ξ゚⊿゚)ξ幸せは飼い主に戻らないようです
- 1 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:34:00 ID:1Z.naQPo0
- 【なぜ干すと甘くなるのよ困惑が西を目指してくす玉割れて】
ξ゚⊿゚)ξ「やーいやーい……姿見、めぇ」
ツンです。
17歳です。ほだされています。
冬の扇風機の前で、足を投げ出しております。
それが何かの原動力になるとは思わないです。
恋がしたいです。パンが食べたいです。
柔らかい食パンに唇を沈ませたいです。
マーガリンを端から……端まで!塗ってみたいです。
砂を噛んでなんかいません。
なのに口がじゃりじゃりとするんです。原因は分かっております。
クーさんです。
- 2 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:35:14 ID:1Z.naQPo0
川 ゚ -゚)
クーさんは……葡萄でした、
どこまで行っても葡萄です。
クーさんは放課後の教室で、朝日に背中を預けていました。
どこかの星の仏像が、こんな感じなのでしょうか。
川 ゚ -゚)「ツンさん、今くらいじゃないか?」
どきりとしました。
私にはクーさんのしゃべる言葉がまったく理解できませんでしたし、
そのとき私は不覚にも皿の白さを考えていたため、
クーさんの言葉は股の間をすり抜けてモスクワへ発ちました。
ξ゚⊿゚)ξ「あの……クーさん、私……」
川 ゚ -゚)「わかってるんじゃないか。君なら知っているはずだし、
今度はないかもしれない、だから……」
- 3 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:35:54 ID:1Z.naQPo0
それは知っていました。
これまでの人生において、一度あることは一度で終わりました。
二度続いているのはすべて錯覚で、角度を変えてみてみれば
みんなどこかが相違していて、万華鏡のようです。
だからこそ、今この時間を保ち続けていることが
何よりの任務であるはずなのに……私にとってそれは余りに
繊細すぎました、私の指は小指よりも細かったのです。
ξ゚⊿゚)ξ「クーさん、歩きませんか……?」
川 ゚ -゚)「……そうだな」
クーさんのそのときの表情は、何も変わらないようでしたが、
きっと失望していたのでしょう。そうでしょう、逆の立場なら
私だってそう思っていたはずです。
川 ゚ -゚)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
- 5 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:36:37 ID:1Z.naQPo0
私とクーさんは、沈黙に運ばれて枯れ木通りを転がりました。
その間、私たちは二つの宇宙がありました。二つの宇宙は
干渉することなく膨らんでしぼんで立ち止まって落ちていきます。
それはある意味で当たり前のことでした。
歩くことと抱きしめることを両立させることは、
どんな人にだって出来ないはずですもの。
クーさんと別れた瞬間、私は崩れ落ちました。
十年分のとしつきに頭を押さえつけられたようです。
何も言えない、何も吸えない。
そんな状態で、私はどうやってこの部屋まで帰ったのでしょう。
- 6 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:37:27 ID:1Z.naQPo0
壁に開いた画鋲の穴だけを見るようにするうちに、
その穴は回転しつつ広がっていき、やがて私は
体育館のステージの上でマイクを握っていました。
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
300の坊主頭が一心に私を見つめているのが分かります。
やめてほしいと願いました。それで責めているつもりならば
私の自制回路は手首の先ほども機能しておりません。
あ、あ、と母音だけがぽろぽろと歯の隙間をこぼれる中で、
私を成り立たせるすべてが泡となって中へ浮かんでいきます。
- 7 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:38:16 ID:1Z.naQPo0
ξ゚⊿゚)ξ「本日、きりんの……」
ようやく船を漕ぎだし始めた私のスカートを誰かが引っ張っているのを感じました。
女の子でした。バッテンが書かれたマスクを私の開いてる手に
押しつけて、彼女は言いました。
从 ゚∀从「言うなんてあなたには無理なのよ」
女の子はスカートを引っ張りつつ私を引き留めますが、
もう無理なんです。動き出しました、流れを止めることは、
すなわち別の流れに行くことを意味します。
それでは私の為のものが自転車や蚊やト音記号に奪われます。
だめなの、だめなの、だめなのだめなの……
いつの間にか私は泣いていました。
- 8 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:38:58 ID:1Z.naQPo0
ゆでたまごの殻と白身の間の膜みたいなものをかき分けて、
やがて晴れました。薄れていく影の間から、
お兄ちゃんは面倒くさそうな皺をたたえて手を差し伸べます。
('A`)「まだ……子供じゃないか、10代は考える世代でも無いだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「私に考えるなって言いたいの?
そんなの薄情だとは思わないの?
横転する洗面器がお兄ちゃんの青春にあったの?」
まくし立てる私を横目に、お兄ちゃんは細長い飴を
ペーパーナイフで削り続けています。
私がそれを愛しているのを知っているものだから、
そんな手段を取ったりするんです。ずるいです。
('A`)「あったよ、俺の青春にも……」
削りかすの飴に会釈をすると、お兄ちゃんは私の顔を見ました。
じっと見ています。
- 9 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:39:39 ID:1Z.naQPo0
お兄ちゃんが私を見ているということは、私がお兄ちゃんを
見てることにもなるのは、なんだか癪で、私はお兄ちゃん越しに
昨日をみました。小銭が震えます。
('A`)「おまえ……」
ξ゚⊿゚)ξ「なによ」
('A`)「なんでもない。パンとパンの間に気をつけろよ、
あそこじゃ人間は通用しない」
小銭が無念そうに財布へ戻っていく様子が、
お兄ちゃん越しに見えていきました。
- 10 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:41:07 ID:1Z.naQPo0
次の日。
太陽は珍しいぐらいに人の機嫌を逆なでしていて、
手首の時計の文字盤を叩く度に、路上の野良ガムは
成功者の足をすくいつづけます。
坂の向こうから、クーさんが歩いてくるのが見えます。
私は鞄を振り回しながら叫びました。
ξ゚⊿゚)ξ「クーさん、気付きました!わたし、気付いたんです!」
クーさんが笑っているのが確かに見えて、
私はそのとき安心しました。その時ばかりは、
忘れていた図書のすべてが心をどっと駆け抜けていくのを
捕まえられそうな気がしました。
クーさんは、笑みをたたえつつ、確かに言いました。
川 ゚ -゚)「もう遅いんだよ、ツンさん」
それが聞こえた時、私の上を忘れ形見の花粉が通りすぎて行きました。
【おわり】
- 11 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:41:52 ID:1Z.naQPo0
- 【煙突を上る三度の飯よりも果物だけを仕事と偽る】
ぱん。
平手打ちを食らった瞬間に俺は俺でないことを知った。
痛みは俺の頬を簡単にすり抜けていった。
なのに、痛みだけは残していったのは。
( ゚∀゚)「ぅつー……」
ぶくぶくと沸騰する頬をハンカチで押さえて俺は唸った。
鞄の中のメーターが音を立てて砂に変わっていく。
西が比べられた。
川 ゚ -゚)「大丈夫か」
クーの言うことを信じちゃいけない、
もう一度言おうか?
ク ー の 言 う こ と を 信 じ ち ゃ い け な い
- 12 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:42:33 ID:1Z.naQPo0
証拠が必要だというなら、見せてやろう。
見ろ!この俺の足を!手を!国を!空を!
紫色が波紋のように広がっていき、居酒屋の兄ちゃんは
それを見て何かを悟った様子で空のジョッキを下げる。
川 ゚ -゚)「ありがとう、これから始まっていくから、
もう心配はないかもしれないけど……」
柱にくくりつけたビニール袋の中をまさぐり、
クーは無人島の権利書をテーブルの上に置いた。
テーブルは山芋のトロトロで、プリントがふるさとに帰るよう。
川 ゚ -゚)「ここ」
権利書の一番下、耳掻きの先ほどの小さな枠を、小指の爪で
叩いて示す。
( ゚∀゚)「……」
操り人形のようなぎこちない動作で、俺はそこに
駒を置いた。ここから始まっていくという、印であり、
また、とりあえずのとりあえずだ。
- 13 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:43:28 ID:1Z.naQPo0
川 ゚ -゚)「何か食べる?おなかが空いたんじゃないか?
カロリーを取らなければ、ダメになるぞ。
今は給食のカロリーを減らすなんて話がでているらしいが、
あれはいけないな。子供は太っているぐらいがいいんだ。
子供の頃に蓄えたカロリーは、生涯をかけて少しずつ
消費していく。そのたびに、単語を覚えたり、
むずかしいS字クランクを攻略したり、ゴミ箱を
溢れさせたりしていって、それを、キャリアだとか、
成長だとか、呼ぶんじゃないだろうか。
"おい、悪いが何か丸い食べ物を。"
で、子供の頃はカロリーを蓄えることが出来るが、
実は大人はそれが出来ないんだ。大人が口にしたカロリーは
すべて虚空に消えてしまう。みんな勘違いしてる」
つま先、なくなれ。なくなれ。
ずっとそう思っていた。永遠とも思える時間の中で、
俺の足先は微動だにもせず、尺取り虫が我が物顔で
闊歩していく。がまんならない。
- 14 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:44:46 ID:1Z.naQPo0
( ゚∀゚)(なぜ俺はこんなところにいるんだ?)
今自分がここにいて、箸を持っていて、
一匹の蠅が飛んでいて、それを追いかけつつの
自分が、なんだかもう一人いるみたいで……
涙がじっくりと湧きだして、瞼で押さえる。
<ヽ`∀´>「お待ちしました、すだちと、です」
すだちとよくわからない食べ物がきて、
俺はそれをどう食べていいかもわからず、
また一つ、この空間から遠ざかってしまった。
クーは平然とした顔でそれを食べているから、
それを真似ればいい話なんだけど、俺は彼女の顔を
まともに見ることが出来ない。
- 15 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 01:45:26 ID:1Z.naQPo0
冬がきた。冬は寒いだけで冬なわけじゃない。
寒さと、それの対策とでワンセット、これが冬を構成する。
湯気が立つ皿の上の丸を口に運んだ瞬間、
ようやく冬が訪れたのだ。
( ゚∀゚)「もう、いいか」
おいしいものを食べて、おいしいものが減る。
それは避けられないことだし、それはしなきゃいけないことだ。
川 ゚ -゚)「あ、雪だ」
【おわり】
- 17 名も無きAAのようです 2013/01/03(木) 20:14:55 ID:1Z.naQPo0
- 【悪いけど今から君を騙すから出来れば耳を塞いで 嘘】
('A`)「俺、思ったんだけどさ、日本の女の子はさ、
可愛すぎるんじゃないか」
ドクオは、先生がプリントを取りに職員室へ戻ったあと、
こちらを振り向いて言った。
( ^ω^)「きれいな子が多いってこと?」
('A`)「いやぁ、可愛いってのはその、容姿の美醜でも
性格の善し悪しでもなくて、なんて言えばいいのかな……」
- 18 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:15:47 ID:1Z.naQPo0
('A`)「たとえば、この消しゴムを日本の女の子とする。
いいか、この女の子のプロフィールがどうたらとかは決めない、
こいつはあくまで、"日本の女の子"だ。
この女の子に、俺が近づく。
そうだな……じゃあ、指を俺とする。
え?身長が逆?例えだよ、例え、気にすんな
んで、近づくだろ。すると近づいた途端にもう、そいつに惚れてたりする。
おかしいだろ?」
ここで突然だけど、実は僕、ドクオと話したことは
今まで一度もないし、二人の間に接点もない。
- 19 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:16:28 ID:1Z.naQPo0
ただ、席が前後で隣同士だけど、横の隣同士と違って
前後の隣同士だと、顔を見るのでさえ、プリントを回すとき
ぐらいだ。
何が彼を駆り立てたんだろうか?
正直、ドクオがそんなに女の子の好みの話をしたがっているようには
僕には見えない。彼は、なにかしらのとっかかりを作りたくて、
女の子の話題を選んでいるように感じる。
('A`)「正直、惚れた惚れないにめんどくさい手続きっていらないんだよな。
においってのは、においの元の成分が鼻にくっつくことで感じるって言うけどさ、
惚れるってのもそういうことだと思うんだよ」
僕は右耳で彼の話を聞きながら、左耳で空気をめいっぱい吸い込んだ。
ドクオが本当に伝えたいことを、取り逃がさないように。
それが僕の義務のようにも感じられた。
- 20 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:17:21 ID:1Z.naQPo0
教室の窓から忍び込んだ雲のぬけがらが、
僕たちの机を覆い隠す。夕方のゴルフを砕いた残骸を、
ぽろぽろと降らす。
サンバイザーのすすり泣きが、左耳をこじあけようとする。
僕は唇を思い切りかみしめて、ドクオを試みる。
('A`)「日本の女の子は、粉みたいな魅力がいっぱい体の回りについているんだ。
ミスドに昔、ゴールデンチョコレートってドーナツがあっただろ?
あんな感じだよ。ドーナツ本体が女の子なら、黄色いクランチは魅力だ」
('A`)「だから、魅力がすぐに剥がれて、俺たちをくすぐる。そんで惚れちゃう。
日本の女の子の魅力はもろいから、すぐ惚れちゃうんだ、ずるいよな」
ドクオはひたすらにうまい例えを探しつつ、その両目の焦点は、
確実に僕の皮下脂肪の裏を一心に示そうとしているのがここから分かる。
- 21 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:18:02 ID:1Z.naQPo0
なんだ。なんだ。なんなんだ。
僕は脳をフル回転させて考える。
このままじゃドクオがかわいそうで見てられないのだ。
女の子の魅力はもろいなんていってるが、ドクオはそれよりもろく見える。
もろい自身をつなぎ止めるためにこの会話を必死で広げているのだとしたら、
僕はそれを金槌で怖そうとする大罪人じゃないか。
罪の意識で液状化ししようとする唇が、僕に危機を伝えている。
一旦落ち着こうと体を動かそうとしたとき、僕の足裏になにかを感じた。
白くて、ところどころ薄汚れたそれは……消しゴムだ。
そのとき、僕が合点がいった。そうか、そういうことだったのか。
- 22 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:19:26 ID:1Z.naQPo0
('A`)「日本の女の子だけなんだろうな、外国の……つってもアメリカぐらいしか
浮かばないけどよ。アメリカの女の子は、魅力を塊で持ってる感じするじゃん?
コストコみたいな業務用スーパーにおいてそうなキロ単位の魅力を、
ガーッとカートで持ち運んで、ポイってターゲットに投げつけてるようなイメージがよ」
いよいよ白熱するドクオの語りをおさえて、僕は右手に持った消しゴムを、
そっとドクオの机に置き、とんとんと叩いた。やさしく、ドクオを壊さないように。
('A`)「あ……ありがと」
それに気づいたドクオは消しゴムをひっつかむと軽く礼をして
前に直り、それきり話しかけてはこなかった。
難儀な性格だな、と僕は悲しみを覚えた。
【おわり】
- 23 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:20:13 ID:1Z.naQPo0
- 【あの家の坊やが飼ってる水牛を運ぶトラック選ばれた道】
ξ゚⊿゚)ξ
ツンが自分のことをツンだって呼ぶのは、
誰もツンのことをツンって呼んでくれないからです。
あんたとか、惜しいとか、靴箱で待ってますだとか、
国語の授業の例文みたいな呼び方しかしないから、このままじゃツンは
やがて谷川俊太郎の横に並んでピースして立つことになりかねないと思った、だから決心したの。
ツンの一人称は、ツンであるべきだって。
たとえばネットゲームでは、自分のハンドルネームが常に自分のアバターの下に
表記されてるじゃない?だから、キャラの判別が簡単でしょ。
それと同じように、ツンもツンって自分を呼べば、みんなにツンって名が定着するはずよ。
- 24 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:20:59 ID:1Z.naQPo0
J( 'ー`)し「ねぇ、ご飯よ」
ξ゚⊿゚)ξ「はぁい、今いくわ」
ほら。ツンのお母さんでさえ、ツンのことをツンだって呼んでくれない。
おかしいよね、ツンにツンって名前をくれたのは他でもないお母さんなのに。
でも、こういうことってよくあることらしい。
自分のペットの名前でさえ、省略して呼ぶ飼い主が多いらしいわ。
なら初めから呼びやすい名前を付ければいい話じゃない。
ξ゚⊿゚)ξ「いただきます」
J( 'ー`)し「はい、いただきます」
今日のご飯は、白米(白いご飯のこと)と、野菜炒めとお味噌汁。
野菜炒めが食卓に並ぶときは、たいていお母さんが、クロスワードの回答に
詰まっているときだって、こっそりお兄ちゃんが教えてくれたことがある。
- 25 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:21:41 ID:1Z.naQPo0
ξ゚⊿゚)ξ「ふうふ」
ツンももう高校生なんだから、味噌汁を冷ますのだって、一人で出来るのだけれども、
いまだにそれをする瞬間は緊張する。ツンは本当に味噌汁を冷ませているのかって。
もしかしたら、味噌汁の方が遠慮して冷えてくれてるかもしれない。
そうしたらツンは味噌汁にさえ気を遣わせる子供ってことね。
J( 'ー`)し「Bで始まる言葉にはいやな言葉が多いって、あの人がいってたのよ。
ばばあでしょ、ばかでしょ、ぶすでしょ」
ξ゚⊿゚)ξ「ベーコンは?」
J( 'ー`)し「うーん、太ってる人にとってはそれも耳にいたい言葉かもね」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅん」
- 26 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:22:22 ID:1Z.naQPo0
お母さんの言葉に感心しつつ味噌汁に唇を寄せたら、
まるで反抗期のように熱くて、思わずお椀をひっくり返してしまった。
ξ゚⊿゚)ξ「ご、ごめん」
J( 'ー`)し「大丈夫、やけどしてない?」
味噌汁をおもいきり被ってしまった太股が、太鼓の音のようにじんじんと
一定のリズムで痛んでいるのだけれども、それを言ってしまったら
お母さんの優しさを崩してしまいそうで、ツンは我慢してぞうきんを用意し、床を拭いた。
J( 'ー`)し「あたしがやっとくから、あんたはご飯を食べてなさい」
お母さんはツンからぞうきんをもぎ取ると、床の雑巾を拭き取り始めた。
ぞうきんは味噌汁を迎え入れて、ゆっくりと茶色に染まる。
- 27 名も無きAAのようです[sage] 2013/01/03(木) 20:23:13 ID:1Z.naQPo0
J( 'ー`)し「よいしょよしっと」
せっせと床を拭くお母さんと、ご飯に口に運ぶツンを同時に見ていたら、
なんだか別の一家族を覗いてるような、不思議な気分が湧いてきた。
ツンはここにいて、ツンのお母さんもそこにいる。
じゃあこのツンは一体誰なんだろう?
ツンが二人いるの?
ξ゚⊿゚)ξ「ツンは……ツンだしなぁ」
次第に混乱する頭をゆっくり振ると、ツンとツンも放置したマヨネーズのように分離し始め、
ツンとツンが完全に別のものになった時、ツンに別れを告げて、ツンは箸をおいた。
【おわり】
- 28 名も無きAAのようです[sage] 2013/02/01(金) 00:41:22 ID:U.N/SNCU0
- この奇妙な感じ、おもしろかった!
- 29 名も無きAAのようです 2013/03/14(木) 02:38:15 ID:lAn1aOPA0
- 【農園は僕から見たら農園で君から見れば声のあしあと】
枝豆は空をとぶことが出来るのに、エンドウ豆にはそれが出来ないのは、
エンドウ豆に勇気がないからと人は言うけれど、
どちらの豆も結局は地面に落ちて足を掬うだけだし、それは関係ないと思う。
なぜ僕が突然こんな話をするかというと、皆様を前にして緊張を
しているからです。手汗を皆様に観てもらうことはできませんが、
手汗の気配だけでも持って帰って欲しい。わずかなら……。
川 ゚ -゚)
('A`)「素直クールさん……」
素直クールさん、僕の愛しい人。
ボートの先端に載せたい人、カステラの紙を食べちゃっても許す人……・
彼女のおまんこに僕のおちんちんを突っ込みたいなんて願望は
まったくないし、それを人生の目標にしている人はおそらくコーヒーと感動を
分かち合うことの出来ない悲しい人間だろう。
僕は、クールさんとただ、警察のお世話になること以外の全てをやりたいだけなのだ。
平たくない石を向こう岸まで投げてみたいし、
その後に半額シールをお互いの両親に貼ったっていいかもしれない。
- 30 名も無きAAのようです 2013/03/14(木) 02:39:14 ID:lAn1aOPA0
('A`)「僕にはそれは出来ない。だってクールさんは皆の高嶺の花で……
そして僕はおそらく何ひとつ約束を守ったことがないダメな人だから」
約束は守ってもそれを証明してもらえることは殆ど無い。
にもかかわらず破ったらこれみよがしに非難されるのだから、
割にあわないじゃないか。
でもクールさんは約束を守っている。
みんなクールさんの守った約束の数およびその素晴らしさを知りはしないが、
僕は知っているし覚えているし反芻してるし噛み締めている。
川 ゚ -゚)
クールさんは牛乳瓶に指を突っ込んでいる。ぐりぐりと人差し指だけを動かしている。
悩ましげな表情だ、何を考えている?
素手で割り勘をする方法?移動中のかたつむりのエクボの位置?
- 31 名も無きAAのようです 2013/03/14(木) 02:41:49 ID:lAn1aOPA0
('A`)(どうしたら彼女と向かいあわせになることが出来るんだろう)
彼女の後を追うことは出来る。
彼女と肩を並べることは出来る。
彼女の先に行くことは……頑張れば出来る。
でも彼女と向かいあわせになることだけは難しい、
考えても考えても最適解が浮かばず、エビの尻尾だけが
小皿にうずたかくつもり続ける。やがては僕の元を去るだろう、親不孝なもの。
彼女をグーで引っ叩けばおそらく彼女を従わせることは出来るだろうけど、
もしも暴力のない世界であったならば、男は女に勝てるだろうか?
地球最期の日にも日記を書くことが出来るのは女だけだろう。
クーさんはおそらく、その日記にしおりを挟むことだって出来るだろう、
本屋でもらうハンプティダンプティの細長いしおりを。
というかそうであって欲しい。
- 32 名も無きAAのようです 2013/03/14(木) 02:44:28 ID:lAn1aOPA0
川 ゚ -゚)「あ、ドクオくんだっけ?」
くるりと黒髪を翻して彼女は僕の方を見た。
なのに僕は彼女を見ることは出来ず、学生食堂に
無数に散らばっている四角形の一つ一つを並べるしかなかった。
('A`)「あ、あひぃ」
出た声は鶏よりちょっと跳ねた風の声だったが、上出来ではある。
川 ゚ -゚)「これ?牛乳なんだけど、なんか抜けないんだ」
指を見れないのでそう言われても困るんだけども、状況は大体わかった。
後は対策と方法だ。
('A`)「さ、さりを……」
川 ゚ -゚)「さり?」
僕は食堂中を駆けまわって、おそらく彼女を助けてくれるであろうアレを探した。
そして自販機の出っ張りに括りつけられたアレを見つけた瞬間、もぎとって
彼女に渡す。僕より役立つすごいやつ。
川 ゚ -゚)「これがさり?」
- 33 名も無きAAのようです 2013/03/14(木) 02:47:27 ID:lAn1aOPA0
('A`)「さ、刺して、抜く……」
川 ゚ -゚)「針を?……すごいなこれは」
牛乳瓶からすっぽりと抜けた指をしげしげと眺めて、
彼女は深くため息を付いた。
その溜息が何を意味しているのか。
ここで事態は急速に前を振り返る。あ、そうだ。
僕はとんでもないことをしでかしてしまったのではないか。
川 ゚ -゚)「はい、さりを返す、ありがとう」
これは"さり"では断じて無い。彼には正式な名称があるはずなのだけど、
僕も知らなければ彼女は当然知らない。そしてさりであることを受け入れているようなので、
さりでも問題はないということだろう。
('A`)「ど、いたしま、して」
これで終わりではない。
まだまだやらなければいけないことはあるのに、
倦怠感が氷を飲み込んだように通り過ぎていった。
【おわり】
- 34 名も無きAAのようです 2013/05/15(水) 22:16:31 ID:EFf2vyD20
- 【腕時計、腕時計だと唱えれば意志の強さも音楽になる】
昔話は若者を笑顔で見送ってやるのが理想だと思うのに、
いがみ合ったりゆずり合ったりしてなかなか理想通りにいかないのは、
寂しいけれど仕方のない事なのかもしれない。
けれどなんでも仕方ない仕方ないとひと撫でするだけで
見送ってしまっては、すべての事柄は急須に踊る茶葉のイメージに
もろく溶けてしまわないだろうか?
ξ゚⊿゚)ξ「はい、はい、はい、はい、ええ、はい、はい」
誰かからの電話に何かしらの相槌を打ちながら、私はぼんやりと考えていた。
駅舎からはみ出したすねどもを熊手で焦がしながら、
青服の行列が私を盗み見ているのがここから分かる。
ξ゚⊿゚)ξ「では、では、では、また、では」
肌色のハンカチをあらぬ方向に折り曲げて、私は53連発の溜め息を転がした。
- 35 名も無きAAのようです 2013/05/15(水) 22:18:26 ID:EFf2vyD20
(´・ω・`)「……」
相変わらず青服は、私を見ている、
私のことを観察している、私をみくびっている。
彼らが一体何を考えているのか、とんと見当はつかない。
私の関節がもしも、今はもはや逆の方向に曲がっているのだとカムアウトしたところで、
彼らの意識が午後5時半ごろのカタカナ帳に散らばっていれば、
それは意味を成さないことになる。虚しい。
( ・∀・)「おはようございます。今朝は早いですね。
たった今、シナモンの工場が潰れました、今年で5回目です」
すき焼きとかへの憧れがベンチ横を通り過ぎていくのを確認して、
私は立ち上がった。
- 36 名も無きAAのようです 2013/05/15(水) 22:19:50 ID:EFf2vyD20
ξ゚⊿゚)ξ「あはぁ、すみません」
笑顔を作ろうとするたびに、私は「じゃあね」から遠ざかり、
「よろしく」に近づいている気がしてならない。だから笑顔は作りたくない。
でも私が少しでも私に近付くヒントを与えないことには、
青服の観察が終わりそうもないのも確かだ。
(´・ω・`)「いえいえ、どうぞ、お気をつけて」
ξ゚⊿゚)ξ「はい」
「お気を」まで言った段階で、私は青服の興味が既に喉ポリープの
違和感に移っていることに気づき、胸をなでおろした。
私には特技なんてものはないが、1つだけ他人と違う部分がある。
私から見れば、要するに人やら物はすべて穴がポコポコ開いており、
その穴の間を売れない桃とか足りない窓口がすり抜けていくのが、
磨りガラス越しに映るのだ。
- 37 名も無きAAのようです 2013/05/15(水) 22:20:39 ID:EFf2vyD20
ξ゚⊿゚)ξ「っていうことが遭ったんだけど」
('A`)「まぁ……それは自意識過剰じゃないんか、知らんけどもよ」
私には兄が一人だけいる。
名前をドクオとか言ったけれど、兄はその名前をあまり好きではない様子で、
ドクオと呼ばれるたびに、いつも顎をゴールデンレトリバーに寄せながら、
不機嫌な面持ちで封筒を折っていたのを思い出す。
('A`)「みんな良い人だと思おうとするからそんなに参るんじゃないか?」
兄は封筒を折ることだけが唯一の趣味であり、
封筒を折っていない時はどこを見ていいのかすら分からないようで、
伸びきった下唇をさらに伸ばして光を遮るぐらいであった。
もはやそれはバジルの生き方そのものだ。
- 38 名も無きAAのようです 2013/05/15(水) 22:21:41 ID:EFf2vyD20
兄は昔言っていた、こう言っていた。
いわく俺には土地がある、と。
('A`)「何の変哲も無いすぎ山なんだけどさ、それでも土地があるんだよ。
そこに住めば日本中から心配されるだろうから、手紙もいっぱい必要になるだろう
だから、無くても困らないように、封筒を折るんだ」
信じきった顔でそうのたまう兄を間近に育ってきた私だから、
いつまでたっても何を信じることも出来なかった。
ブックマーク癖が抜けない私に、勇気という言葉は既に見当たらない。
犬を飼う、紙を拾う、油を嗅ぐ。それだけのことが出来ずに冷たいパイプ椅子の
触感だけが離島越しに染み出している。
ξ゚⊿゚)ξ「あはは、バジルだバジルだ」
('A`)「笑い事じゃねえよ」
そう言いつつも先に笑ったのは兄のほうだった。
指をさしたのも兄が最初だった。
【おわり】
- 39 名も無きAAのようです[sage] 2013/05/16(木) 08:52:05 ID:fmhTdr5Q0
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