んでいるに違いないと言う事実。

 モララーの右腕から黄色い花が崩れ落ちる。右手は既に半ばまで黄色い花となって散っていた。
 彼の歩いた後には、丸で童話の兄妹が蒔いたパン屑のように黄色い花が散っている。




23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:37:57.16 ID:W/W6Kh130


 唐突に、開けた場所に出た。
 吹き抜けた風が彼を煽る。

 遠くからみるより数倍太い鉄骨の直ぐ下に、白い花がこんもりと落ちている。
 モララーはただ嬉しそうに笑んだだけだ。それから、疲れた、と言ってため息を吐く。


( ・∀・)「よくねぇ、モナーとここに上ったんですよ。その頃は僕らまだちっちゃかったんで、登るのも一苦労だったんだけどなぁ」


 青年からの返事は、無い。
 そちらに目をやることも無く、モララーは鉄塔に手をかけて、器用によじ登った。


 すう、と肺がなる。






25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:40:32.06 ID:W/W6Kh130










( ・∀・)「――……失望したッ!!」















26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:41:33.08 ID:W/W6Kh130





 風が吹き抜ける。
 ある程度の高さにたどり着いたモララーは、黄色く染まった自分の手を見る。
 それから丘の上から望める街をぐるりと囲む壁に向かって、吐き捨てるように叫んだ。


( ・∀・)「配慮が足りない、思慮が足りない、思いやりが足りない、尊敬が足りない、思いが足りない、想いが足りないッ!
        この僕に任せてみろ! そんなバリケードなぞ無くとも! どんな劣悪な状況でも! 圧倒的に救ってみせるのにッ!」


 モララーは思い出す。道ばたで死んでいた猫を。其れと同じように死んでいた老人を。
 一人で父の帰りを待った狭い部屋を。過労で眠るように途切れた母の命を。
 世界中の報われない人々を。世界中の報われる人々を。


( ・∀・)「精神を尽くせ! 想いを尽くせ! 力を尽くせ! 心を尽くせ!
        最低だ! 足りないぞ! こんなもんじゃ足りねぇよ!」


 モララーは、叫ぶ。



29 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:43:14.97 ID:W/W6Kh130

( ・∀・)「足りない! 時間が足りない! 僕はまだ死ねないんだ馬鹿野郎!」


 叫ぶ度に彼の体からは黄色い花がこぼれ落ちた。
 たりないんだよ、と言う声は小さく沈み、モララーはつまらなそうに半分ほどに崩れた腕から花を散らす。


( ・∀・)「こんな世界、僕が手を入れるまでも無かったか」


 まるで役者のように呟き、鉄塔を上った。街を見下ろす。
 遠くに見えるのは、感染防止のバリケード。
 接触感染する、死の病。美しい花の正体は、この町の外ではそう呼ばれているらしい。





( ・∀・)「モナー、僕ら、友達だったんだからな」





 知ってたよ。



30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:43:27.19 ID:TrMJryoPO
こんな時間に珍しい
支援

32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:44:19.00 ID:W/W6Kh130




 モララーの体は今やすっかり黄色く染まっている。
 躊躇う事無く鉄塔から身を投げ出したその体は、風と重力に揉まれて散った。

 足りない、足りない、と。
 僕の友達は最後まで世界を渇望して、散った。




( ・∀・)花の終わりのようです
おわり

33 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:45:18.75 ID:W/W6Kh130
これくらいの長さのを六つくらい書こうと思ってたけどこれ一本書いたら飽きた
えらい短いね とりあえず支援等有難う御座いました

34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:47:21.30 ID:SGI8dxRy0
乙!
世界観は好きだな


35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 13:49:52.51 ID:TrMJryoPO

好みの話だったからまた気が向いたら書いて欲しい

38 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 14:08:53.41 ID:rP9YURiGO
乙!
独特の雰囲気が良かった

41 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 15:22:56.94 ID:OZT5IJN80
きれいな短編だな乙

42 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/07/24(土) 15:26:02.94 ID:S8S+i5pv0
乙!面白かった




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