( ^^ω)クリスマスには間に合わなかったようです

3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 13:39:46.89 ID:Honm8i8xO
>>1
ありがとうございます!


このスレは、


547:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/12/09(木) 12:08:43.28 ID:Honm8i8xO
代理スレ立てを頼みたいんだけど、
タイトルは指定しない

自由にタイトルを決めてスレを立ててくれないか
そのタイトルから即興で話を考えて、ながらで書いていきたいんだ


(後略)

~~~~~~~~~~~~


という試みの下に立ててもらいました

ながらで、ゆっくり進めていきます


8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 13:51:57.76 ID:Honm8i8xO

ξ゚⊿゚)ξ「……長くないだろうって、先生が」

 病室。ベッド。
 すっかり痩せ細って――いや、やつれてしまった母は、
 しゃがれた声で、そう言った。

ξ゚⊿゚)ξ「泣かないでよ、マルタスニム」

 母の声は、もっと綺麗だった。
 母の瞳は、もっと澄んでいた。
 母の腕は、こんな、枯れ枝のようじゃなかった。

ξ゚⊿゚)ξ「お母さんは、お父さんに会えるから恐くないけれど。
      ――あんたを1人にさせるのだけが、ちょっと不安だわ」

 1人にしないで、なんて。
 子供みたいなこと、言えないから。


( ;;ω)「……大丈夫ホマ。僕、……1人じゃないホマよ――」


 母を安心させるために。
 母離れをするために。

 嘘を、ついてしまった。


10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 13:59:43.97 ID:Honm8i8xO

ξ゚ー゚)ξ「そうなの? 恋人、いたんだ」

 母は笑った。
 僕は頷き、カレンダーを見る。

 今は11月初旬。

 頭の中で必死に計算する。
 考えて、数えて。

(;^^ω)「……クリスマス!」

ξ゚ー゚)ξ「うん?」

(;^^ω)「クリスマスに、連れてくるホマ、かか、か彼女」

ξ゚ー゚)ξ「そう。楽しみにしてるわ」

 一ヶ月以上も時間があるなら、何とか恋人を――いや、そうでなくとも、
 「恋人役」を用意出来るかもしれない。

 その人を母に紹介しよう。

 今更、母が助かるとは思えない。
 それならば、せめて、安心してほしい。
 安心して、父のもとに行ってほしい。


13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 14:03:58.56 ID:Honm8i8xO

 母が手を伸ばす。
 曲がったままの5本の指から、小指だけを、ゆるりと上げた。

ξ゚ー゚)ξ「指切り」

( ^^ω)「……分かったホマ」

 その折れてしまいそうな指に、僕の小指を絡め、

     「――ゆーびきーりげーんまん……」

 約束を、した。









 したのだ。約束を。

 なのに。

 母が、それを守ってくれなかった。


14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 14:06:33.23 ID:Honm8i8xO

ξ-⊿-)ξ



 死んだ。
 母は、死んだ。



 それは、12月になったばかりの。

 クリスマスなんかまだまだ先の日のことだった。










( ^^ω)クリスマスには間に合わなかったようです




15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 2010/12/09(木) 14:07:51.50 ID:pgLE3wYV0
ここから広がる話にwktk

17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 14:12:57.49 ID:Honm8i8xO



从 ゚∀从「せーんーせー」


 どんどん。
 玄関のドアが叩かれる。
 いや、殴ってるんじゃないか、これ。

 安普請のアパートなのだ、壊れたらどうする。
 勘弁してほしい。


( ´`ω)「ホママ……」

 のそりと布団から起き上がり、僕は玄関に向かった。

 この声。呼び名。
 相手は決まりきっている。


22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 14:22:54.09 ID:Honm8i8xO

( ´`ω)「おはようホマ、ハイン君」

从 ゚∀从「もう昼っスけどね」

 腕組みをして言い捨てた女性、ハインリッヒ高岡。

 僕の――何と言えばいいのか。
 知り合い。友人。ううむ。

 そのまま表現するならば、そうだな。
 小説家である僕、マルタスニム内藤の、「熱心なファン」だ。







从 ゚∀从「寒っ、寒いな、このアパートは本当にもう」

( ^^ω)「今ストーブつけたホマ。お茶はあったかい方がいいホマね?」

从 ゚∀从「あざっす、は瀬川先生」

 は瀬川、とは僕のペンネームだ。
 先生という呼び方が少しむず痒くて、台所に向かいながら
 思わず首筋をがしがしと擦ってしまった。


25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 14:42:09.20 ID:Honm8i8xO



 ――小説家という職に就いたのは、5年前、僕が20歳になった頃だ。

 きっかけは、暇潰しに書いた小説を、
 何となく目についた小さな賞に応募したことだった。

 小説というより、僕の鬱々とした気分を書き殴っただけの言葉の集まりだったのだが
 何故だかそれがウケてしまったらしく、あれよあれよと言う間に
 「作家デビュー」を果たしてしまった。

 リアリティのある心情描写が何とか、読む者の心をえぐる文章力が何とか。

 あまり納得はいかなかったが、当時の僕は典型的なヒキニートだった。
 だから、働けるだけマシ、と思い、ありがたく作家になることにしたのである。



 ――とはいえ、正直なところ、5年経った今でも人気はあまり無い。
 収入も大したことはない。

 ちょっと、いやかなり、将来が不安だ。


29 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 14:50:59.81 ID:Honm8i8xO

从 ゚∀从「新作は?」

( ^^ω)「そこの机の上」

从*゚∀从「よっしゃ!」

 忙しなく辺りを見渡していたハインリッヒ――ハイン君は、
 「目的」の居場所を知るや否や机に飛び掛かった。

 机上に散乱する原稿用紙をかき集め、ぱらぱらとめくっていく。

从*゚∀从

从 ゚∀从

从#゚∀从


从#゚∀从「全然進んでねえじゃねーか!
     おいコラ顔面奇形!!」

(;^^ω)「やめてその言い方」

 担当さんより厳しいことを仰る。


31 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 15:05:10.81 ID:Honm8i8xO

 「顔面奇形」。
 ……これだ、これ。この言葉。

 ものすっごい勢いで僕の心を引きちぎる。

( ´`ω)ショホマーン

 一体、何度言われてきただろう。

 「気持ち悪い」「顔がエグい」「神様はお前の顔作るときだけ福笑いしてたの?」。

 ああ、ああ。街を歩いただけで死にたくなる。
 二度見するな。指差すな。

( ´`ω)

 僕が5年前にヒキニートをしてた理由は、この顔にある。
 外に出れば、顔が気持ち悪いと馬鹿にされるんだ。

 だから、人前に――外に出るのが、億劫で仕方なかった。

 その辺りを考えると、やっぱり作家になって良かった気もする。
 頑張れば、外に出ずとも金を稼げるのだから。
 入ってくる金は雀の涙ほどだが。


32 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 15:22:45.66 ID:Honm8i8xO

( ´`ω)

从;゚∀从「……トラウマ触ったか、ごめん」

( ´`ω)「いいけどさ……別に……」

 お茶の入ったマグカップを2つ、ちゃぶ台の上に乗せる。
 うっひょう、と奇妙な声をあげて、ハイン君はマグカップで両手を温めた。



 ――彼女と仲良くなったのは、つい2ヶ月ほど前のことだった。

 新作の打ち合わせにやって来た担当さんがこの部屋のドアを叩いているのを、
 たまたま前を通りすがったハイン君が見付けたらしい。

    『――先生。マルタスニム先生。は瀬川先生――』

 担当さんの言葉に、ハイン君は驚いたという。

 いわく、『大好きな作家の名前だったから』。


 彼女は、数少ない、僕のファンの1人だったのだ。


34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 15:36:58.29 ID:Honm8i8xO

やっべえぇえ

席を外さなきゃいけなくなりました
6時か7時までには戻ってこれるように頑張ります

スレが落ちてたら、いずれ立て直すか何かします

すいません、また後で

49 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 19:54:49.96 ID:Honm8i8xO
ただいま!
遅れてすみません

再開するよ!

51 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 20:12:30.75 ID:Honm8i8xO


从*゚∀从『――は瀬川先生!? まさか小説家の!?
     ちょちょちょっ、私、あんたの作品好きだよ! 大好――』

 担当さんを押し退けて叫ぶ彼女。
 騒がしさに耐え切れず、僕がドアを開けて顔を見せると、

从*゚∀从

从 ゚д从

 失礼なことに、とても失礼なことに、彼女は『人間か?』と呟いた。

 これは後日聞いたのだが、
 『繊細で薄暗い文章が綺麗だから、作者は線の細い美形だと思ってた』らしい。

 僕は、本のカバーに載せる著者近影等が恐ろしくて堪らないので、
 いつも、原稿用紙に適当に文字を連ねたものを撮ってもらっていた。

 だから、彼女は好き勝手に僕へ幻想を抱けたのだろう。


52 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 20:24:45.08 ID:Honm8i8xO

 ああ、これで貴重なファンが1人消えたな。
 もしかしたら彼女がネットに言い触らしてしまうんじゃないか。とか。

 嫌な考えが頭の中を満たし始めた僕に。


从 ゚∀从『ま、作品の素晴らしさにゃ関係ねえか』


 あっけらかんと、彼女は言った。

 そして僕は、ねだられるがままに握手とサインをし、
 『また来る』と微笑み去っていく彼女を、呆然と眺めることしか出来なかった。


 宣言通り、彼女はまた来た。
 コンビニで買った菓子を抱えて、上がり込んできた。

 『新作あるなら見たいな』

 きらきらした瞳でそう言われては、追い出すに追い出せなくなり。



 ――それから、彼女は暇さえあれば僕の家にやって来るようになったのである。


54 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 20:37:13.98 ID:Honm8i8xO



从 ゚∀从「前見たときと変わんねえじゃん。まさか一文字も続き書いてねえのかよ」

( ^^ω)「……母の葬式やら何やらで」

从 ゚∀从「……ああ。ごめんなさい。ご愁傷様です――でいいんだっけ」

( ^^ω)「ホマホマ」

 原稿を放って、ハイン君はお茶を啜った。
 目を伏せた顔が綺麗だと思う。
 別に恋心を持っているわけではないが。

 ――恋といえば。
 ハイン君は大学生らしいのだが、僕なんかと一緒にいて楽しいのだろうか。

 大学生なんて友達と遊んだり恋人と過ごしたりするもんじゃないのか。
 僕には友達も恋人もいないし、大学に行ったこともないから分からないけど。

从*゚∀从「お茶うめー」

( ^^ω)「……」

 まあ、退屈なわけでもなさそうだし、いいか。


56 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 20:49:22.68 ID:Honm8i8xO

 マグカップの中身を一気に飲み干し、僕は机に向かった。
 ハイン君はテレビのスイッチを入れながら、「頑張れ」と言う。
 適当に返事をし、ペンを取った。

 パソコンは持っていない。
 執筆は、手書きのみだ。


( ^^ω)「……」

 ペン先を原稿に宛てがう。
 ぼんやり、思うままに文字を書き込んでいく。
 頭の中には一応ストーリーがあるが、書いていく内にどんどん方向が変わる。
 いきあたりばったり。





 原稿の中で女が泣いた。
 男はそれを慰める――いや、何もせず、ただ見つめている。




59 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 20:56:23.83 ID:Honm8i8xO

 慰めない。
 それでも、男は女を愛しいと思っている。
 原稿の中の男女は愛し合っている。

 じゃあ、何故慰めないのだろう。



( ^^ω)




 愛って何だ。

 僕は親の愛しか知らない。

 愛しているのに、何故男は女に優しい言葉をかけないのだろう。

 分からない。

 それでも勝手に物語は進む。


60 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 21:07:53.20 ID:Honm8i8xO

 女の泣き声は激しさを増す。
 体を折り曲げ、泣きじゃくる。
 男の恋心は激しさを増す。
 立ち尽くして、女を見下ろす。

 男は、包まれたい?
 彼女の涙に。
 溺れて、死んでしまいたいのか。

 きっと、彼は、彼女の涙が一番好きなのかもしれない。

 涙を絞り尽くし彼女は小さくなっていく。
 彼女は涙で出来ている。
 彼は涙が好き。だから涙で出来た彼女が好き。

 彼が涙で溺れる頃には。
 彼女は、彼女ではなくなる。

 共に消えられるなら、多分、幸せ。





从 ゚∀从「厨二」

 完成した短編を読み終えて、ハイン君はばっさり切り捨てた。
 酷い、この子。

61 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 21:20:41.61 ID:Honm8i8xO

( ^^ω)「それがマルタスニムクオリティ」

从 ゚∀从「まあそうだな。オレも、そこが好きだよ」

 好き、とストレートに言えるのは凄い。
 僕には言えそうにない。

从 ゚∀从「しかし、今回のは一段と暗くて厨二臭がすげえな。
     意味分かんねえし」

( ^^ω)「……面白くないホマ?」

从 ゚∀从「一般的には、多分、ウケないよ。
     でもあんたの作品わざわざ読むのなんて、
     オレみたいな趣味の奴ぐらいだろ。
     んで、オレからすりゃ、これはかなり面白い方だと思う」

( ^^ω)「ホマー」

 元より一般受けなど度外視している。
 彼女が面白いと言うなら、それでいい。


63 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[飯る] 2010/12/09(木) 21:31:43.40 ID:Honm8i8xO

从 ゚∀从「てか、あんたの作品ってバラバラだよな」

( ^^ω)「?」

从 ゚∀从「そりゃ、作品ごとに雰囲気とか違うなら当たり前だけど。
     あんたの場合、同じ作品内でも雰囲気がめちゃくちゃ変わるだろ。
     そこが面白いんだけど」

( ^^ω)「……そうホマ?」

从 ゚∀从「うん」

( ^^ω)「んー……書いてるときの気分によって変わるんだと思うホマ」

从 ゚∀从「……作家として、あんまり良くないよな」

( ´`ω)ショホマーン

从 ゚∀从「でも、あんたに限っては、それで良いんじゃないか。
     だからこそ面白いわけだし」


68 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[飯った] 2010/12/09(木) 21:59:39.37 ID:Honm8i8xO

 ハイン君は、微笑んで、僕の肩をばしばしと叩いた。
 加減してくれないかな、結構痛い。

从 ゚∀从「これからも、この調子でな!」

(;^^ω)「あうあう」






 ――気分によって変わるなら。
 今回の、この短編は、間違いなく母の死が影響している。

 それが面白いと言うのであれば、
 僕は、絶望や悲しみの中で執筆した方がいいらしい。

 ……複雑な気持ちだ。




71 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 22:11:08.58 ID:Honm8i8xO





 ――ハイン君が帰宅した後。
 何となく、カレンダーを見た。

 12月も中旬に差し掛かろうとしている。

( ^^ω)「……クリスマスが近いホマ」

 もう、母はいない。

 それでも。



 約束を守らなければいけない気が、した。




76 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 22:25:14.28 ID:Honm8i8xO

(´・ω・`)「――急ですね」

 翌日。
 原稿の回収に来た担当さんに
 「女性を紹介してもらえないか」と言うと、
 しょぼくれ顔の彼は、驚いたように目を丸くした。
 僕よりもいくつか年上の筈なのだが、どうしても年下に見えてしまう。

(´・ω・`)「先生、いつもは恋人なんかいらないって言ってたのに」

( ^^ω)「ちょっと色々と思うことがあるんだホマ」

(´・ω・`)「へえ……で、たとえばどんな人がいいんですか?」

( ^^ω)「……優しくて、僕の顔を馬鹿にしなくて、おとなしい人」

(´・ω・`)「真ん中の条件が悲しいです先生」


77 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 22:35:37.36 ID:Honm8i8xO

(´・ω・`)「しかし、あの子は駄目なんですか? 先生のファンとかいう……」

( ^^ω)「ハイン君は優しくないし僕の顔を馬鹿にするし騒がしいホマ」

(´・ω・`)「全滅じゃないですか。
      ――ふむ、それなら」


 1人、思い当たる人がいますよ、と。

 担当さんは、にっこり笑った。







川 ゚ -゚)「初めまして、素直クールといいます」

(   ω)      ^^

(´・ω・`)「先生顔面崩壊とかいうレベルじゃないですよ」

 数日後、担当さんが喫茶店で紹介してくれた女性は、
 何かもう物凄く美人だった。


84 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 22:53:21.34 ID:Honm8i8xO

(;^^ω)「ちょちょ、タイム!」

川 ゚ -゚)「はあ」

 担当さんを引っ張り、僕は店の隅へ移動した。
 素直さんは首を傾げながら僕らを眺めている。

(´・ω・`)「何ですか」

(;^^ω)「何であんな美人連れてきたホマ!? 心臓止まるかと思ったホマ!」

(´・ω・`)「何でって言われても……先生の言う条件に合う女性なんて、
      彼女しか思い浮かびませんでしたし」

(;^^ω)「だからって……」

(´・ω・`)「彼女は、人を顔で判断するような人間じゃありませんよ。
      ……先生は顔で判断するんですか」

(;^^ω)「……う……」

(´・ω・`)「安心して下さい。クーさんは嫌いな人間に対しては辛辣な態度をとりますが、
      そうでない人には優しいですし」

(;^^ω)「でも、嫌われたら――」

(´・ω・`)「余程のことが無い限りは大丈夫ですよ」

 さあ行きましょう、と今度は僕が担当さんに引っ張られ、テーブルに戻された。

89 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 23:08:57.33 ID:Honm8i8xO



川 ゚ -゚)「――内藤さん、でしたね」

( ^^ω)「はい、マルタスニム内藤ですホマ」

 素直さんは、注文したミルクティーに目を落とし、
 「珍しいお名前ですね」と言った。

川 ゚ -゚)「記憶に残りやすくて、いいと思います」

( ^^ω)「ありがとうございますホマ。
       クールさんも、いい名前ですホマ」

川 ゚ー゚)「それは嬉しいですね」

(´・ω・`)b そ

(;^^ω)(『GJ』じゃねえホマこっちはかなり緊張してんだホマ)

 素直さんの隣に座っている担当さんが、こっそりとサインを送ってきた。
 今分かった、この人楽しんでる。


92 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 23:19:55.22 ID:Honm8i8xO

川 ゚ -゚)「マルタスニム、といえば」

 ミルクティーを一口飲んで、素直さんは名前の話題を続けた。
 コーヒーにミルクをたっぷり垂らしながら、僕は「はあ」と相槌をうつ。

 そして――次いで飛び出した言葉に、手元が狂いかけた。


川 ゚ -゚)「マルタスニムは瀬川、という作家を知っていますか」


(;^^ω)「っ!?」

川;゚ -゚)「わわ、大丈夫ですか?」

(;^^ω)「は、はい……」

 じろりと担当さんを睨みつける。
 どうやら、僕が小説家であることを素直さんに教えていなかったようだ。

(´・ω・`)「あれ、クーさん、は瀬川先生の作品読んだことあるっけ」

川 ゚ -゚)「ああ」

(´・ω・`)「あの人の話、好きなの?」

 担当さんは、にやにやしながら問いかけた。
 「良かったですね先生」という目を僕に向けてくる。

93 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 23:22:09.26 ID:Honm8i8xO

 素直さんは、答える。





川 ゚ -゚)「いや、寧ろ大嫌いだ」







(   ω)     ^^

(´ ω `)       ・ ・






94 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 23:22:42.96 ID:Zj30+x3j0
い、嫌な予感しかしないホマ

98 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 23:35:29.50 ID:Honm8i8xO

( ^^ω)(おい)

(;´・ω・`)ノシ

 知りませんよとでも言いたいのか、担当さんはぶんぶん手を振った。
 ……まあ、多分本当に知らなかったのだろう。
 あれを分かっていて紹介するほど、意地の悪い人ではない。

川 ゚ -゚)「暗いし意味が分からない話を書く。
     何が書きたいのか、さっぱりだ」

 素直さんは僕達の恐慌状態に気付くことなく、つらつらと僕の批判を口にする。
 ハイン君と同じ感想でありながら、正負真逆のイメージだ。

川 ゚ -゚)「あのような話を書く人間とは絶対に仲良くなれn……――」

 はたと、素直さんが口を閉じる。
 それから、「すみません」と頭を下げてきた。

川 ゚ -゚)「内藤さんも本好きだと聞いていたもので……つい興奮してしまいました。
     ごめんなさい、気持ちのいい話ではなかったですね」

( ^^ω)「い、いや……気にしてないホマ」


100 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/09(木) 23:46:06.68 ID:Honm8i8xO

川 ゚ -゚)「話を変えましょう。
     ――内藤さんは、どんなお仕事をなさってるんですか?」

 話変わってねーよ。

( ^^ω)「……」








( ^^ω)「フ、リーター、……を」






 誤魔化すにしても、もっと他にあっただろう、僕よ。




104 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 00:02:43.31 ID:27u6leUZO




(´・ω・`)「なんか、ごめんなさい、先生」

( ^^ω)「うん……」

 男2人、とぼとぼと並んで歩く。
 途中コンビニで買った肉まんとあんまんを食べながら反省会をした。
 あんまん美味しい。あったかい。甘い。

(´・ω・`)「知らなかったんですよ、クーさんが、は瀬川作品嫌ってるなんて……」

( ^^ω)「改めて言わないで……泣きそう……」

 あんまんがなかったら泣いていたかもしれない。



 ――素直さんは、僕が思っていた以上に優しい人だった。

 フリーターと聞いても引かなかった。
 それどころか、この不況に就職はなかなか難しいですよね、
 頑張って下さい、と励ましてくれたのだ。

 そのおかげで、割と和やかな雰囲気のままお茶会は終了した。
 一時はどうなることかと思ったが、まあ、結果オーライか。


107 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 00:19:22.98 ID:27u6leUZO

(´・ω・`)「しっかしまあ……フリーターって」

( ^^ω)「あそこで作家って言ったら確実に終わってたホマ……」

(´・ω・`)「ですね」

( ^^ω)「……でも、嘘をつく方が駄目だったかもしれないホマ」

(´・ω・`)「いつか本当のこと言わなきゃいけませんね。
      ――ただし、もっと交流して、充分仲良くなってから」

( ^^ω)「ホマ……」

 担当さんが肉まんに噛みついているのを横目に、素直さんのことを考える。
 本当のことを話したら、軽蔑されるだろうか。
 少し、恐い――



    「――先生ぃいー!」

( ^^ω)「え」

「どーん!」从 >∀从)) ゚^ω)「ホマ゙ッ!!?」

 唐突に襲い掛かる衝撃。
 倒れそうになるのを、何とか堪えた。


111 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 00:32:37.92 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从「やーやー奇遇奇遇!」

(;^^ω)「は、ハイン君?」

 衝撃の正体は、後ろから体当たりを食らわせてきたハイン君だった。
 満面の笑みで、僕の肩や背中を叩く。
 だから痛いってば。

(´・ω・`)「久しぶりだね、熱心な読者さん」

从 ゚∀从「おー担当さん。男2人きりでデートかい。寂しいねー」

(;^^ω)「むむむ」

(´・ω・`)「さっきまで美女も一緒だったんだけどね」

从 ゚∀从「美女? 担当さんの恋人とか?」

(´・ω・`)「ううん、先生の恋人『予定』の人」

(;^^ω)「ちょっ!?」

 そういえば、一応それを前提とした話だった。
 素直さんにはその気は無いだろうけど。

从 ゚∀从「えっ」

 途端、ハイン君の表情が引き攣ったものになる。
 全く笑えないギャグを聞いたときのような顔だ。

114 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 00:45:14.89 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从「……二次元的な……」

(´・ω・`)「三次元だよ。予想以上に失礼だな君は」

从;゚∀从「えっ……えええええええ!?
     ガチか!!」

(;^^ω)「いやいやいやっ、多分向こうはそんなつもりは無い筈……」

(´・ω・`)「でも先生はそのつもりなんでしょう」

(;^^ω)「う、あー、あー……」

(´・ω・`)「見て見て、この人だよ」

 担当さんが携帯電話を取り出し、ハイン君に画面を見せる。
 素直さんの写真でも保存していたのだろうか。

从;゚∀从「どれどr……」




从 ∀从         ゚



118 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 00:58:31.87 ID:27u6leUZO

从;゚∀从「すげええええええええええ!
     こんな美人いんの!? 勿体ねえ! 死ぬほど勿体ねえ!!」

:( ∩∩ω):

(;´・ω・`)「先生、泣かないで下さい」

从;゚∀从「こんだけ美人だったら恋人いるだろ!」

(´・ω・`)「それがね、いないんだよ。
      あんまり恋愛に興味ない人で」

从 ゚∀从「恋愛興味無いなら先生ますますアウトオブ眼中じゃん」

 酷い、本当に酷い子だ。
 しかし彼女の発言より、否定出来ないことの方が悲しい。

从 ゚∀从「まー……うん、がんば」

( ^^ω)「投げやりー」

从 ゚∀从「だって絶望的じゃん」

(´・ω・`)「君、好きな作家によくそこまで言えるね……」


121 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 01:09:01.70 ID:27u6leUZO


 たしかに、ハイン君の言う通りだ。
 素直さんのように素敵な女性が、僕みたいなのと付き合うわけがない。

 それどころか、もう一度会ってくれるかさえ分からないほどだ。







 ――と、思っていたのだが。


川 ゚ -゚)「鯖味噌定食で」

( ^^ω)「……おすすめランチで」


 何故、僕は素直さんと2人きりで定食屋に居るんだろう。


122 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 01:22:23.17 ID:27u6leUZO

川 ゚ -゚)「いやあ、良かった。1人より、2人で食べる方が楽しいですから」

( ^^ω)「はあ」

 ――今日は、素直さんと初めて会った日から3日後。
 昼、食料を調達するために外に出た僕は、偶然にも素直さんと遭遇した。

 素直さんは近所の会社に勤めているらしく、
 今は昼休みなので、行きつけの定食屋に向かうところだったとか。

 そして、成り行きで、こんなことに。



川 ゚ -゚)「いただきます」

( ^^ω)「いただきます」

 丁寧に手を合わせる素直さんに倣って、僕も同じようにし、頭を下げた。
 ご飯の良い匂いがするが、正直、それどころじゃない。
 心臓がばくばくだ。


125 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 01:43:03.14 ID:27u6leUZO

 僕が注文したおすすめランチとやらは、何か凄かった。
 唐揚げ、鮭、トンカツ数切れ、海老フライ、ナポリタン。
 大盛りのご飯に、大根と油揚げの味噌汁。
 メインディッシュが複数ある上、量も多い。
 面倒臭いからって適当に選ぶんじゃなかった。多分、食べ切れない。

川 ゚ -゚)「ん、美味しい」

 素直さんは鯖の味噌煮を食べて、満足そうに呟いた。

( ^^ω)「……」

 とりあえず、海老フライに手をつけた。
 かじると、ざくりと衣が音をたてる。
 香ばしい衣と、旨味のある海老が絶妙だ。

 ……うん、美味しい。

 緊張感が解れてくる。
 思わずにやけてしまった僕の顔を、素直さんがじっと見つめてきた。

川 ゚ -゚)「美味しいですか?」

( ^^ω)「……はい」

川 ゚ー゚)「でしょう」

127 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 01:51:26.39 ID:bT+bBf70O
おすすめランチ食べたいわ…
おなかへった 支援

128 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 01:56:58.60 ID:27u6leUZO

 自分が褒められたわけでもないのに誇らしげな素直さんが可笑しくて、
 少し、吹き出してしまった。

川 ゚ -゚)「む、何ですか」

( ^^ω)「いえ、お気になさらず」

川 ゚ー゚)「気になりますよ」

 くすくす、2人で笑い合う。
 楽しい。

 ――そういえば、こんなこと、過去になかった。
 初めてだ。


    「ちぃーっす! おばちゃん、焼肉定食ー!!」


 がらりと開かれた入口。
 元気の良い、聞き覚えのある声。

 その人は、僕らの隣のテーブルについた。

从 ゚∀从「あ」

 ――……やっぱり。


130 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 02:05:00.79 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从

 その人は――ハイン君は、僕と素直さんを見比べて、

从;゚∀从「せっ……!」

 あんぐりと口を開け、恐らくは「先生」と言いかけた。
 恐らく、というのは、彼女が何かを言い切る前に僕が彼女の口を塞いだから。

( ^^ω)「タイム!!」

川 ゚ -゚)「あ、はい」

 3日前のように――あのときは担当さんだったが――ハイン君を隅に引っ張る。

( ^^ω)「かくかくホマホマ!」

从 ゚∀从「しかじかリヒリヒ。把握した。馬鹿だねえ、先生」

(;^^ω)「ぐう……」

从 ゚∀从「あ、『先生』じゃ駄目か。えーと、」

(;^^ω)「『内藤さん』!」

从 ゚∀从「内藤さん、ね」


133 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 02:17:36.10 ID:27u6leUZO

 席に戻ると、素直さんに訝しげな瞳を向けられた。

川 ゚ -゚)「お知り合いですか?」

( ^^ω)「えーっと、こ、この子も本が好きで」

从 ゚∀从「図書館で知り合ったんだ」

川 ゚ -゚)「ほうほう」

从 ゚∀从「相席いい?」

川 ゚ -゚)「私は構わないよ」

 どっかり、ハイン君は僕の隣を陣取った。
 不躾にも、じろじろ素直さんを眺め回している。

(;^^ω)「こら……」

从 ゚∀从「何歳?」

川 ゚ -゚)「25だよ」

从 ゚∀从「25! オレと同い年ぐらいに見えるねえ」

川 ゚ -゚)「君は?」

从 ゚∀从「19、大学生さ。今日は休み」

136 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 02:26:00.40 ID:27u6leUZO

 話が弾んでる……のか?
 とりあえず、相性はあまり悪くなさそうだ。

 年下にも関わらずタメ口をきくハイン君を叱ろうと思ったが、
 素直さんは別段気にしてないようなので、僕は黙々と食事を続けた。

川 ゚ -゚)「そういえば、君も本が好きとか」

从 ゚∀从「おう! 好みは偏ってるけどな」

川 ゚ -゚)「たとえば、どんな作家が好きかな?」

(;^^ω)「、あっ、」

从 ゚∀从「マルタスニムは瀬川」

川 ゚ -゚)

( ∩∩ω)



 嬉しい。そりゃ嬉しいけど。

 何で正直に言っちゃうの。


139 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 02:34:33.02 ID:27u6leUZO

川 ゚ -゚)「……あんなのを読むのは、暗い人ばかりだと思っていたが」

从 ゚∀从「そういう決め付けは良くないね。
     どんな人間だろうと、ビビッとくる作品はそれぞろさ」

川 ゚ -゚)「しかし理解に苦しむ……私は、あの作品を読んでいると、
     気持ちが悪くなるんだ。どす黒くて、意味が分からなくて……」

从 ゚∀从「それがいいのに。不安定さを楽しむんだよ。
     意味が分からない部分について考えるのも面白い」

川 ゚ -゚)「何より、単なる厨二臭さがキツい」

从 ゚∀从「そこが一番良いとこじゃねーか」

:(   ω):

 前言撤回。
 相性最悪だ。


141 訂正 2010/12/10(金) 02:36:04.97 ID:27u6leUZO

川 ゚ -゚)「……あんなのを読むのは、暗い人ばかりだと思っていたが」

从 ゚∀从「そういう決め付けは良くないね。
     どんな人間だろうと、ビビッとくる作品はそれぞれさ」

川 ゚ -゚)「しかし理解に苦しむ……私は、あの作品を読んでいると、
     気持ちが悪くなるんだ。どす黒くて、意味が分からなくて……」

从 ゚∀从「それがいいのに。不安定さを楽しむんだよ。
     意味が分からない部分について考えるのも面白い」

川 ゚ -゚)「何より、単なる厨二臭さがキツい」

从 ゚∀从「そこが一番良いとこじゃねーか」

:(   ω):

 前言撤回。
 相性最悪だ。


144 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 02:59:40.93 ID:27u6leUZO

川 ゚ -゚)「……」

从 ゚∀从「……」

川 ゚ -゚)「……すまない、こういう話題になると、つい」

从 ゚∀从「おう」

(;^^ω)(収まった……?)

 一応話題は終了したようだが、空気はぴりぴりしたまま。
 とても居心地が悪い。誰か替わってくれ。







从 ゚∀从「――アンチってのは面倒だなー」

( ^^ω)「仕方ないホマ、好みが違うんだから」

 一番最初に食事を終えた素直さんは、会社に戻ると言って、先程定食屋を出ていった。

 今は、定食を食べ始めたばかりのハイン君と、
 未だランチと戦っている僕の2人しかいない。


147 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 03:12:42.29 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从「ふん。あの女の味方かよ、先生」

(;^^ω)「味方っていうか……」

从 ゚∀从「デーレデレしちゃってさー」

 ハイン君が、箸の先を僕の手元に向けた。
 正確には、僕が握っているメモ用紙。



 ――素直さんが店を出る際、鞄から取り出したメモ用紙に何かを書き付け、
 僕に差し出してくれた。

( ^^ω)『?』

川 ゚ -゚)『携帯の電話番号とメールアドレスです。何かありましたら』

 女性から連絡先を教えてもらうなんて過去に一度も経験していない僕にとって、
 これはもう一大事であった。



从 ゚∀从「にやけてんぞ」

( ^^ω)「おっとっと」

 思い出している内に笑ってしまっていたらしい。慌てて表情を直す。
 「気持ち悪っ」と呟き、ハイン君は焼肉を口に運んだ。

149 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 03:22:08.07 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从「そんなに女のメルアドが嬉しいか」

( ^^ω)「家族と仕事以外に初めて他人のアドレス手に入れたホマ。
       その家族ももういないからデータ消すけど」

从 ゚∀从「ごめん」

( ^^ω)「いいホマ」

 唐揚げに噛りつく。
 かりかりの衣、柔らかい鶏肉。じゅわっと肉汁が溢れた。

 唐揚げは、皮の部分が一番美味しいと思う。
 薄くてぱりぱりの。

从 ゚∀从「……」

( ^^ω)「どうしたホマ?」

 ふと顔を上げると、ハイン君が手招きのような仕草をした。

从 ゚∀从「携帯」

( ^^ω)「?」

从 ゚∀从「携帯貸して」


152 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 03:27:25.22 ID:27u6leUZO

( ^^ω)「どうして?」

从 ゚∀从「なんか可哀相だから、オレのアドレスも教えてやるよ」

( ^^ω)「お情けで教えてもらうのはちょっと……」

从#゚∀从

( ^^ω)「どうぞ僕の携帯です」





 女の子のアドレスを、2人分手に入れてしまった。



154 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 03:32:11.29 ID:uFP+vrDb0
奇形のくせにぃ!支援

156 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 03:39:40.82 ID:27u6leUZO



(´・ω・`)「仲良くやれているようで」

( ^^ω)「ホマホマ」

 12月も、もう20日になった。
 クリスマスまであと5日。

 素直さんとのメールのやり取りも増えてきたし、
 何度か食事もした。雰囲気なんざ糞喰らえという感じの定食屋で、だが。

 もしかしたらもしかするかも、という期待が沸き上がる。

 恋人でなくてもいい。
 クリスマスに、近しい女性と一緒にいられたなら、
 母も喜んでくれるだろう。

(´・ω・`)「クーさんお酒弱いから、こう、酔わせまくって、ホテルとかに」

(;^^ω)「それはさすがに……」

 担当さん、案外過激だ。


159 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 03:55:00.80 ID:27u6leUZO

(´・ω・`)「それはさておき……お仕事の方もちゃんとやってくれてますよね」

( ^^ω)「分かってるホマ」

 原稿の束を渡すと、「よろしい」と担当さんが頷いた。
 要求されたのは5ページ程のショートショート。
 僕にしては、随分早く書き上がった方だ。

(´・ω・`)「……」

 無言で現行を読む担当さん。
 眉根に僅かな皺が寄っているのに気付き、不安になった。
 しかし予想に反して、読み終えた担当さんは、うんうんと頷いてくれた。

(´・ω・`)「まあ、いいと思います。いつもより内容が明るいですね」

( ^^ω)「そうホマか」

 それはそうかもしれない。
 素直さんの批判を思い出して、なるべく暗くなく、
 明瞭な内容にしようと書いたから。


161 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 04:08:29.79 ID:27u6leUZO

 そのとき、どんどんとドアが叩かれた。
 誰なのかは大体分かる。

( ^^ω)「鍵開いてるホマー」

 そう告げると、勢いよくドアが開いた。

从 ゚∀从「おいっす!」

(´・ω・`)「こんにちは。丁度、先生の新作があるよ。ショートショートだけど」

从*゚∀从「オゥフ。見せて見せて」

 担当さんから原稿を受け取ったハイン君は座りもせずに、
 嬉しそうに文字を追い始めた。

从*゚∀从

从 ゚∀从

从 ゚‐从

( ^^ω)「……?」

 どうしたのだろう。
 顔が険しい――


从 ゚‐从「オレ、これ嫌いだ」

163 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 04:19:02.00 ID:27u6leUZO

(;^^ω)「え……っ」

从 ゚‐从「……」

 原稿を担当さんへ投げ渡し、踵を返す。
 まだ来てから10分も経っていないというのに、
 ハイン君はさっさと出ていってしまった。

(;^^ω)「……」

(´・ω・`)「……先生らしくない作品ですからね。
      彼女には、合わなかったのかもしれません」

 言って、担当さんが立ち上がる。

 「また今度」と、担当さんは原稿を抱えて、部屋を出た。




176 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 10:21:10.85 ID:27u6leUZO



( ^^ω)「……」

 考え込む。

 一体、ハイン君は何故あんなに怒ったのだろう。
 いや怒ったのかどうかはいまいち分からないが、機嫌を損ねたのは確かだ。

 作風が変わっただけで、ああも嫌がられてしまうのは、ちょっと納得出来ない。

( ^^ω)(訊いてみよう)

 僕は携帯電話を取り出し、ハイン君にメールを出した。
 どうしてあんなに怒ったの、と。

( ^^ω)

( ^^ω)「……んんん……?」

 10分。1時間。2時間。

 返事は、一向に来ない。

 いつもなら、びっくりするほど早く返ってくるのに。


177 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 10:26:54.96 ID:27u6leUZO

 たまたま返せない状況にいるだけか。
 あるいは。

( ^^ω)「……」



 ――結局、その日、返事が来ることは無かった。








( ^^ω)「ホマ……」

 翌日になっても僕は携帯電話が気になって気になってしょうがなかった。
 ふとしたときに開いては、メールの確認をする。
 やはりハイン君は何も答えてくれない。

 そんなに怒っている?
 それとも僕の訊き方が悪かった?


179 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 10:38:00.36 ID:27u6leUZO

 女の子とメールをするなんて素直さんとハイン君が初めてで、
 こんなことになったのも初めてなんだ。

 分からない。
 どうするべきなんだろう。

( ^^ω)「……」

 もう、ハイン君は僕と話してくれないんだろうか。
 嫌われてしまったんだろうか。

 ぽっかり、穴があいてしまったような気がする。

 友達を失うのは、こんなにも辛いのだと、初めて知った。




180 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 10:39:16.96 ID:27u6leUZO



 それから。

 ハイン君からの連絡が全く無いまま、
 時は、24日へと進んでいった。




181 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 10:50:19.32 ID:27u6leUZO

 ハイン君のことが気になりながらも、僕は、素直さんと定食屋にいた。

川 ゚ -゚)「ん、美味しい」

( ^^ω)「ホマ……」

 カレーライスを食べても、味に集中出来ない。
 掌に尋常じゃないレベルで汗をかいている。

(;^^ω)(深呼吸、深呼吸)

 ――素直さんを、誘おうと思っているのだ。
 デートに、なんて立派なものじゃなく。
 ただ、明日の夜だけ、どこかで一緒にいてくれたら、それでいい。

 そうだ、駅前に、一緒に買い物にでも行こう。
 僕がプレゼントを選ぶなんて恐くて出来ないから、
 素直さんが欲しいと言ったものを、僕が買ってあげよう。
 まるで女の子に貢ぐオッサンのようだが、それぐらいしか出来そうにない。


183 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 11:06:51.14 ID:27u6leUZO

(;^^ω)「……す、し、すすす素直さん!」

川 ゚ -゚)「はい」

(;^^ω)「あの、あのあのあのあああああ、明日……」

川 ゚ -゚)「明日?」

(;^^ω)「あ、あ、あ……明日……予定、ありますか……」

 訊けた。よし。

 素直さんの様子を窺うと、彼女は小首を傾げて、鞄から手帳を取り出した。

川 ゚ -゚)「急ですね……ちょっと待って下さい」

(;^^ω)「うあ」

 ――しまった、たしかに急だ。
 若い女性の、それもクリスマスの予定なんて、
 もっと前から確認するべきだった。
 みんながみんな、僕のように、好きに暇を作れるわけじゃない。


187 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 11:15:41.60 ID:27u6leUZO

( ´`ω)「すみませんホマ……こんなの慣れてない……というか初めてで……」

川 ゚ -゚)「……」

 スケジュールを確認し終えたらしい素直さんは、手帳をぱたんと閉じ――

 にこりと、笑った。

川 ゚ー゚)「夕方からなら、空いてます」

( ^^ω)「え……」

川 ゚ー゚)「……私、内藤さんのそういうところ、いいと思いますよ。
     正直で」

( ^^ω)「そ、そうホマ?」

川 ゚ー゚)「ええ」



川 ゚ー゚)「私、自分の都合のいいように嘘をつく人、大嫌いですから。
     内藤さんみたいに本当のことを言える人は、好感が持てます」



( ∩∩ω)

 泥沼だ。

190 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 11:33:53.80 ID:27u6leUZO

 とりあえず約束までこぎつけた。

 明日の夕方、駅前で待ち合わせて、どこかで適当にご飯を食べて、
 その後ぶらぶらと歩き回ろうということになった。

川*゚ -゚)『楽しみです』

 帰り際、そう言った素直さんの顔が、脳裏に焼き付いて離れない。





( ^^ω)「……」

 定食屋から家に帰るまで、そして家に帰ってからも、ずっと。
 胸が、どきどきしている。

 でも、恋だとか、そんなのじゃない。

 素直さんに本当のことを言うべきか、言ったらどうなるか。
 それを考えると、妙な焦燥感が迫り上がってきて、
 心臓が、痛いぐらいに激しく鼓動を刻むのだ。


194 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 11:54:20.50 ID:27u6leUZO

 軽蔑するか。

 案外、受け入れてくれるのか。


 ――『私、自分の都合のいいように嘘をつく人、大嫌いですから』――


( ^^ω)「……」

 彼女は嘘つきが嫌い。
 そのことを知っていながら更に嘘を隠し続けたら、
 それこそ彼女の嫌いな『自分の都合のために嘘をつく人』になってしまう気がする。

 後で言えばいいという問題でもない。
 寧ろ、長引かせれば長引かせるほど危険だ。

 それに、僕が話すより前に、何かしらの要因によって
 彼女が真実を知ってしまったら?
 そんなの、最悪もいいとこだ。


196 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 12:12:40.55 ID:27u6leUZO

 ――不意に、携帯電話から軽快な音が流れた。
 メールの着信音。

( ^^ω)「!」

 急いで開く。

 頭に浮かんでいたのは、ハイン君の顔。

 でも。


 『差出人:素直クール
  件名 :無題
  本文 :明日のことについて確認していいでしょうか?』


( ^^ω)「……ホマ」


198 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 12:29:42.31 ID:27u6leUZO

 何をがっかりしているんだ、僕は。
 そもそも、ずっと素直さんについて考えていたのに、
 どうして今更ハイン君が出てきたんだ。

( ^^ω)「いいですよ、と……」

 返信。

 しばらく経って、再び素直さんからメールが来る。
 やはり、ハイン君の返信の速さは凄まじいものだったのだなと、何とは無しに思った。

 それから何度かメールを送り合い、予定の調整をする。

 『分かりました。楽しみにしていますね。』

 全て決め終え、素直さんからそんな返事が送られてきた。
 一区切りついた。
 おやすみなさいと告げ、メールを終わらせるべきか。

( ^^ω)



 ――メールを、送る。


 『一つ、言うべきことがあるんですが』


201 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 12:34:34.52 ID:27u6leUZO

 『何ですか?』



 手の汗を服で拭い、携帯電話を持ち直した。
 震えそうな親指で、一文字一文字、ゆっくり打ち込んでいく。





 『僕は、小説家です
  マルタスニムは瀬川なんです』






203 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 12:48:59.93 ID:27u6leUZO



 10分後。
 素直さんから、返事が届く。


(;^^ω)


 顔が熱い。
 胸が、首が、手首が、どくどくと跳ねる感覚。

 メールを開く。

 かこ、と、携帯電話のボタンが小さな音をたてた。




 『嘘をついていたんですか。』



 ――頭の中を、強く揺さぶられたような感じがした。


204 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 12:49:00.97 ID:fmNZDlrl0
何回f5叩けば良いんだい?

206 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 12:59:25.22 ID:27u6leUZO

(;^^ω)「……!」

 違う。いや、違わない。
 でも。ああ。


 『嫌われたくなかった』



 『私も嫌いたくなかったです。』




 「嫌いたくなかった」。
 過去形。
 それは、じゃあ、つまり。




208 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:04:16.96 ID:fmNZDlrl0
ほまぁ……

209 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:05:10.77 ID:27u6leUZO


 『ごめんなさい
  何と言えばいいか、分かりません』


 本当に、僕は何を言えばいいのか分からない。
 分からない。



 『内藤さんは善い人だと思います。
  だからこそ、とても悲しい。』



(   ω)


 僕が返す前に。
 続いて、メールの着信音が響いた。



 『明日のことは、申し訳ありませんが、考え直させて下さい。』



212 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:26:41.17 ID:27u6leUZO





(´・ω・`)『はあ……それは、何というか。
      ……お気の毒です』

 翌日、担当さんから電話がきた。
 素直さんと出掛けるかどうか知りたかったのだという。

 しかし、ありのまま昨日のことを話すと、
 担当さんは、たちまち沈んだ声になってしまった。

(´・ω・`)『でも、それは先生の責任じゃありません。
      クーさんの好みを調べずに紹介した僕が悪い』

( ^^ω)「いいや、それでも嘘をついて隠していたのは僕ホマ。
       ……僕が馬鹿やったんだホマ」

(´・ω・`)『……』

( ^^ω)「それじゃあ、また今度。メリークリスマスホマ」

(´・ω・`)『……メリークリスマス、先生』


215 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:32:46.70 ID:27u6leUZO

 通話を切って、携帯電話を放り投げた。

 床に転がり、ぼうっと天井を眺めた。



 約束は、結局、母も僕も守れなかった。


 寂しい。
 悲しい。
 情けない。


( ^^ω)「……」



 窓を見る。
 暗い。

 ――昨日あんなことを言わなければ、今頃素直さんと一緒にいたのだろうか。



217 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:38:40.45 ID:27u6leUZO





( ^^ω)










 一人ぼっちだ。






219 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:39:38.04 ID:27u6leUZO





















221 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:41:04.85 ID:27u6leUZO




















 どん、どん。


224 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:43:02.87 ID:27u6leUZO

 ドアが叩かれた。

 どんどん。どんどん。

 安普請のアパートなのだから、そう強く叩かないでほしい。





    「先生」





( ^^ω)




 ――何だ。
 君か。




227 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:50:06.76 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从「めりくり顔面奇形」

( ^^ω)「メリークリスマスホマ」

 鼻も、頬も、耳も真っ赤にして、
 ハイン君はぞんざいな挨拶をくれた。

 よく見れば、体が小さく震えている。
 長いこと外にいたらしい。

 招き入れると、早速お茶を要求してきた。





( ^^ω)「どうぞホマ」

从 ゚∀从「ん」

 マグカップを両手で持ち、彼女は暫く温かみを堪能した。


229 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 13:58:32.67 ID:c+yH23ouO
> 从 ゚∀从「めりくり顔面奇形」

ワロタwww

231 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 14:06:47.17 ID:od80vnFO0
クーが悲しかったのは嘘つかれてた事だよな…

232 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 14:08:13.20 ID:27u6leUZO

( ^^ω)「珍しいホマね、こんな遅くに」

从 ゚∀从「昼とか夕方には、あの美人とデートしてそうだから来なかったけど、
     真夜中なら確実に家にいるだろうと思った」

( ^^ω)「どうして?」

从 ゚∀从「外泊する度胸、先生には無いだろ」

( ^^ω)「……たしかに。
       でも今日は一日中ここにいたホマ」

 そう言ってやると、ハイン君は間の抜けた顔をした。
 「何で?」と問う声が本当に不思議そうで、少し面白い。

( ^^ω)「かくかくホマホマ」

从 ゚∀从「しかじかリヒリヒ。……面倒な女に引っ掛かったもんだね、先生」

( ^^ω)「素直さんはそういう人で、僕がヘマやらかしたってだけホマ」

 ハイン君は、呆れた表情で僕を見る。
 この間のことなんてまるで無かったかのように、いつも通りだ。


236 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 14:20:25.58 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从「……ま、あの美人は先生には勿体なかったし、
     いいんじゃないの、これで」

( ^^ω)「ホマ……」

从 ゚∀从「それとも先生、本気で惚れてた? 寂しい?」

( ^^ω)「……」


 どうなんだろう。
 このまま素直さんと何の関わりも持たなくなったとして、
 僕は悲しむのだろうか。

 そりゃ、たしかに寂しくはあるけれど。
 僕の胸を満たす寂しさは、約束を守れなかったことの方が強いと思う。

 ええと。
 ……そうだな、


( ^^ω)「ハイン君と話せなかったときの方が、寂しかった気がするホマ」

从 ゚∀从


 あのときは、何かを無くしてしまったような虚しさがあった。
 今は、無い。

238 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 14:25:03.71 ID:/IyHXbpdO
すなお

242 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 14:33:17.06 ID:27u6leUZO

 やはり付き合いの長さの問題なのかもしれない。
 時間は数ヶ月程度の違いだけど、気持ちの面ではだいぶ違うのだ。

( ^^ω)「だから、恋はしてなかったかも……」
  _,
从 -∀从

(;^^ω)「……どうしたホマ」

 マグカップをテーブルに置いて、ハイン君はひどく難しい顔で目を閉じた。
 悪いこと言ったかな、僕。

  _,
从 -∀从「……」

 携帯電話を取り出し、ハイン君は、やけに凄いスピードで何事か操作し始める。
 なるほど、メールの速さも納得の動きだ。

从 ゚∀从

 最後に決定キーを力強く打ち、携帯電話を閉じた。
 何をしたのかと僕が訊こうとしたとき、

 僕の携帯電話が、メールの受信を知らせた。


247 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 14:45:21.78 ID:27u6leUZO

( ^^ω)「?」

 まさか素直さんというわけもあるまい。
 誰だろうと疑問に思いながら開くと――

 誰からのものであるかという疑問は解け、
 一体どういう意味だという疑問が生まれた。



 『差出人:ハインリッヒ高岡
  件名 :Re:
  本文 :涙が好きだ。
      だから、私は涙で出来てる君が好きなのだ。
      君は涙で、涙は君――』



 ……この厨二臭溢れる文は見覚えがある。

 いつぞやに僕が書いた短編の一部だ。
 というか改めて見ると、かなり恥ずかしい。何だこれ。


250 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 14:52:54.92 ID:27u6leUZO

 そういえば、件名に『Re:』とある。
 返信?


( ^^ω)「……」


 一番最近、僕が彼女に送ったメールは、たしか、
 あの日――ハイン君が不機嫌になって帰った日のものだ。

 どうしてあんなに怒ったの、とかいうような。


( ^^ω)「ハイン君――」

从 ゚∀从「ちょっと黙ってオレの話を聞け」

( ^^ω)「はい」

 問おうとすると、とても恐い顔で睨まれた。
 これは黙るより他ないではないか。


252 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:04:08.65 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从「あんた、言ったよな。
     そのときの気分によって作品内の雰囲気が変わるって」

( ^^ω)「……ホマ」

从 ゚∀从「じゃあ、あんたの作品は、あんた自身の心も表してるってこった」

 そういうことになるのか?
 まあ、ならないとも言えないし、とりあえず頷いておく。

从 ゚∀从「……私は、あんたの書く話が大好きだ。
     どれもこれも、大好きで仕方ない」

( ^^ω)「ホマ」

从 ゚∀从「……気付けよ」

(;^^ω)「?」


从#゚∀从「――あんたが作品そのもので!
     オレは、作品が大好きなんだってば!!」



256 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:11:23.54 ID:XAIVDtqaO
ハインが可愛すぎる支援

257 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:11:38.71 ID:27u6leUZO

( ^^ω)

( ^^ω)「どういうことなの……」

从#゚∀从 ブッチン

 あれ、何か血管切れるような不吉な音が。



从#゚∀从「オレは、あんたが好きなんだよボケェエ!!」



 叫び、ハイン君がテーブルに拳を振り下ろす。
 マグカップが倒れ、お茶がぶちまけられた。


( ^^ω)

从#゚∀从



 ……ん?
 え? 今のって、え、え?


258 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:13:29.85 ID:JfcrapKAO
先生がにぶちんすぎる

261 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:27:18.11 ID:2tEDY4GPO
川 ゚ -゚)で頭がいっぱいな状態で書いたショートショートに嫉妬してたのか

262 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:27:50.90 ID:27u6leUZO

从 ゚∀从「……先生が書いた新作のショートショート。
     あの美人の批判をばりばり意識してんの、丸出しだった」

 少し落ち着いたのか、声のボリュームが下がる。
 いや、君が落ち着いても、こっちは大混乱なんだけども。

从 ゚∀从「話は面白かったよ。
     でも、嫌だった。……嫉妬だ。ヤキモチだよ。
     あの人は、先生にとって、そんなに大きな存在なのかって腹が立ったんだ」

(;^^ω)「あ、あう」

从;-∀从「……くそ、あんたが変なこと言うから、
     思わず告白しちまったじゃねえか」

(;^^ω)「へっ、変なこと……?」

从 ゚∀从「オレと話せなくて寂しかったって。
     あんなん言われたら嬉しくなるだろうがよ、畜生」


264 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:31:18.41 ID:fmNZDlrl0
すっげー。ニヤニヤしちゃった。
やっべー。気持ち悪いわ。ホマホマ爆ぜろ。

268 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:35:40.24 ID:/IyHXbpdO
書く際の心境がばっちり反映されてる文か好きなんだもんなぁ

269 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:38:55.77 ID:27u6leUZO

 そう、寂しかった。
 あのとき、とてつもない虚無感に襲われた。


 ――心臓がうるさい。
 顔が熱い。
 頭が真っ白だ。

(;*^^ω)

从*-∀从

 ハイン君は真っ赤になって、そっぽを向いた。



 僕は、愛だの何だの、よく分からない。ろくに知らない。

 だから、これが本当に「そう」なのか、判断はつかないけれど。


 素直さんとハイン君に対する感情が全く違ったことだけは、
 今更ながら気付いてしまった。



271 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 15:46:23.72 ID:27u6leUZO



从*゚‐从「……もう、改めて言うけど。
     好きだよ、先生」



 時計を見る。
 つい先程日付が変わったようだ。


 クリスマスに間に合わなかったことは残念だけど。

 でも、それよりも。


 抱えきれないほどの幸福の方が、勝っている。





(*^^ω)「多分――僕も、君が好きホマ。ハイン君」






279 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 16:01:37.04 ID:27u6leUZO


(´・ω・`)「結局そっちとくっつきましたか」

( ^^ω)「まあ、そうなったホマ」

(´・ω・`)「お幸せに」

( ^^ω)「ありがとうホマ」

 僕の部屋で作品の打ち合わせをしながら、担当さんに洗いざらい話すと、
 担当さんは、ほっと息をついて祝福してくれた。

 2日後は大晦日。
 世間はやたらと忙しそうだ。

(´・ω・`)「そうそう、クーさんから伝言なんですが」

( ^^ω)「……ホマ」

(´・ω・`)「『大変失礼なことをしてしまった、
       考えてみれば、自分が内藤さんの前で作品を否定したのが悪かった。
       もし許してくれるなら、また今度、お食事に行ってくれませんか』と」

( ^^ω)「……そうホマか」

(´・ω・`)「反省してるみたいでしたよ。
      あの子も連れて、クーさんとご飯食べに行ったらどうでしょう」

( ^^ω)「そうしてみるホマ」

281 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 16:09:22.51 ID:27u6leUZO

    「せーんーせー!」

(´・ω・`)「お、来ましたね」

( ^^ω)「ホマホマ」

 どんどん、乱暴なノック。



 ――ドアを開けると、いつもの通り、笑顔の彼女が立っていた。










( ^^ω)クリスマスには間に合わなかったようです



おわり



285 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 16:10:43.03 ID:27u6leUZO
終わり





書いてる俺が一番ダメージ受けてる

291 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 16:16:58.75 ID:27u6leUZO
>>1さん、素敵なタイトルで立ててくれてありがとうございました!

レスしてくれた人や読んでくれた人もありがとう。みんなありがとう。


さっき気付いたけど、>>252のハインの一人称が……同じミスやらかしてそうだ


さて、質問・指摘ありましたら、お願いします

299 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 16:25:27.90 ID:27u6leUZO
>>293
これ以上幸せなマルタスニムとハイン書いたら俺が泣く
リア充爆発しろ


>>296
おkおk

301 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 16:28:00.23 ID:27u6leUZO
>>297
川 ゚ -゚)「まじファック」


>>298
そういったのは多分書いたことないな
ハイン自体あんまり使わないし

306 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 16:39:57.74 ID:27u6leUZO
>>302-304

長編→( ^ω^)七大不思議と「せいとかい」のようです

短編→('A`)燃え尽きた後のようです

   ξ*゚⊿゚)ξふたりはなかよし(^ω^*)のようです

   (*'A`)ふたなりなかだし(゚- ゚*川のようです

   川 ゚ -゚)日和のようです(乗っ取り)

   ( ^ω^)の川 ゚ -゚)ルなナイトのようです(乗っ取り)

   ( ^ω^)が拳の王となるようです(乗っ取り)

   ( ^^ω)クリスマスには間に合わなかったようです ←New!


最近暇な上に創作意欲が止まらないおかげでこんなことに




>>305
:(;゚"ω"゚):

313 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 16:49:16.86 ID:27u6leUZO
>>307 >>311
最近色々書きすぎてて、そろそろ飽きられてるんじゃないかとビクビクしている

317 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 17:09:36.00 ID:27u6leUZO
>>300
マジでありがとうございました!
最初スレタイ見たときは「どうすりゃいいんだwww」と思ってたけど、
いざ書き始めると物凄く楽しかったです


>>308 >>316
ξ*///)ξ ばっ、馬鹿じゃないの!? 式は神社と教会どっち!? 




ではでは、皆さん本当にありがとうございましたー
一応引っ込むけど、質問とか書いてくれたらどこからともなく現れて答えていくよ

320 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage] 2010/12/10(金) 17:12:23.92 ID:CK/OyixY0
シベリアからー。



>>330
>文章がキレイで話にも感動したので
>http://raicho.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1291868908/にどなたか乙を届けて下さいまし

>(´・ω・`)つ凸報酬のヲッカです


ヲッカうめぇ

321 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 17:15:13.80 ID:od80vnFO0
>>320
お前が飲むなよwww

324 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 17:19:13.02 ID:4c3SA/030

その後三人でめし食うときどんな風になってるか気になる

326 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 17:37:38.11 ID:27u6leUZO
>>320
感想と配達ありがとうございます


>>322
え、俺が? 作中の奴らが?
俺は赤川次郎とか京極夏彦とか平山夢明が好きです



>>324

川 ゚ -゚)「ショボンさんにショートショートの原稿見せてもらいましたが、
     面白かったですよ。ああいうのが好きです」

( ^^ω)「ありがとうg从#゚∀从「先生に色目つかうんじゃねえ!」

川 ゚ -゚)「内藤さん、この天ぷら美味しいですよ。お一ついかがですか」

( ^^ω)「いただきm从#゚∀从「ナチュラルに『はい、あーん』やってんじゃねえ!!」

川 ゚ -゚)(何この子面白い)


多分こんな感じになってたらラブコメっぽくて良いよね爆発しろ


345 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2010/12/10(金) 23:15:38.12 ID:27u6leUZO
気付くの遅れた、ごめん

>>344
プロット立てたことない
いきあたりばったりで書いてる




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