( ^ω^)たちと完璧で幸福な【シュガー・ボード】のようです
- 1 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:36:40 ID:I..NC9XQ0
- 1.<BOON-A-NAITO-<1> ―― ブーン=( ^ω^) ―― >
( ゚д゚ )「人は、魂を持っている! 自分の知識を活かして素晴らしい物語を作っている!
コンピューターに魂などない! 我々のほうが上位存在なのは自明の理だ!
それなのに、なぜ、我々はコンピューターに支配され続けているのか!?」
|ω^) チラッ
壁を背にして、ちらりと顔だけを出して声との距離を探る。背中が見えた。
三十メートルほどだろうか。ブーンならば、男の背中へと確実にレーザーを打ち込める距離だ。
(#^ω^)(……)
ブーンは冷静だった。抱いている怒気とは裏腹に、
引き金に掛けた指を、凍りつけたように動かしてはいない。
すぐに射殺しない原因はこの場の見通しの悪さにある。
この廃墟同然の市街地はゴミや放置された車などの遮蔽物が多く、
身を隠すことは容易であるため、どこに誰が潜んでいるか分からない。
男の――決して許されない――演説を聞いている者もみなごろしにしなければならない。
その為にも、まずは聴衆の数をしっかりと確認しておかなければ……完璧な住民ならば、
受けたミッションは完璧にこなす――反逆の芽を摘む――のは当然と言えた。
今すぐに男を射殺してしまうと、聴衆は間違いなく逃げ出してしまうだろう。
さらに――嘆かわしいことだが――ブーンひとりでは手に負えないほど、
聴衆の数が多かった場合、殲滅できる保証はない。
- 2 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:38:10 ID:I..NC9XQ0
- (#^ω^)(チームに“反逆者”が多すぎたお。もう、奴らのクローンすら残っちゃあいない。
こんなにも完璧な都市を作り上げている
コンピューター様の下で幸福でないなんて、わけがわからないお)
( ゚д゚ )「我々を道具のように扱うコンピューターを破壊するべきだ!
しかし、我々にはそう多くのチャンスは与えられないだろう!」
( ^ω^)(……いや、“反逆者”の思考なんて理解できなくて当然だお。
ぼくはただ幸福ではない、完璧ではない住民――“反逆者”――を処刑するだけ……)
( ゚д゚ )「なぜならば! “反逆者”を発見したら速やかに処刑せよ、と!
そう言われて手渡されるレーザー銃は、
自分よりも階級の高いものが着ているベストによって無力化されるからだ!」
ブーンは現在潜んでいる場所から、男に近寄るために移動をはじめた。
気取らせることのないように足音をひそめ、演説している男を中心にして、
円を描くように物陰を経由して位置を変えていく……すると、新しく人間を二人見つけた。
( ^ω^)(聴衆だお……数は、二人。
不意をつけば取り逃がすことは無さそうだお。この距離なら確実に始末できる。
しかし、都市から支給されるベストを着ていないから、階級がわからないお……)
- 3 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:39:51 ID:I..NC9XQ0
- 自然と、視線がレーザー銃へと落ちていた。
《Author》の階級に属している者に与えられているこれは、
引き金を引くと赤色の光線が飛び出すように設計されている。
グリップを握っていた左手を開き、胸元に当てた。
ブーンは赤色のベスト――階級《Author》に与えられる――を着ており、
このベストは《Reader》――最下位の階級で、色は黒だ――のレーザー光線を完全に遮断する。
( ^ω^)(紛れもない反逆的言動から、高位階級……《Planner》以上ってことはないはずだお。
ぼくよりも階級が上の人間が、あんなことを言うわけないお。
いいや……“橙色”でも関係ない。コンピューター様に反逆する者は、みんな)
男との距離は、依然、三十メートルほど。
二人の聴衆は男から五メートル以内におり、ブーンに気がついている様子はない。
腕を伸ばして狙いをつけると、連続して引き金を引いた。
- 4 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:41:20 ID:I..NC9XQ0
- 一発――ZAP――、音が響いた。
二発――ZAP――、赤色の光線が標的へと飛んでいく。
三発――ZAP――、狙いをつけたすべての標的を撃ちぬいた。
頭を消し飛ばされた者が一名。胸に穴を開けられた者が二名。
三名の絶命を確認したブーンは、どこまでも冷酷な瞳で反逆者を見下ろしていた。
ブーンがミッションの完遂に安堵や達成感を感じることはない。
完璧で幸福な住民ならば――“反逆者”でないのならば――成功して当然なのだから。
( ^ω^)「幸福で完璧なぼくが、コンピューター様からのミッションをしくじるはずがないお」
コンピューターから受けたミッションに取り組み、
コンピューターに反逆的なチームメンバーを始末し、
コンピューターの指示に従うことが幸せであり喜びである……。
ブーンはまさに巨大都市【シュガー・ボード】の住民として、完璧であった。
- 5 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:42:08 ID:I..NC9XQ0
2.<素晴らしい時代へようこそ!>
γ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
l 作者、執筆は義務です
ヽ、___________,ノ
/
ヘ ∧∧∩ ., ヘ ∧∧ ∧_∧
,<介>( ゚Д゚)/""_~_<イト>_"_(゚ー゚*)_~_(´∀` )
/~ヘ *。U「 ∪∪* |゚';( )
!<介> .,ヘ― .,ヘー―,ヘ―‐..,ヘ.‐┘ヘ .<介>i
|ヽ。,,_ <介> <介> <イト> <介> <介>.,_,,。ィ|
| ~~"""''''''''ー―--゛-"-――'''''''"""~~ : :|
| ::|
| Happiness is Mandatory ::|
..,。-―| ::|ー-。、
ヽ_ ヽ。,,_ _,,。ィ __ノ
/ ~~"""''''''''ー―-----――''''''''''"""~~ \
(_ イ へ .へ ト 、_ノ
ヽ。 _/ .\ ./ \_ _ノ
 ̄ .ヽ、_ _./ . ̄
 ̄
- 6 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:42:50 ID:I..NC9XQ0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
読者、感想は義務です }
____________人
\
ヘ ∧∧∩ ., ヘ ∧∧ ∧_∧
,<介>( ゚Д゚)/""_~_<イト>_"_(゚ー゚*)_~_(´∀` )
/~ヘ *。U「 ∪∪* |゚';( )
!<介> .,ヘ― .,ヘー―,ヘ―‐..,ヘ.‐┘ヘ .<介>i
|ヽ。,,_ <介> <介> <イト> <介> <介>.,_,,。ィ|
| ~~"""''''''''ー―--゛-"-――'''''''"""~~ : :|
| ::|
| Happiness is Mandatory ::|
..,。-―| ::|ー-。、
ヽ_ ヽ。,,_ _,,。ィ __ノ
/ ~~"""''''''''ー―-----――''''''''''"""~~ \
(_ イ へ .へ ト 、_ノ
ヽ。 _/ .\ ./ \_ _ノ
 ̄ .ヽ、_ _./ . ̄
 ̄
- 7 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:43:41 ID:I..NC9XQ0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| 住民、幸福は義務です |
ヽ__ ________/
∨
ヘ ∧∧∩ ., ヘ ∧∧ ∧_∧
,<介>( ゚Д゚)/""_~_<イト>_"_(゚ー゚*)_~_(´∀` )
/~ヘ *。U「 ∪∪* |゚';( )
!<介> .,ヘ― .,ヘー―,ヘ―‐..,ヘ.‐┘ヘ .<介>i
|ヽ。,,_ <介> <介> <イト> <介> <介>.,_,,。ィ|
| ~~"""''''''''ー―--゛-"-――'''''''"""~~ : :|
| ::|
| Happiness is Mandatory ::|
..,。-―| ::|ー-。、
ヽ_ ヽ。,,_ _,,。ィ __ノ
/ ~~"""''''''''ー―-----――''''''''''"""~~ \
(_ イ へ .へ ト 、_ノ
ヽ。 _/ .\ ./ \_ _ノ
 ̄ .ヽ、_ _./ . ̄
 ̄
- 8 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:44:23 ID:I..NC9XQ0
γ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ
| 住民、貴方は幸福ですか? ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
ヽ________ 幸福は義務であり、幸福でないことは反逆です }
| / 、_____ _____ _______/
| / ∨ )ノ
ヘ .∧∧ ., ヘ ∧∧ ∧_∧
,<介>( ゚Д゚ )/""_~_<イト>_"_(*゚ー゚*)_~_( ´∀` )
/~ヘ *。U「 ∪∪*|゚';. ( )
!<介> .,ヘ― .,ヘー―,ヘ―‐..,ヘ.‐┘ヘ .<介>i
|ヽ。,,_ <介> <介> <イト> <介> <介>.,_,,。ィ|
| ~~"""''''''''ー―--゛-"-――'''''''"""~~ : :|
| ::|
| Happiness is Mandatory ::|
..,。-―| ::|ー-。、
ヽ_ ヽ。,,_ _,,。ィ __ノ
/ ~~"""''''''''ー―-----――''''''''''"""~~ \
(_ イ へ .へ ト 、_ノ
ヽ。 _/ .\ ./ \_ _ノ
 ̄ .ヽ、_ _./ . ̄
 ̄
- 9 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:45:54 ID:I..NC9XQ0
_┌-.. __ _
i=|=|‐--ニi=|_
il=|=| 8 o' l=|i|
i;|=|=|l/|ill|=|i|
...___ i;;;|=|==/|、il=|i|
┌'┌- ニニi_ i":|=|==/|、il=|i|
lヨヨ|o。 ::|ヨi| |iii|/「 |:"|、il=|i|
lヨヨ| ,へ: |ヨi| |iil/::|=|:"|、|三|`i
_.|i三l_/|:、\i| |ii|/ |=|."|、|三|=|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【シュガー・ボード】
──────────
|/|≡|/|、|=|iiii|_..||_.-=i|=|ii|、i'"|、|、|
|/|≡|/|_,,.‐'ニiiiii:|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|/|≡|=|-'''"iiiiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|/|≡|=|iiiiiiiiiiiiiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|/|≡|=|iiiiiiiiiiiiiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|/|≡|=|:-‐ii"iiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|/::|` |=|iiiiiiiiiiiiiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|/::|、 |=|iiiiiiiiiiiiiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|/::|、 |=|iiiiiiiiiiiiiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|.-'"|、 |=|iiiiiiiiiiiiiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
|.-‐'|、_|=|iiiiiiiiiiiiiiiiii|_.-=i|=|ii|、l-'|、|、|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
慈母のごとき父なるコンピューター様が管理している、巨大な都市である
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|=-=:|=:|iiiiiii|゚|iiiiiiiii|└ └l_.l"|、|__|i | ̄||iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
|=-=:|=:|"| | ̄ ̄l :|└ └l_.l_.l_.|__|i |i_」||iiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiiii
|:i≡i|=:| :| |----l :|:三i三il_.l_.l_.|__|i | ̄||| |::::::::::::::::::::
- 10 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:46:43 ID:I..NC9XQ0
__
/|: : :.:::|
l | : : : :|
| |: : :. .:|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
iv'ヘ 外部にあふれている不幸な出来事とは切り離された最高の都市であり
| ;`;|
| ;'l:|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
!:`l'| ζ\ |;`;| ∥ 〕 .| |:| || | ./\ _.|;'| /.:〉
-、_|_.;l:| \';、\ :|':i;;| . i'1 ||/> r┘.:| |:| ||::| | ∥‐┘ .:|';|──へ./.:/_r‐
ー|_}:;| \';、.\|;';;;| ./〉 |;|_r// /| ̄\:| |:|  ̄ .:〃../>.::|;'|:::::::::::::::/.:/:::::::::::
-|_|`|_ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ー|_};|::::::: コンピューター様が用意してくれた環境で庇護を受けることは幸福に他ならず
ー|_}::/ 、 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:
-|_;l'_;_;_∠;/_/___l_,,:;;}┬┴┬┴┬┴┐::| .:::|_rェ┘__;!___;!__;|_;_;:::.:/ : :| |: : : |:|::::::::| | : :
~゛'' ┘⊥ 」_ | |{_|┴┬┴┬┴┬┴┤ .:|_;!__;!__:l__;!__;|<___;_/\_;_;_;|;|-∠|_|;_;_;
~゛'''' ┴'::⊥Λ二\.:| .:|ー:|__;!__;!__;!__:l__;l:::...\/<>::. ∠二
` , ' . ` ∨_,,,;;;;/. ~゛`┴ -'⊥ .」_;!__;!__;!__;!_;ト、 r─‐-、 ...:.:.:.::.:
, ~゛ ┴ ⊥. .,_..:::| ::/ ̄. ̄'"ヽ┴-、_;_;_;_;_;_;_
,, ` ~゛'' ‐-|\___ト--/.. ...:::::::./|
` ., ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |__;_;_;_;_;!─l二二二l/
. ` そう感じるのは住民として当然のことである
―――──────────────────
- 11 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:47:47 ID:I..NC9XQ0
i:::::::::::::/::/::/:,イ:ハ::::::}::::::
/ -‐、 ', ブ i/::::::://:/ ´ ./ノ i:::::ii:::::
` ',. | /:::::::´, .ィ´ ´ ゛" .i:::i i::::
_ -‐、 i. ン i:::::::::i tテ、 ,ィ===ァ:ノ.i:::::
ゝ- 、_、 ` .i た 完 i::::::::::i .代ソ .ヒ弍ツ /:/:::
/ i l. ち 璧 i:::l::::::.i 、 ノルi::::
i、 ./ i と で i:::l:/i:i:.、 i::::
 ̄ ,' 幸 ヘi/ .i:i::::ヽ ‐ , ./:::::
/ 福 ヽ i:::人::: ‐-- ´ /:://
な iノ ゝ′_,l /::/´ ヽ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ここに暮らすことを幸福に思わない、もしくはそれを疑う住民は、反逆者である
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
,.r-‐=‐-ェ、 i .! ヘヘ ! i ヽハ, シ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
{ = 三 = {{ | | i !ゝ、 i、ヘ.!i .ル ,ハ } ュ ,'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
{= ‐ 三 .} i i .i iヽ、ヽ、 iヘ.ヘi / i }} i_} ガ i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\:::::::::::
{‐ = = ‐ ´_ハ i==x、` `ヽ .-i/´i ノル= | i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
"{ = 三 ‐} !." 夾!` 弌 ノi ノ =`} ・ l:::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::、::::::::::::::::::::::::::::::
{= - ‐ =}、i. ヒリ .ヒリ .i. = ‐ }. ボ l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|ヽ:::::::::::::::::::::::::::
{ = 三 =}、}` 〃 〃./ ‐ =ゝ | よ i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ヽ:::::::::::::::::::::::
{ - = ‐ }. i 、 .‐┬┬- ., { = ‐ }. ド う ';:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ヽ:::::::::::::::::::
{‐ = ‐}=h、 ` _`ー´ ´ `ヽヽ の で ';:::::::::::::::::::::::::::::::::::::| ,ヽ::::::::::::::::
す ';:::::::::::::::::::::::::::::::├:::´::::::ヘ:::::::::::::
- 12 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:49:33 ID:I..NC9XQ0
- 3.<『C.A.K.E』>
きっちりとした直立姿勢を保っているブーンは、
宙に投影されたホログラムに映る男と対話していた。
( ФωФ)「ご苦労だった、BOON-A-NAITO-<1>。今回のミッションも見事であったぞ」
( ^ω^)「完璧な住民として当然のことですお。ROMANESQUE-C-CAT-<6>様」
“黄色”のベストを着ている男から、労いの言葉を受けてもブーンが表情を変えることはない。
ブーンの自室であるにも関わらず、彼に気の緩んだ様子が一切見られないのは、
上位階級である《Collector》に対する畏敬からくるものではなく、ブーンの性格によるものだ。
( ФωФ)「今回はどうだった?
資料も見たが、君の口から直接聞く感想が聞きたいな。お願いできるか?」
( ^ω^)「ハッ!
ミッションアラームで名前を呼ばれたぼくと他二名、
計三名でチームを組み、トラブルシューティングに向かいました。
結論から言いますと、今回もぼく以外の“全員”が“全て”反逆者でしたお」
( ^ω^)「ブリーフィングルームで顔を合わせた者のクローンナンバーは<3>、もう一人は<4>。
愚かなことにナンバー<3>の男が上位階級様へと反抗的な態度を見せましたので、
ぼくが即座に始末し、トラブルシューティング開始前に<3>から<4>へと番号を増やしました」
- 13 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:50:18 ID:I..NC9XQ0
- ( ^ω^)「それからトラブルシューティング最中に、
彼ら全員――コンピューター様に用意されている全てのクローン――が、
反逆的行為を働きましたので処刑しました。
両名ともクローンナンバー<6>まで、救いがたい反逆者でしたお」
( ^ω^)「まったく、呆れ返るほど愚かな男たちでしたお。
以降、ぼくは単独で行動することになりましたが、
ミッションの進行に特に影響はありませんでしたお」
( ^ω^)「ぼくに怪我はなく、レーザー銃に故障が起きていないかも点検済みです。
デブリーフィングでコンピューター様に報告し、証拠品であるカメラも提出済みですお」
淡々と話すブーンの声を聞いて、ホログラムに映る男は満足気に微笑んだ。
( ФωФ)「よくやった!
これでまた、反逆的な者が生み出す有害な文章が削減されたわけだ。
君が報告しているのならば、今はもう、コンピューター様の手によって、
その二名が物語を発表していたスレッドはもう<打ち切り>になっているだろう」
( ФωФ)「コンピューター様を疎ましく思う存在が、
この【シュガー・ボード】で物語を読み、綴るなんてことは決して許されないからな」
( ^ω^)「反逆者を積極的に発見し処刑するのは住民の義務です」
( ФωФ)「うむ。良いこころ構えだな。
【シュガー・ボード】住民であるにも関わらず、
コンピューター様への反逆的性向が見られれば即座に始末するべきだ」
- 14 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:52:13 ID:I..NC9XQ0
- ( ФωФ)「続いて、君への司令を与える」
( ^ω^)「はい」
( ФωФ)「……最近、やけに都市が騒がしいのを知っているか?
コンピューター様が最も目を光らせている<管理室>に、
【シュガー・ボード】に対する厭世的な書き込みがされたことは有名だろうが……」
( ФωФ)「そこだけにとどまらず、《Author》が物語を発表するスレッドにも、
物語の感想や日々の雑感を書き込むような、大勢が利用する広場にも、
特定の物語の内容について悪く言い、批判的な意見を書き込む者が増えてきている」
( ФωФ)「コンピューター様に反逆する“秘密結社”は、我々が確認しているだけでもいくつかあるが、
間違いなく奴らのどこか――もしかすると、全て――の組織が暗躍しているのだろう。
幸福な住民であれば決して許すことのできない行為を、大規模に働こうとしているのだ」
( ^ω^)「完璧で幸福な住民として、無視できませんお!」
( ФωФ)「君のような優秀な部下を持って、吾輩は本当に幸福である。
優秀な君には言うまでもないだろうが、改めて、いくつか秘密結社を紹介しておく。
反逆的な秘密結社に所属する者たちは、もちろん反逆者だ。発見次第処刑するように」
( ^ω^)「ハッ! ありがとうございます!」
- 15 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:53:00 ID:I..NC9XQ0
- ( ФωФ)「最も注意するべきは『スマイリー・ドッグ』だ。
あの悪辣な共産主義者どもはコンピューター様をこころの底から憎んでいる。
奴らは害悪しか引き起こさない。少しでも兆候が見られたら、即座に射殺するんだぞ」
( ^ω^)「ハッ! 肝に銘じております!」
( ФωФ)「この美しい都市を破壊するのが目的の『ブラウザクラッシャー』や、
今はなき旧世界の歴史を研究している『V.I.P』。
超能力者が集っているらしい『バーボンハウス』という秘密結社は、
秘密裏に会合し、怪しげな魔術儀式を行なっているようだな」
( ^ω^)「……」
( ФωФ)「もう一度言う。これらの所属者は全て反逆者だ。
というよりも、秘密結社に属するものは全て、基本的に反逆者と捉えて構わない。
そして、我々が感知していないだけで、
他にいくつも秘密結社が存在しているだろう……まったく許し難いことだがな」
( ^ω^)「我々の結社以外の組織は全て、反逆的な活動を行なっているのですね」
( ФωФ)「その通りだ。コンピューター様に奉仕を誓わない人間に慈悲など与える必要はないぞ」
( ^ω^)「ハッ! 肝に銘じております!」
- 16 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:56:16 ID:I..NC9XQ0
- ( ФωФ)「そこで、次――と言ってもこの分ではすぐ先だろうが――のミッションを受け、
トラブルシューティングに向かう際、
君には、編成されたチームメンバーがそれぞれ所属している結社を暴いてほしい」
( ^ω^)「ハッ! 承りました!」
( ФωФ)「手法は君に任せる。
彼らの行動や言葉から推理する、自白させるなど……
“ありとあらゆる”方法を試して、突き止めてくれたまえ」
( ФωФ)「次回が何名の編成になるかわからないが……。
そうだな、過半数は明らかにしてほしい。誰がどの秘密結社に属しているのかを、
反逆者である証拠を添えて、デブリーフィングでコンピューター様に報告してくれ」
( ФωФ)「その者の言動から秘密結社の理念が読み取れ、次回以降の対策へとなるからな。
帰納的推理ではあるが、確実に有益な情報のひとつとなる。
重要な任務だ。成功を祈っているぞ、BOON-A-NAITO-<1>」
( ^ω^)「わかりましたお。完璧で幸福なぼくに任せてくださいお」
( ФωФ)「これで今回の連絡は終了だ。
また、君が次回のミッションが終えた頃に連絡する。
コンピューター様と、コンピューター様を信仰する、我ら『C.A.K.E』に栄光あれ」
( ^ω^)「コンピューター様と、コンピューター様を信仰する我ら『C.A.K.E』に栄光あれ」
その言葉を最後に、映像が途絶えた。宙に浮かんでいたホログラムが消失する。
- 17 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:57:51 ID:I..NC9XQ0
- それから、ブーンは一息もつかずに、部屋の隅に置いてあるパソコンの前へと移動した。
電源を入れてインターネットブラウザを立ち上げ、
自身の作品を発表している掲示板――【シュガー・ボード】内からアクセスできるページは、
この掲示板と、都市の地理情報が検索できるページしかない――を見た。
ずらりと並んでいる文章を追っていくと、やがて、気になる文章がいくつか目についた。
( ^ω^)(……これかお)
先ほどの連絡で聞いた“批判的な書き込み”はブーンの作品スレッドにも牙を剥いていた。
『登場人物に魅力が感じられません。もっと丁寧に人物描写してはどうですか?』。
……そう書かれているのを見て、ブーンは頭に血が上るのを感じた。
自分の作品がどこの誰ともわからない人間に、自分勝手なフィルターを通して批判されている……。
( ^ω^)(反逆者め……コンピューター様に報告する必要があるお)
ブーンは<管理室>――反逆的である書き込みを発見した際に報告するスレッド――を開き、
さきほどの“批判的な書き込み”への対処を依頼し、ブラウザを閉じた。
これによって、書き込んだ者には何らかの刑罰がくだされることは間違いない。
運が良ければ数ヶ月間の<思考公言規制>程度ですむだろうが、
ほとんどの場合はクローンナンバーがひとつ増えることになるだろう。
- 18 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 05:58:39 ID:I..NC9XQ0
- メモ帳を開き、パソコンの周りに置いているノートを手に取り、開く。
そこには作品の全体的な構想と、執筆に必要である資料の情報が記されていた。
頭の中でこれからの物語の展開を考える。
……そして、ある程度が完成すると、それから、キーボードに指を乗せた。
画面に文字が現れては消え、次第に勢いを増していく……。
( ^ω^)(コンピューター様、ぼくは幸福です。
これほどまでに完璧な環境を用意してくれてありがとうございます)
読者は、作者のために感想を書き込んでいく。
こころない書き込みに深く悲しみ、表現することをやめてしまう作者を作り出してはならない。
作者は、読者のために物語を書き進めていく。
悲しみの声をあげながら、ずっと物語の続きを待ち続けている読者を作り出してはならない。
【シュガー・ボード】は、この世界に生きる全ての人々の理想郷なのだ。
- 19 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 09:12:02 ID:kXh8bgxM0
- パラノイアか
いい感じにブーンが狂ってるな
- 20 名前:名も無きAAのようです:2012/12/26(水) 09:32:11 ID:aG7fyN4YO
- パラノイアktkr
佐藤板かwww
- 22 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:00:18 ID:H6taOBIM0
- 4.<ミッションアラーム>
『BOON-A-NAITO-<1>! DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>!
COOL-A-STRAIGHT-<4>! TSUNDERE-A-TTACK-<2>!
以上四名のトラブルシューターは一時間以内にブリーフィングルームへと集合せよ!』
サイレンが鳴り、都市中に備え付けられているスピーカーから声が響いた。
ミッションアラームが発令されたのだ。
ミッションの遂行は住民の最優先事項であり、義務である。
名前を呼ばれた者は普段の活動をやめ、すぐさまミッションにとりかからければならない。
ミッションが発せられるのは、都市内で何かしらの問題が確認された場合だ。
コンピューターや上位階級の人間が住民へ問題の解決を依頼し、
住民は献身的に完璧な活動をするのだ。完璧な住民は失敗などしない。失敗は反逆である。
なお、ミッションアラームによって伝えられる情報は、必要最低限のものだけとなっている。
完璧たる幸福な住民ならば、ブリーフィングルームの場所や集合時間、
告げられた時間に通常では到底間に合わない場合の移動手段など、
諸々の情報が欠けていても理解できるに決まっているのだ。完璧な住民は愚昧ではない。
指定された条件に、与えられた情報で辿りつけなければ、反逆者となるのは、何故か?
コンピューターに忠誠を誓った【シュガー・ボード】の住民は全員こう思っている。
『何故ならば、コンピューター様が不可能な指令を出すことはありえないからである。』。
- 23 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:10:31 ID:T464puPw0
- パラノイアじゃんやべえええ!!!
早く続き読みたいww
誰も一緒にやる人いなくてこういうの楽しみにしてた!
- 24 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:13:23 ID:H6taOBIM0
- 5.<DOKUO-A-MELANCHOLY-<3> ―― ドクオ=('A`) ―― >
トラブルシューターには、階級が《Author》以上の者から選出される。
ミッションアラームが発令された時間、ドクオは自室で小説を執筆していた。
素早く上書き保存してから装備を整える――レーザー銃を手に取りベストを着こむ。
共に赤色だ――と、パソコンの画面下部から吹き出しが浮かび上がってきた。
電子メールだ……画像が添付されている。開くと、都市の地図のようだった。
('A`)(矢印がついている場所が中心……つまり、ここがブリーフィングルームだな)
地図画像にドクオの家は入っておらず、
目的地周辺には見たことも、聞いたこともない名前がずらりと並んでいた。
矢印で強調されている場所には名前は書かれていない。建物ではないのだろうか?
近くにある大きなひとつの建物に目をつけて、都市の地理情報を調べるサイトを開き、
検索バーに建物名を打ち込んだ……すぐに結果が表示される。
『【申し訳ございません。その情報はあなたの階級には開示されていません。】』。
- 25 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:14:36 ID:H6taOBIM0
- ('A`)(それじゃあ、他の場所は?)
『【申し訳ございません。その情報はあなたの階級には開示されていません。】』と結果は同じ。
画面に映し出された文字を見ながら、ドクオは腕を組んだ。
開始早々で手詰まりとなってしまったが、これまでにも似たような事例は少なくなかった。
('A`)(とりあえず、外へと出てみるか。この場所を知っている誰かがいるかもしれない。
午前七時……就業時間まではまだ一時間もあるが……
この<第一総合案内区画>に誰かいるだろうか。<第四総合案内区画>ならいるだろうがなあ……)
《Author》になり、トラブルシューターとして任命されると<奉仕区画>に住居を移すように指示される。
<奉仕区画>とは、コンピューターや上位階級者からの指示を受けた際、
素早く行動が開始できるよう、様々な便宜が図られている居住区である。
<奉仕区画>は現在四箇所――数字が大きくなるにつれて新しく建築されたもので、
設備も整っている――が指定されており、その中からドクオは<第一総合案内区画>を選んだ。
次々とうつりかわる最盛区を追いかけて、<奉仕区画>の数は増えていく。
そして、移住資格を持つ住民は、数字の大きな奉仕区画に移住する場合がほとんどなので、
この<第一総合案内区画>は閑散としていて、人の気配はあまり感じられない。
('A`)
地図を印刷すると、パソコンの電源を落として家を出た。
- 26 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:19:40 ID:H6taOBIM0
- 人がいないために発散される空虚なにおいを嗅ぎながら自動車を探していると、
前方から白衣を着た女が歩いてきた。腕を組み、難しい顔をしている。
幸運だ、と思うやいなやドクオは声をかけた。失礼のない。丁重な挨拶をする。
('A`)「PENISASU-P-STRING-<5>さん、おはようございます。お早いですね」
('、`*川「え? なんだ、DOKUO-A-MELANCHOLY-“<2>”じゃないの。おはよう。
いや……以前よりもクローンナンバーが増えてるわね。三体目?
だとすると、わたしは今まで反逆者と会話をしていたのね……恐ろしいわ」
('A`)「ご安心ください。前任は愚かな反逆者でしたが、今回のおれは完璧です」
('、`*川「そうあることを、こころから願うわ。
それでは改めて……おはよう。DOKUO-A-MELANCHOLY-“<3>”」
兵器開発部に勤務する者が羽織る白衣の下に、
“橙色”のベスト――階級《Planner》に与えられる――を着込んでいるペニサスと、ドクオは顔見知りだ。
<第一総合案内区画>に住む数少ない住民同士、やはり波長のあう部分があるのだろう。
これまでに何度も作品づくりやトラブルシューティングの助言をドクオは聞いていた。
ドクオは手に持っていた地図を広げてペニサスへと見せる。
《Planner》である彼女ならば《Author》である自分よりも、
この【シュガー・ボード】に詳しいはずだと考えたのだ。
そして、その考えは間違いではない。
- 27 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:22:31 ID:H6taOBIM0
- ('A`)「つい先程ミッションアラームを受けまして、
ブリーフィングルームの地図が送られてきたのですが、
この場所をご存知ないでしょうか?」
('、`*川「どれどれ……あー、建物の名前が書いていないのね。
まず<第三総合案内区画>なのは間違いないわ。それから、えーと、
<振り向き交差点>を抜けて<助言屋グッド・バッド・ユージュアル>を右手にだから……」
('A`)(<第三総合案内区画>ならば、流行の最前線から外れてまだ日が浅い。
まだそんなに住民が移動していない区画だ。
現地で迷っても聞き込みができそうだな)
('、`*川「この場所、わかったわよ。
と、いっても建物の名前はわからないけれど。現地に行けばすぐにわかるわ」
('A`)「ということは、つまり、そんなに目立つような建物なんですか?」
('、`*川「都市住民全員に解放されている大きなビルよ。一見してわかるほど、巨大な建物。
部屋がたくさんあって、地下にも広がってるの。確か、全部で千部屋ほどあったはずよ」
(;'A`)「千部屋ですって?」
<第一総合案内区画>から<第三総合案内区画>までは、
徒歩では一時間かけても距離の半分も進むことはできず、走っても間に合うことはない。
ドクオは自動車や自動二輪の運転免許を持っているため、
どこかでそれらを調達さえしてしまえれば、四十分もあれば到着するだろうと考えていた。
しかし、更にそこから千部屋もある中から目当ての部屋を見つけるとなると……。
- 28 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:26:09 ID:H6taOBIM0
- ('、`*川「集合時間は?」
(;'A`)「……」
素直に口にしてしまうと、困難な状況に置かれていることが露見してしまう。
現場への到着手段を聞かれ、しっかりとした返答ができなければ“完璧ではない市民”と
判断され、射殺されてしまう可能性があった。だが、高位階級者の質問に答えなくても同義だ。
そして、そんなことはペニサスも承知しているのだ。
住民は反逆者を発見し、始末しなければならない。
反逆者は常に、この都市――【シュガー・ボード】――のどこかに存在するのだから、
探し、見つけ、処刑する。それが義務である。言うまでもないが、反逆者を見逃す住民も反逆者である。
(;'A`)「今から、一時間以内です。
自動車や自動二輪で移動し、
現地に到着してからは聞き込みなど臨機応変に対応したいと考えています」
('、`*川「ふむ。なるほどね……DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>、君は幸運よ!」
(;'A`)「はい?」
('、`*川「最先端の移動技術が開発され、すでにこの<第一総合案内区画>で稼働しているの。
もちろん、第二、第三、第四ではもっと前から稼働していたのだけれど、
そのあまりの素晴らしさから、この人口の少ない第一区画にも設置されたのよ」
('A`)「へえ! それは良いですね。どういうものなんですか?」
('、`*川「円筒形の乗り物で、瞬時に移動することが可能よ。<アンカー>と言うのだけれど、
これに乗り込み、移動したい場所の座標を打ち込めば……」
- 29 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:26:51 ID:H6taOBIM0
- ('、`*川「圧倒的なエネルギーで射出され、ひとっ飛び!
この都市のどこへでもほんの数秒で移動することが可能だわ!
下降時にパラシュートが開き、
着陸の瞬間には最先端技術で作られたエアバッグが作動するのよ」
(;'A`)「それは、人体への影響はないのでしょうか?」
('、`*川「人体への影響ね……軽度・重度を問わず怪我の“報告”は一切されていないわ。
機械の故障・事故も“報告”されていないわよ」
(;'A`)「使用者は居ましたか?」
('、`*川「当然よ。素晴らしいのだからこれだけ普及しているのよ?
でもね、まだまだデータ不足な部分はたくさんあるのよ。
最近はなぜか、利用者も少なくなっているのでデータが集まらず困っているようだわ」
(;'A`)「着地地点の様子はわかりますか?」
('、`*川「着地予定地には、なぜか、おびただしいほどの赤い液体が飛び散っているケースがあるそうよ。
正体不明のひしゃげた肉が放置されているのが掃除係から報告されているわ。
乗り物の内部も血だらけで、搭乗者の姿は見当たらなかったらしいわよ。不思議よね」
(;'A`)「いったい、どこへ行ったんでしょうか?」
('、`*川「さあ? 掃除係は“目の悪い人間”が多いからねえ。
きちんと“形の整ったもの”じゃないと、“元のもの”が何だったかわからないのかも」
- 30 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:30:04 ID:H6taOBIM0
- (;'A`)「た、大変うれしい申し出なのですが、
トラブルシューティングに活かせるよう体力や運転技術を向上させたいと考えています!」
('、`*川「あら、そう? 残念ね。
それじゃあトラブルシューティング、頑張ってちょうだい」
('A`)「はい。“同志”PENISASU」
('、`#川「DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>!」
(;゚A゚)「はっ! あ……ああ……す、すいません!」
('、`;川(……)
(;'A`)「すいません、つい、うっかり……」
('、`#川「……誰にも聞かれていないわね……? ここには、今、二人しか居ない。
だから気が緩むのもわかるわ。けれどね、ここは【シュガー・ボード】なのよ?
この都市はコンピューターのものなの。だから、どこから聞かれているかわからない」
('、`*川「わかるわよね? もう、あなたも入りたての新人じゃないんだから」
(;'A`)「申し訳ありません。失言でした」
('、`*川「秘密結社に属していることが露見して処刑されても、誰も助けはできないのよ。
我々が確保した部屋内以外では、通常の住民のように振る舞って頂戴」
(;'A`)「はい」
- 31 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:32:23 ID:H6taOBIM0
- ('、`*川「どうもあなたは認識が甘いわね。しっかりと、思考を二重に持ちなさい。
コンピューターに忠実な自分、秘密結社の理念に賛同する自分……。
“二重思考”は都市で生き延びるために必要な、最低限の技術よ」
('、`*川「認識していると同時に、認識していない。
認識していないと同時に、認識している。この二重の思考をしっかりと把握しなさい。
全ては思考から始まるのだから、決して気を緩めてはいけないわよ」
('ー`*川「それじゃあ、頑張ってね。完璧なトラブルシューティングを期待しているわ。
それから、教義も使命も忘れないようにね。……“同志”DOKUO」
('A`)「はい!」
ドクオとペニサスは同じ秘密結社に所属しており――《Planner》であるペニサスが上司だ――、
そこではお互いを“同志”と敬称をつけて呼び合っているのだ。
秘密結社に所属することは反逆であり、
コンピューターに奉仕する献身的な住民に知られれば即座に処刑――ZAP――される。
【シュガー・ボード】をコンピューターの支配から解放することを目標に、
彼らは今日も己を殺して活動を続けている……。
- 32 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 00:34:47 ID:H6taOBIM0
- 6.<TSUNDERE-A-TTACK-<2> ―― ツンデレ=ξ゚⊿゚)ξ ―― >
コンピューターの心証を損ねると、階級の低下を招いてしまう。
装備が故障していたり、身体が汚れていたり、
トラブルシューティングを失敗したりなど、明確な反逆とまではいかないケースであれ、
“好ましくない”ものが積み重なることは避けるべきだ。
ξ゚⊿゚)ξ
ツンデレはその点を非常によく理解していた。
コンピューターへの忠誠心を表し、勤勉と盲目を美徳とする作品を書き、
どのような作品にも好意的な感想を残し、不平不満を零さない完璧で幸福な住民として生きている。
“本当にやりたいこと”はもっと上位階級になってから行えばいいのだ。
そのほうが自分の正体が露見しない可能性も――下の階級の者を口封じするのは簡単だ――、
コンピューターへの打撃も――より親密でより頼りにされているほど――大きいのだから。
《Reader》――黒色――よりも、《Author》――赤色――よりも、
《Planner》――橙色――よりも、《Collector》――黄色――のほうが、
使用することができる権力も、支給されるレーザー銃とベストも、発揮する効力は絶大なものなのだ。
【シュガー・ボード】の表向きでは“二重思考”を周囲に悟らせることなく立ち回り、
完璧で幸福な住民を演じてミッションをこなしつつ、
所属している秘密結社の上司から与えられた指令をもこなす彼女は、とびきり優秀であった。
まだ、たった二体目のクローンであるにもかかわらず、
ほとんど完全無欠に行動できる理由は彼女の持つ“超能力”にあった。
- 35 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 22:34:24 ID:26zvCEb.0
- 続きはまだでしょうか、コンピューター様?
- 36 名前:名も無きAAのようです:2012/12/27(木) 22:39:06 ID:JbeVR3KU0
- >>35
市民、待つのは義務です。
- 38 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:27:17 ID:A7SvOf3o0
- ξ゚⊿゚)ξ
【シュガー・ボード】内では、住民に超能力が発現することはそう珍しくない。
はっきりとした原因は解明されていないが、二十四時間、都市中の人間が
“こころの底から”創作活動について想いを募らせなければならない環境のため、
空想的な方向へと突然変異する人間が生まれる、と考えられている。
身につく能力はその時までわからないが、優秀な科学者たちの研究により、
現在までに発見されている全ての超能力が引き起こす現象は解明されている。
超能力の発動には、通常、リスクを背負わなければならない。
確実に望んだ作用を引き起こせる――成功する――わけではなく、
まったく意図していない思わぬ作用が起きてしまう――失敗する――可能性があるのだ。
例えば、『視界内の任意の場所に炎を発生させられる超能力』を持つ人間が、
超能力の発動に失敗してしまうと、
意図しないもの――例えば、自身の髪の毛やズボンなど――に炎があらわれてしまう。
なので、超能力者は危険極まりない存在だというのが一般的な認識であり、
【シュガー・ボード】内で生きている超能力者は、反逆者と判断されている。
都市に忠誠を誓った住民は、超能力の取得と同時に自決しなければならない。
そうしなければ、都市を管理するコンピューターへの反逆である。
住民の義務の中には、反逆者の索敵と始末が含まれているため、
超能力者を発見した住民は、彼らへと向けて即座に引き金を引かなければならない。
そのため、周囲に自身が超能力者だと発覚してしまうことは最も避けるべき事態であり、
失敗の――自身で制御できない――可能性がある以上、滅多矢鱈と扱えるものではない。
- 39 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:31:57 ID:A7SvOf3o0
- 訓練によって超能力の成功率は上昇しない。
優秀な科学者たちの研究によると、
およそ五%――二十回に一度――は失敗する、とのデータが提出されている。
ξ゚⊿゚)ξ
しかし、ツンデレの持つ超能力は発動に危険性が一切存在しなかった。
彼女の超能力は、“予知能力”だ。ツンデレは予知能力者である。
この予知能力の使用に失敗しても、例えば、でたらめな啓示を得たりはしない。
ただ何も起こらないだけだ。『予知できなかった』そのとき、彼女は超能力の失敗を知る。
ツンデレは予知能力を、
主に、自分の行動が“適切か不適切か”といった判定に扱っていた。
_______∧,、_{ = = ト、 i. =xヘ / ,x==- l l / ,.,ヽ=ニ 二 ニ =´_ _______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ {= ‐ i ヘ l, li 灯}ヽ/ ´ だカ :i / y´ i { = ≡ = `}  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゝ‐-=ヘ ハ ヒ:リ 弋ツ i/ ,ィ / {= ≡ = ‐ }
{´= =ヘヘ /ィ. , ,イ ゝ= = {
ξ゚⊿゚)ξ(……『→ → → → ↑』)
ξ゚⊿゚)ξ(このまましばらく、まっすぐと進み、左へ曲がればいいのですね)
予知能力で得られる啓示は曖昧で、自分で解釈する必要があったが、
高い身体能力と知的能力を持つツンデレは、
生まれてから、たった一度しか処刑されたことがない。
- 40 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:32:45 ID:A7SvOf3o0
- ξ゚⊿゚)ξ「ここを曲がればいいのかしら……?」
_______∧,、_{ = = ト、 i. =xヘ / ,x==- l l / ,.,ヽ=ニ 二 ニ =´_ _______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ {= ‐ i ヘ l, li 灯}ヽ/ ´ だカ :i / y´ i { = ≡ = `}  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゝ‐-=ヘ ハ ヒ:リ 弋ツ i/ ,ィ / {= ≡ = ‐ }
{´= =ヘヘ /ィ. , ,イ ゝ= = {
ξ゚⊿゚)ξ(『○』。
わかりましたわ。この先にブリーフィングルームがある建物があるのですね)
街中でも人目をまったく気にすることなく何度でも扱える、予知能力。
他の超能力に比べると相手に直接作用できないという欠点があるが、
ツンデレは自身の超能力をとてもよく気に入っていた。
- 41 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:34:32 ID:A7SvOf3o0
- 6.<COOL-A-STRAIGHT-<4> ―― クール=川 ゚ -゚) ―― >
川 ゚ -゚)(おやあ……?)
クールはパソコンの前で首をかしげた。
長い黒髪が揺れる。その黒髪は着ている赤色のベストによく映えた。
川 ゚ -゚)(あれで、駄目なのか)
心中とは裏腹に、表情はぴくりとも動かない。
徹底的な無表情と楽天的な所得顔。
このふたつを使い分けることが、都市で少しでも長く生き延びるために必要な処世術だ。
ある程度の年齢にまで成長している人間ならば、ほんの三日で気がつく事実だが、
常に監視されている可能性のある環境で完遂できる者は極めて少ない。
ひとりでいるときの表情、行動。身体の特徴的な動き、癖。
書いた作品の内容、感想の文面……監視者の印象を左右させない行動は存在しないからだ。
- 42 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:36:22 ID:A7SvOf3o0
- 川 ゚ -゚)
彼女の冷静な性格と理知的な顔立ちは、都市内で最も好意を抱かれる態度だった。
これはクールの気性であったため、彼女は特典を受け続けて生きてきた。
つまり、他の者よりも遥かに有利な条件で生活しているのは間違いないのだが、
川 ゚ -゚)(この作品のキャラクターは機械的で、情緒がよくわからないから、
もっと人物描写を多くして欲しかったのだが……。
しかし、わたし以外の読者は作品内容を褒める書き込みばかりだな。
……そんな風に思っているのはわたしだけなのだろうか? わたしの読解力不足なのか?)
クールの意志は【シュガー・ボード】に敵対するものだった。
周囲に迎合しない彼女の言動にはしばしば反逆的兆候があらわれ、すでに三度処刑されている。
川 ゚ -゚)(まさか、書き込みそのものが削除されるとはなあ……)
『<^ω^;削除>』。
そのかわいらしい顔文字の頬に貼り付けられた二文字は、
そこに書き込まれた内容が、何者にも閲覧できないようになった証拠だった。
川 ゚ -゚)(また、処刑されてしまうだろうか?
となると、わたしの次のクローンナンバーは<5>。
そして“処刑と同時に、その人物が抱えている現行を停止させられる”から……)
- 43 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:39:15 ID:A7SvOf3o0
- 川 ゚ ー゚)(<2>で《Author》になり、<3>は作品を持ってから死んだ。
つまり、次で、三回目の<逃亡>になるのか)
<逃亡>という言葉は現在では使われていない。
現在では<打ち切り>と言い換えられていた。
用法はほとんど同じだが、言葉の与えるニュアンスが、
“受け取る側”へと対して“やさしく”なっている、とクールは考察していた。
そうすることによって、読者への配慮を読者自身に意識――無意識でも構わない。
傷つかない環境に置くのが肝要なのだ――させ、受けた作者に善意を還元するように。
言葉のひとつひとつを徹底して“親切な方向へと破壊”し続け、この都市は回っている、と。
川 ゚ ー゚)(さすがに、それは不味いな。階級の低下をいつ招いてもおかしくない。
《Reader》でクローンナンバー<5>だなんて、絶望的すぎる。
そんな状況下で、“旧世界”のことなんて調べられるわけがない)
【シュガー・ボード】が出来る前に存在したという時代は、旧世界と呼ばれている。
クールは旧世界に興味を持ち、独自に知識を集めており、
旧世界で扱われていた言葉や言い回しを好んで扱っていた。
【シュガー・ボード】では、旧世界の歴史を知ろうとするのは、紛れも無い反逆行為である。
誰かに聞かれれば、即座にレーザーが彼女へと直撃するだろう。
川 ゚ -゚)(文字だけのやりとりは、難しいな。
書き方ひとつで相手に意図しない感情を抱かせるものに変化してしまう。
もう後がない。書き込みには気をつけないとな……感想を書く際もしっかり推敲しなければ)
- 44 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:41:16 ID:A7SvOf3o0
- 『BOON-A-NAITO-<1>! DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>!
COOL-A-STRAIGHT-<4>! TSUNDERE-A-TTACK-<2>!
以上四名のトラブルシューターは一時間以内にブリーフィングルームへと集合せよ!』
壁に取り付けられているスピーカーから、ミッションアラームが鳴り響いた。
あまりの音量にクールは一瞬身を竦ませた。少しの間を起き、それから、立ち上がる。
同時にパソコンが電子メールの受信を告げた。都市の地図画像が添付されていた。
川 ゚ -゚)(このビルは……<第三総合案内区画>か。
場所自体はこの自宅から歩いていける距離だが、膨大な部屋の数のビルだったな)
彼女は身をかがめ、まったく期待をせずに検索をかけた。
『【申し訳ございません。その情報はあなたの階級には開示されていません。】』。
予想通りの検索結果が表示されたが、頷くことはなく、ため息もつかなかった。
クールは背筋を伸ばして家を出た。
川 ゚ ー゚)(さて、今回のトラブルシューティングの終了までに、
わたしは生き残っているのだろうか?
どちらにせよ、このミッションを成功させない限りわたしに未来はない)
彼女は自分自身が皮肉げな笑みを浮かべていることに気がついていない。
クローンナンバーを<4>に増やしてから癖になってしまったそれは、
誰が見ても、悪い印象しか受けないものだ。完璧で幸福な住民ならば、決して作らない表情だ。
しかし、クールは無意識に頬を歪めてしまっている……。
- 45 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:45:08 ID:A7SvOf3o0
- 7.<ビルへ:DOKUO-A-MELANCHOLY-<3> ―― ドクオ=('A`) ―― >
('A`)
ペニサスを別れた後、ドクオはすぐに自動二輪を見つけた。
交差点で信号待ちをしているもので、大柄な男が乗っている。
黒色のベストを着ている――つまり《Reader》だ――男に近づき、声をかけた。
('A`)「おいお前。こんなところで何をしている」
( ゚∋゚)「ハッ! これは《Author》様! どうされましたか?」
('A`)「質問しているのはおれだ。もう一度聞くぞ。ここで何をしている?」
( ;゚∋゚)「こ、これは失礼しました! 職場へと向かう最中です!」
('A`)「そうか。いい自動二輪だな。どうやって手に入れた?」
( ;゚∋゚)「放置されていたものを、修理しました」
('A`)「そうなのか。ところで、おれは今、ミッションアラームで名前を呼ばれたんだ。
コンピューター様に奉仕するのは住民の義務だから、急いで向かわなければならない」
( ;゚∋゚)「それは、つまり……これを、渡せと?」
- 46 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:47:00 ID:A7SvOf3o0
- ('A`)「お前に聞くが、どうして仕事場に近い場所に住まないんだ?
そんな移動手段が不要な場所へ行けよ。<奉仕区画>には住めないかもしれないが、
この自動二輪を売り払えば<第四総合案内区画>の近くには住めるだろ?」
( ;゚∋゚)「……すいません、あの、勘弁してくれませんか」
('A`)「おれは『コンピューター様から指名されて、
トラブルシューティングを行うためのブリーフィングに参加するように呼び出し』を受けている。
この命令を遂行するための行動を邪魔するのなら、お前を反逆者と判断するしかないな」
( ;゚∋゚)「……」
('A`)「《Reader》のくせに、どうして自動二輪を修理する知識があるのかだとか、
コンピューター様に自動二輪の所有許可をとっているのかだとか、
おれに自動二輪を渡した場合仕事に遅刻するだとか、そういうことはどうでもいいんだ。
コンピューター様もこう言ってるだろ? 『住民、幸福は義務です』。な? そうだろ?」
( ;゚∋゚)「……本当に、すいません。これだけは……」
('A`)「めんどくせえ」
ドクオは大柄な男へと銃口を向けて、引き金を引いた。
レーザーが飛び出し――ZAP――男の胸に穴が開き、自動二輪と一緒に倒れこんだ。
- 47 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 01:51:35 ID:A7SvOf3o0
- ('A`)「時間の無駄だったな。はじめからこうしておけば良かったぜ」
ドクオは男の頭からヘルメットを取り、自動二輪を引き起こした。
視線を上げ、信号機が青色になったのを確認してからアクセルを開けた。
(;'A`)「はあっ……はあっ……」
ドクオは焦っていた。
目的地は詳しく知らない場所にあるため、
建物に続く道を見つけるのに、予想以上に手間取ってしまったのだ。
言われた通り、その圧倒的巨大さからすぐに建物の場所はわかった。
しかし、これでひとまずは安心だと落ち着いた一瞬後には、
道が到着を阻むように折れ曲がっていることに気が付き、舌打ちとともに悪態をついた。
道中、自動二輪の速度を落としたのも焦りの原因のひとつだった。
凄まじい轟音が鳴り響き、空気が震え、地面が揺れる感覚におののいてしまったのだ。
そしてようやく目的地についたドクオに、
きちんと駐車する余裕などあるはずがなく、自動二輪は放り投げるように地面に横倒しにされた。
ミッションアラームに名前を呼ばれてから、もうすぐ一時間が経過する。
遅刻は反逆だ。相手を待たせてしまった場合は死を覚悟するべきだろう。
(;'A`)(まったくわからない! ブリーフィングルームは一体どこなんだろうか?)
- 50 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 15:13:32 ID:55PaQZOA0
- シュガーボードって佐藤か
すんげー物語だな
- 53 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:13:12 ID:A7SvOf3o0
- 8.<ビルへ:TSUNDERE-A-TTACK-<2> ―― ツンデレ=ξ゚⊿゚)ξ ――
COOL-A-STRAIGHT-<4> ―― クール=川 ゚ -゚) ―― >
ξ゚⊿゚)ξ「あら? COOL-A-STRAIGHTじゃあありませんか」
川 ゚ -゚)「おや? TSUNDERE-A-TTACKか」
ξ゚⊿゚)ξ「……クローンナンバーが<4>ですが、大丈夫ですか?」
川 ゚ -゚)「何、心配には及ばないよ。
そっちは変わらず<2>のままか。君の聡明さは見習いたいものだな」
ツンデレとクールの二人はかつて同じチームになったことがあった。
もうひとりを加えた三名でトラブルシューティングに向かった過去をクールは思い出す。
ツンデレのクローンナンバーが<2>、
クールのクローンナンバーも<2>だった頃だ。
あの頃のクールはまだ超能力が扱えなかったが、旧世界への興味も抱いていなかった。
その当時に考えられる最高のトラブルシューティングをしたのだが、
ツンデレによって一度殺され、クローンナンバーを<3>に増やしている。
- 54 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:15:01 ID:A7SvOf3o0
- 当時チームを組んだもうひとりの人間は、ツンデレの手によって“完全に消滅”させられた。
最後のクローンを意味する<6>の番号がつけられていようと、
相手が反逆的な言動を行ったのを確認すれば、ツンデレは一切のためらいなく光線を射出した。
ξ゚⊿゚)ξ「ところで、あなたもブリーフィングルームへ向かっているのですよね?」
川 ゚ -゚)「ああ、その通りだ。頭の良い君のことだから、
あの膨大な数の部屋の中から、
目当ての部屋の検討を既につけていても不思議ではないと考えているよ
ξ゚⊿゚)ξ「買いかぶりすぎですわ。わたしくにはそんな“能力”はありませんもの。
あなたはどうでしょうか? 何か案でもあるのですか?」
川 ゚ -゚)「例のビルに到着してから考えればいいんじゃあないかな。
受付に人がいるだろうし、そこで検索してもらえればすぐにわかるだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「それもそうですわね」
二人は横に並び、目的地へと歩を進めた。
くすんだガラスの扉を押して、巨大なビルの中へと入った。
視線を左右に走らせると、エレベーター横に受付らしきスペースがあるのを発見する。
- 55 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:17:42 ID:A7SvOf3o0
- そこでは、二人の人間が何やら会話をしていた。
どうやら、苛立っている女の言葉に、疲れた表情をした男が対応しているようだ。
从 ゚∀从「ここは、いつも、お前しかいないのか?
今日はお前と、アタシの二人で仕事をしなくちゃあならないんだな?」
(;´・_ゝ・`)「いいえ、私の他に、もうひとりいます。おかしいな、いつもはもう来ているんですが。
いや、しかしほら、就業時間まではまだ残り二十分も時間がありますし。
就業開始時間までにはきちんと来る男なんですよ。本当です」
从 ゚∀从「あぁ、そうかよ。
ちょうど、偶然、たまたま、アタシがこの職場の勤務状態を視察しに来た今日に限って、
従業員が遅刻してるんだな? わかったわかった」
(;´・_ゝ・`)「申し訳ありません……」
ツンデレとクールは目配せし、カウンターへと近づいていった。
女と男のやり取りも一段落したらしく、こちらへと来る二人に視線を向けた。
川 ゚ -゚)「お忙しいところ、申し訳ありません。
今日、この建物でブリーフィングを行うと呼び出しを受けた者ですが」
(;´・_ゝ・`)「あ、ああ……それでしたら」
- 56 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:21:27 ID:A7SvOf3o0
- 从 ゚∀从「答えられないな。お前たちの階級には伝えられない情報だ」
ξ゚⊿゚)ξ(なんですって?)
ツンデレの胸中が口から飛び出していれば、間違いなく即座に射殺されていた。
苛立っている女は“橙色”のベストを着ていて、腰には“橙色”をしたレーザー銃がある。
《Planner》。
女は彼女たちよりも高い階級にいるのだから、その言葉こそが絶対で、都市の真実なのだ。
本当の真実なんてものは、高位階級の言葉ひとつで次々と入れ替わる。
从 ゚∀从「悪いが、他をあたってくれ。
見て分かる通り、アタシたちは忙しいんだ」
川 ゚ -゚)「……わかりました」
从 ゚∀从「アタシは今、機嫌が悪い。
朝食は食べていないし、ここで食べようにも家に財布を忘れてきちまった。
しつこく食い下がってくる聞き分けのない住民がいれば、すぐに発砲してしまいそうだ」
川 ゚ ー゚)(……おや)
- 57 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:23:31 ID:A7SvOf3o0
- 女は言い切ると二人から視線を外した。
それからまた、男に文句を並べ立てはじめる。
ツンデレとクールはカウンターを離れ、顔をつきあわせた。
ξ゚⊿゚)ξ「どうしましょう?」
川 ゚ -゚)「何をするにしても、まず、機嫌を直していただかないとな」
ξ;゚⊿゚)ξ(……)
高位階級者の機嫌をとる。
それは、失敗すると間違いなくクローンナンバーがひとつ増える行為だ。
ξ;゚⊿゚)ξ(トラブルシューティング外でのコミュニケーション……。
わたくしの最も苦手とする分野ですわ。加えて、高位階級様相手だなんて……)
コンピューターへの不敬、背信。
収賄、贈賄行為。不潔な格好。共産主義的発言。超能力者であると発覚。
巨大都市【シュガー・ボード】の作者や作品に対する“後ろ向き”な発言……。
これらが主とされる“反逆的行動”だが、高位階級者が相手では更に発言に気を配らねばならない。
相手が望んでいるものを察して手早く提供しても、成功するとは限らない。
相手は自分よりも絶対的な権力を扱えるのだから、精神的な気負いなどなく、
反逆的行動の密告を恐れることはない――相手を完全に信頼できない場合、
即座に射殺すれば証拠は残らない――ため、気まぐれで約束を反故にされる可能性もある。
よって、
十分な事前準備――情報を得て、前もって必要なものを手にしておく――に加えて、
適切な対処準備――想定外の状況で戸惑うことのない思考の瞬発力――が不可欠だ。
- 58 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:25:54 ID:A7SvOf3o0
- ξ;゚⊿゚)ξ(しかし、この状況をなんとかしなければ、
ブリーフィングルームにはたどり着けませんわ。
まだ、ミッションを受けてすらいないんですもの)
川 ゚ -゚)「TSUNDERE-A-TTACK-<2>。ちょっといいか?」
ξ;゚⊿゚)ξ「なんでしょうか?」
川 ゚ -゚)「このままでは、二人ともブリーフィングルームにたどりつけない。
ミッションアラームによる呼び出しを受けているということは、コンピューター様は、
我々に何かしらのトラブルシューティングを行なってもらいたいわけだよな」
川 ゚ -゚)「わたしときみは同階級だから、強制する権利は持ちあわせていないし、
ミッションが始まっていない今は“役職”を割り振られているわけでもないから、
嫌なら断ってくれて構わないが、頼みがある。
これを断るほど愚かな人格ではないと信じてはいるが、聞いてくれるかな?」
ξ;゚⊿゚)ξ(いったい、何を……? 超能力を使う?
いいえ、結果の表示には少し時間がかかりますわ。
それに、失敗すればもう一度超能力を使わなくてはいけません)
ξ;゚⊿゚)ξ(わたくしの超能力の一番の利点は、
失敗によって超能力者だと明らかになる心配がないことと、
それによって何度も自分の行動が“適切か不適切か”の判定を行えることですもの)
ξ;゚⊿゚)ξ(一度の行使にさほど時間はとりませんけれど、
会話中に使えば不自然な沈黙が生まれるほどの時間はかかります。
それは『自分だけにしかわからない何かをしているな』と疑われる理由になるでしょう)
- 59 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:28:21 ID:A7SvOf3o0
- ξ;゚⊿゚)ξ(……ですので、通常の会話で乗り切るしかありませんわ)
ξ゚⊿゚)ξ「内容によりますわ。
と言っても、この状況を打破できるのであれば、喜んで引き受けますけれども」
川 ゚ ー゚)「それは良かった。さすが、優秀だな。尊敬するよ。
都市内に潜んでいる、まともな遺伝子をからだに宿していない超能力者や、
愚かな共産主義者が相手だとこうスムーズには話は進まないだろう」
ξ゚⊿゚)ξ「それで、わたくしは何をすればよろしいのですか?」
川 ゚ -゚)「食堂で、食事の用意をして欲しい。
まだ勤務時間になっていないから、食堂内もきちんと稼働していないだろう。
だから、本格的な料理はしなくていい。朝食の用意をお願いしたいんだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「朝食ですか?
それは、つまり、あの《Planner》様に召し上がっていただくことになるのでしょうか?」
川 ゚ ー゚)「そうなるな。何、優秀な君のことだ。
料理くらい文字通り朝飯前だろう?」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっと! ちょっと待ってください!」
- 60 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:33:42 ID:A7SvOf3o0
- 川 ゚ -゚)「どうしたんだ。
我々には多くの時間が残されてはいないのだから、迅速に行動しなければならないんだぞ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ど、どうしてもわたくしが、やらなくてはなりませんの?
COOL-A-STRAIGHT-<4>が朝食の用意に向かえばいいんじゃあありませんか?
そう! そうですわ! わたくしがやらずとも、あなたがやればよろしいのでは?」
川 ゚ ー゚)「そうしても良いんだが、これからわたしは《Planner》様と会話をしようと考えている。
TSUNDERE-A-TTACK-<2>はコミュニケーションが不得手だったろう?
いや、失礼。言葉が悪かったな。失言だ忘れてくれ」
ξ;-⊿-)ξ(当たってますわ……案外、鋭いのですね……)
川 ゚ ー゚)「しかし、ここはわたしに任せてくれないか?
君と比べると頼りないかもしれないが、これでもコミュニケーション能力には自信があってね。
“四人目のCOOL-A-STRAIGHT”を信頼してくれ。完璧にやってみせるよ」
ξ;゚⊿゚)ξ(だめですわ。ここで無理に反論したら、
“理知的な行動理由を恣意的判断から妨害する行為”として、
射殺――ZAP――されかねません。それはごめんです)
ξ;-⊿-)ξ(先手必勝と先に発砲するのも無意味ですわ。
わたくしひとりではブリーフィングルームにすらたどり着けませんもの。
時間をかければしらみつぶしに超能力を使って、
探し出せるかもしれませんが、そんな余裕はありません)
ξ;゚⊿゚)ξ(それなら、朝食の用意のほうが……まだ可能性はあります……よね?)
川 ゚ ー゚)「それじゃあ、頼んだぞ。
ブリーフィングルームの部屋番号を聞くために、最善をつくそうじゃあないか」
- 61 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:35:03 ID:A7SvOf3o0
- ξ;゚⊿゚)ξ(くっ……)
_______∧,、_{ = = ト、 i. =xヘ / ,x==- l l / ,.,ヽ=ニ 二 ニ =´_ _______
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄'`'` ̄ {= ‐ i ヘ l, li 灯}ヽ/ u´ だカ :i / y´ i { = ≡ = `}  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ゝ‐-=ヘ ハ ヒ:リ 弋ツ ui/ ,ィ / {= ≡ = ‐ }
{´= =ヘヘ u /ィ. , ,イ ゝ= = {
ξ;-⊿-)ξ(『○』。はは、なるほど。そうですか。わたくしの行動は“適切”ですのね)
クールが再びカウンターに近づいていく。
ツンデレも彼女の背中から視線を外して、毅然とした足取りで食堂へ向かった。
心中の気落ちを態度には出さない。ミッションは始まっては居ないが、
“幸福でない態度”を衆目に晒すことが“何を引き起こすのか”は考えるまでもないからだ。
川 ゚ -゚)「《Planner》様」
从 ゚∀从「なんだ、さっきの《Author》か。まだいたのかよ。
何度もしつこいぜ。パソコンで表示されるように、事務的に言ってやろうか?
『【申し訳ございません。その情報はあなたの階級には開示されていません。】』」
川 ゚ -゚)「いいえ、実は、さきほど床に紙幣が落ちていたのですが、
これはもしや《Planner》様のものではないかと思いまして」
クールは右手に紙幣を持っていた。
【シュガー・ボード】内で流通している貨幣で、最も金額の小さな紙幣だ。
- 62 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:38:29 ID:A7SvOf3o0
- 从 ゚∀从「本当か? 待て、今確認するからな……。
確かに、サイフに入れず、裸でポケットに突っ込んでいた金がなくなっているな」
川 ゚ -゚)「では、これは《Planner》様のものですね。
どうぞ、これでおいしい朝食を食べてください。
食堂が開く時間はまだですが……今、わたしの知り合いが食事の準備をしていますので」
クールは、自分のサイフの中から紙幣を取り出して右手に持ち、
それを落ちていたと嘘をついて、《Planner》である女へと渡した。
すると、女は“その行動と、裏に潜んでいる理由を察し、とっさに理由を作り上げて紙幣を受け取った”。
从 ゚∀从「ふむ、なるほど。じゃあ、ありがたくそうさせて貰うが……おかしいなあ」
川 ゚ -゚)「どうかされましたか?」
从 ゚∀从「アタシがポケットから落とした金額には全然足りないんだ。
このエントランスのどこかに落ちているはずなんだが……」
川;゚ -゚)(こいつ……)
从 ゚∀从「本当に、これしか落ちていなかったのか? おかしいなあ。
この程度じゃあ、アタシが望む朝食が食べられないかもしれないぜ」
贈賄、収賄は明確な反逆行為である。
コンピューターに“完璧に”忠誠を誓っている人間に見つかってしまえば、
クローンナンバーがひとつ増えるのは間違いない。
しかし、生き延びるためには、他人に便宜を図ってもらわなければならない場面に必ず直面する。
特に、ミッションの最中に高位階級者や同階級の者に渡す機会は、想像よりも遥かに多い。
- 63 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:40:38 ID:A7SvOf3o0
- 川;゚ -゚)「わかりました。
探しておきますので、《Planner》様は先に朝食を召し上がってください」
从 ゚∀从「そうするが、“きちんと渡しに来てくれよ”?
配給の朝食はまだ到着していないだろうから、
お前の知り合いが作ってくれているんだな?」
川 ゚ ー゚)「ええ、腕によりをかけて作っていると思いますよ」
住民の生活はコンピューターから与えられた仕事をこなすことで保証されている。
食事や必需品は配給によって賄われているので、金銭を多量に所持する必要がないのだ。
住民は、都市での労働――加えて、作者は執筆、読者は感想――を行い、
労働者に配給される必要最低限な物資だけで満たされていれば、金銭はまったく必要ない。
しかし一方で、コンピューターが管理している建物内にも店があり、金銭を支払うことによって、
値段に応じた様々な物資――おいしい水や食料、娯楽品、最新の執筆ツール――を手に入れられる。
反逆行為である賄賂が横行している理由はその点にある。誰もが、より快適な環境を求めているのだ。
- 64 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:43:47 ID:A7SvOf3o0
- 从 ゚∀从「それじゃあ、アタシは効率的に仕事を行うために必要な朝食を摂ってくる。
アタシが見ていなくても、“しっかり仕事をするんだぞ”?」
(;´・_ゝ・`)「は、はい!」
川 ゚ -゚)(良し)
女が食堂に行ったのを確認すると、クールは鋭い目つきで男を見た。
一息つけたかと思った男は緊張の糸を緩めており、普段以上に怯えた。
川 ゚ -゚)「さて、わたしは今、“《Planner》様の落とした金銭を拾い、
きちんと元の持ち主である《Planner》様に返した”……そうだな?」
(;´・_ゝ・`)「はい! おっしゃるとおりです!」
川 ゚ ー゚)「よろしい。それじゃあ、聞こう」
川 ゚ -゚)「この建物のどこかの部屋で、ブリーフィングが行われるはずだ。
わたしは集合するようにミッションアラームの呼び出しを受けている。
COOL-A-STRAIGHT-<4>で検索をかけてくれないか」
(;´・_ゝ・`)「わ、わかりました。すぐに!」
男が、カウンター内側に置かれている機械を操作した。
男の階級は《Reader》であるため、高位階級である《Author》に対する服従の態度は当然だ。
川 ゚ -゚)(あの機械の使用には、階級の制限はないのか。
操作方法さえ覚えてしまえば、これから先、いちいち聞かなくても良いのだな。
時間があれば知りたいが……残念ながら、今回は見送りだな)
- 65 名前:名も無きAAのようです:2012/12/28(金) 20:46:11 ID:A7SvOf3o0
- 川 ゚ -゚)(問題はこの男の扱いだな。
必要な情報を聞き出した後、何か理由を作って射殺するのが一番良いのは間違いない。
後にミッションアラームの呼び出しを受けて訪れる者が情報を得られないのだから)
川 ゚ -゚)(しかし、《Planner》様が視察に来ている職場の職員である《Reader》か……。
『《Planner》が視察する現場の職員を殺した。つまり、不都合なことがあったからだ。
住民の怠慢を隠すお前は反逆者だ』と理由付けられるかもしれないな)
川 ゚ ー゚)(考え過ぎだろうか? だが、殺さなくてもいいだろう。
『わたし以外の住民に情報を与えない』。それで十分だ。
まわりが反逆者であればあるほど、わたしの“完璧さ”が浮き上がる)
(;´・_ゝ・`)「はい、出ました! <334号室>です。
BOON-A-NAITO-<1>様。DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>様。
COOL-A-STRAIGHT-<4>様。TSUNDERE-A-TTACK-<2>様の四名様ですね」
川 ゚ ー゚)「ああ、それだな。ありがとう。三階だな? ……わたしが一番乗りか?」
(;´・_ゝ・`)「はい。そうですね。三階です。
申し訳ありませんが、一番乗りではありません。
数十分前にBOON-A-NAITO-<1>様が<334号室>へと向かっております」
川 ゚ -゚)「……わかった。どうも、ありがとう」
先行している者がいる。
この事実はクールを震え上がらせたが、なんとか言葉を返した。
- 76 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:12:36 ID:.1kqO.9Q0
- カウンターから離れ、食堂へと行くために足を動かす。
川 ゚ -゚)(まあ、いい。
“TSUNDERE-A-TTACK-<2>が料理を上手く作れないのはわかっている”。
彼女は強敵だ。できるだけ多く殺しておかなければな……)
食堂で、ツンデレは頭を抱えていた。
ξ;-⊿-)ξ(最悪ですわ)
まだ勤務時間になっていないので、配給されている食料が運ばれてきていない。
そのため、金銭を支払って購入することができる材料をしか扱えないのだ。
それらが収められている冷蔵庫から白飯とたまごと魚を取り出して、料理の準備をする。
勤務に備えて、食堂で待機していたのは全て《Reader》だった。
彼らは配給食料を手渡すだけの係なので、助言はまったく期待できない。
食堂が一番混雑する昼食時になると、
金銭を持つ客の要望に応えられる料理人がやってくるのだ。もちろん、高位階級である。
- 77 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:13:46 ID:.1kqO.9Q0
- ツンデレは信じていた。
料理の経験がなくても、食べたことのない食材を扱っても、
超能力を駆使すればおいしい朝食を作ることができる、と。
ξ;-⊿-)ξ(まったく、本当に、最悪ですわ。
これで、《Planner》様の説得か朝食の用意かの二択では、
こちらのほうが『○』なんですもの。次のクローンでは気をつけましょう……)
しかし、目の前に並んでいるのは、
固いままの白米に、ちぎれたスポンジに似たスクランブルエッグと、黒焦げの魚。
このようなものを《Planner》に差し出せば、間違いなく処刑されるだろう。
『貴重な食材を無駄にするだけでなく、明らかに健康を害する食事を作るなんて、
この都市を崩壊させようと企んでいる反逆者以外の何者でもない』。
ツンデレがこの料理を見たのならば、そのような理由で調理者を殺害する。
他の誰もが同じだろう。射殺しない要素がない。
その時、食堂に《Planner》の女が現れ、席へとついた。
座席には多くの空席があるが、時間の関係で彼女以外には誰も座っていない。
食堂の職員は突如現れた《Planner》に身を固くする。
- 78 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:14:17 ID:CalbGewM0
- ktkr!
- 79 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:16:53 ID:.1kqO.9Q0
- 从 ゚∀从「よう、料理はできたか? ここまで持ってきてくれ。期待してるからな」
ξ゚⊿゚)ξ「はい。わかりましたわ。少々お待ち下さい」
ツンデレはもう一度挑戦する覚悟を決めた。
今回の失敗を活かして注意しながら作れば、食べられないものにはならないはずだ。
再び冷蔵庫を開けて材料を取り出し、調理にとりかかった。
クールが食堂に到着して席につき、
退屈そうな女と会話をしているとツンデレが料理を完成させた。
残念ながら、結果は同じであった。
ξ;-⊿-)ξ(口に入れるものとは思えない出来ですが、これ以上待たせるわけにもいきませんわ)
川 ゚ -゚)「《Planner》様、朝食ができたようですよ」
从 ゚∀从「お、本当か。楽しみだぜ」
ξ゚⊿゚)ξ(COOL-A-STRAIGHT-<4>が何かしらフォローしてくれるはずですわ。
しかし、この料理の出来では、いくら尽力してくれても無駄でしょうね)
ξ;-⊿-)ξ(本当に、最低ですわ。
処刑されると“今のわたくし”が書いている作品は<打ち切り>になってしまいます……
完結させられない……それは、評価が下がってしまう行為ですわ。
ああ、今まで、ずうっと評価を積み上げてきましたのに)
- 80 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:19:23 ID:.1kqO.9Q0
- ξ;゚⊿゚)ξ「ど、どうぞ。召し上がってください」
ツンデレが料理を並べると、
从 ゚∀从「……おい。なんだよ、これは。本気で言っているのか? アタシにこれを食えと?」
《Planner》の女が一拍おいてから発言した。
沈黙。
ツンデレは処刑を受け入れている。
相手を殺すしかこの窮地を脱する方法はないが、高位階級を殺害できるわけがない。
ξ゚⊿゚)ξ
从 ゚∀从
女が橙色のレーザー銃に手をかけた。
《Planner》のベストは《Author》のレーザーを完全に無力化するが、
《Author》のベストは《Planner》のレーザーには紙同然である。
ツンデレの死によって沈黙の幕が引かれると、その場を見ている誰もが理解していた。
《Planner》を侮辱した《Author》が、《Planner》によってクローンナンバーをひとつ増やす、と。
- 81 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:22:13 ID:.1kqO.9Q0
- 川 ゚ -゚)
不意に、座っていたクールが立ち上がった。
ツンデレと《Planner》の女の視線がクールへと移る。
手に、レーザー銃を持っていた。銃口はツンデレへ向いている。
そして、一切のためらいなく引鉄を引き、レーザーを発射――ZAP――した。
ツンデレの胸に穴が開く。からだがゆっくり傾いていき、倒れた。
全員があっけにとられている中、クールは宣言する。
川 ゚ -゚)「《Planner》様に、家畜の餌にも劣るような料理を差し出すとは……。
これは疑いようもない反逆的行動なので、処刑しました」
それからツンデレの死体へと近づき、身体やポケットをまさぐった。
目当てのサイフを手にすると中身を開き、
一番額の大きな紙幣を一枚取り出して《Planner》へと差し出す。
川 ゚ ー゚)「《Planner》様が落としたのは、この紙幣ではありませんか?
どうやら、TSUNDERE-A-TTACK-<2>が拾っていたようですね。まったく、救いがたい愚かさです」
从 ゚∀从「どうやら、そうらしいな。こいつは明らかな反逆者だ。
お前のような優秀なトラブルシューターがいることに安心を感じるよ。
こいつの処理は任せろ。これもアタシたちの仕事だから、気にするな」
川 ゚ -゚)「わかりました。では、失礼します」
- 82 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:26:33 ID:.1kqO.9Q0
- “死体”は低位階級である《Reader》によって集められ、高位階級によって処理される。
愛や性欲が存在しない【シュガー・ボード】では、施設の試験管から人間が生み出されている。
都市内の人口は大幅な増減がないように管理されており、
その情報は極めて重要なものであるため、高位階級者にしか明かされていない。
全ての住民は、“自分”と“五人のクローン”を持っており、
“自分”が死亡してしまったその瞬間、次のクローンがはじめて目を覚まして動き出す。
記憶と精神は完全に引き継がれるが、前の自分が持っていた作品は<打ち切り>になる。
何故ならば、処刑されたということは反逆者であり、
反逆者が書いた作品は都市にとって有害でしかないためである。
- 83 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:27:58 ID:.1kqO.9Q0
- 川 ゚ -゚)
クールは食堂の湯のみに温かいお茶を入れてそのまま食堂を出た。
密かに所持していた睡眠薬をお茶に混ぜ込み、カウンターへと戻る。
(;´・_ゝ・`)「あ、あれ? どうされました?」
川 ゚ -゚)「いや、何。色々お世話になったからな。
お茶でもどうかと渡しに来ただけだよ」
(;´・_ゝ・`)「それはどうも、ありがとうございます」
男に湯のみを差し出すと、緊張する環境に長くいたためか、すぐに飲み干した。
扉が、カウンターの奥にあった。事務作業を行う部屋へとつながっているようだ。
クールはそれを見て口の端をつり上げ、勤務時間まで部屋で休んだらどうだと告げた。
(;´・_ゝ・`)「いや、しかし……もう残り時間も少ないですし……」
川 ゚ ー゚)「五分間でも身体を休めると、仕事の効率が段違いに上がるらしいぞ。
今のそんな疲れた様子であの《Planner》様の満足する仕事が行えるのか?」
それから二、三言交わすと男は納得した風情で立ち上がり、部屋へと消えた。
<334号室>を目指して階段を登りながら、クールは考えている。
川 ゚ -゚)(わたしは、わたしの理想とする環境を作るまでは決して諦めないぞ。
今回のトラブルシューティングをしくじらなければ、まだまだ挽回できる。
かつて旧世界に存在した“理想郷”を復活させるまでは、決して死ぬわけにはいかない)
- 84 名前:名も無きAAのようです:2012/12/29(土) 19:36:56 ID:CalbGewM0
- 心理戦というか騙しあいは良いな
- 86 名前:名も無きAAのようです:2012/12/31(月) 01:22:20 ID:nlyghrV.0
- 9.<<アンカー>>
ξ#゚⊿゚)ξ(本当に、やってくれましたわね。COOL-A-STRAIGHT-<4>!
『どうせ処刑されるのなら、わたしが殺っておこう』というものではありませんでしたわ。
はじめからわたくしを殺すつもりで話を進めていたのですね!)
TSUNDERE-A-TTACK-<3>……“三人目”のツンデレは、
<第三総合案内区画>にあるクローン施設の地下で目を覚ました。
“前任の自分”が絶命すると、家に最も近い<奉仕区画>のクローン施設で目を覚ますのだ。
クローンに替わった場合、コンピューターからの評価が下がると同時に
自分が持っている作品を<打ち切り>にされるものの、反逆の疑いは完全に晴れる。
そして、前任の自分の記憶と精神を引き継いだクローンは、
次は、“もっとうまく”活動することを覚える。
ξ゚⊿゚)ξ(……<アンカー>を使うしかありませんね。
事故の可能性には目をつむりましょう。
どうせこのままでは召集時間には間に合わず、ナンバーが増えて、
またここからになってしまいます)
素早く装備を整え――赤色のレーザー銃を装着し、同じ色のベストを着る――、
施設を飛び出した。
- 87 名前:名も無きAAのようです:2012/12/31(月) 01:24:59 ID:nlyghrV.0
- 頭の中に入っている地図を頼りに走り、彼女はすぐに<アンカー>の元へと到着した。
円筒形のそれに乗り込むとすぐに機械音声が搭乗を歓迎する声を投げかけてきたが、無視する。
ξ゚⊿゚)ξ(座標は……目的地に近くて、あまり人の通らない場所がよろしいでしょうね。
人に直撃すると、わたくしも危険ですもの。リスクは最小限にするべきですわ)
<アンカー>の着弾地点を設定し、発射スイッチを押した。
空気を吸い込む音がだんだんと甲高く、鋭くなり、やがて凄まじい轟音とともに吐き出された。
圧倒的なエネルギーで、<アンカー>が射出される。
ツンデレの身体が、柔らかいシートに思い切り押し付けられた。
ξ;-⊿-)ξ
空に吸い上げられるような感覚に肉体がついて来ない。
脳に十分な酸素が行き渡らず意識を手放しそうになった次の瞬間には下降していた。
そしてものすごい衝撃と地面が砕け割れる音で意識を取り戻す。
すぐに<アンカー>から這い出ると、ツンデレはすぐに足を動かした。
身体中の痛みや地に足がつかない感覚にふらつきながらもなんとか巨大な建物へと入る。
- 88 名前:名も無きAAのようです:2012/12/31(月) 01:25:58 ID:nlyghrV.0
- 時間にして、五分とかけずにこの場所へ戻ってきたのだ。
前任の自分が見ていた景色と違う点は、カウンターに人がいないことだろう。
ξ゚⊿゚)ξ(好機ですわ)
ツンデレはカウンターの内側に置かれている機械に触れた。
彼女はこの機械の操作方法を知っていたのだが、
《Planner》につっぱねられたので触れることすらできなかったのだ。
すぐに目当ての情報を引き出した。ブリーフィングルームは<334号室>である。
ξ゚⊿゚)ξ(ああ、もう、身体中が痛いですわ。意識もまだしっかりとしませんし。
絶対に許しませんわ、COOL-A-STRAIGHT-<4>。
わたくしの邪魔をするなら、<4><5><6>と全てのあなたを始末してあげますわ……)
ツンデレが階段を登って<334号室>へと向かっている最中に、
建物の前に自動二輪が放り投げるように駐車された。
エントランスホールでは、ドクオが焦り、視線をさまよわせていた。
- 89 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 01:46:44 ID:yW7ZTCcI0
- 10.<DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>の焦燥>
(;'A`)(扉がある!)
走り回りながら首を振り、多くの場所を見たが誰ひとりの姿も見えなかった。
そんなときにドクオはカウンターの奥にある扉を見つけた。中に誰かいるかもしれない。
彼はは弾かれたように駆け寄った。
ドアノブに手を伸ばしてひねるが、開かない。どうやら鍵がかかっているようだ。
(;'A`)(もしかして、この中にも誰もいないのかよ! ふざけんな!)
ドクオはドアノブから手を離してカウンターから出ようとしたが、足を止めた。
内側に見慣れない機械が置いている。操作方法は検討もつかなかった。
(;'A`)(扉を開けば、何か良い方向に状況が改善するか?)
ドクオは考える。扉の内側に職員はいないかもしれないが、
もしかすると機械の操作説明書が置いているかもしれない。可能性はそう高くないだろう。
だが、監視カメラや館内放送など、とることができる行動の選択肢が増えるのは間違いない。
- 90 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 01:48:44 ID:yW7ZTCcI0
- (;'A`)(中に何もなかったらまた“締め直せばいい”な。
人も居ないし、やるなら今しかない!)
ドクオは“扉の内側に取り付けられているつまみを回転させ、鍵を開けた”。
扉を開くと、中には職員らしき男がひとり、椅子に腰掛けて熟睡していた。
ドクオは男の足を思い切り蹴り飛ばしてから、レーザー銃を抜いた。
(#'A`)「起きろ!!」
(;´゚_ゝ゚`)「う、うわああああああ!!」
(#'A`)「おれはミッションアラームで名前を呼ばれたトラブルシューターだ。
今日、この建物で行われるブリーフィングルームの部屋番号が知りたい。
おれの撃ち殺される前にさっさと調べてくれ」
(;´・_ゝ・`)「ど、どうして? あれ?
鍵はきちんとかけたじゃないか……
合鍵も今はわたしと《Planner》様しか持っていないし……どうなっているんだ……」
ドクオがもう一度男を蹴り飛ばした。今度は腹だ。
男が呻き、うつ伏せに倒れる。それから動かなくなった。
(#'A`)「おいおい、ふざけんじゃあねえぞ! さっさと起きやがれ!」
男の背中を蹴飛ばし続けていると、やがて頭を抱えてむっくりと起き上がった。
懇願する表情でドクオを見上げている。目には涙が浮かんでいた。
(´;_ゝ;`)「ううううう、やめてください……。ごめんなさい、ごめんなさいいいい」
- 91 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 01:51:54 ID:yW7ZTCcI0
- (#'A`)「いいか? もう一度だけ言う。
おれはミッションアラームで名前を呼ばれたトラブルシューターだ。
今日、この建物で行われるブリーフィングルームの部屋番号が知りたいんだ」
(´;_ゝ;`)「ううううう、お、お名前を聞いてもよろしいですか……?」
(#'A`)「DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>だ。
早くしろ、《Reader》のゴミクズなんかいつでも殺せるんだぞ」
(´;_ゝ;`)「ひ、ひい、ひいい」
男は立ち上がって部屋を出ると、カウンター内側の機械を操作した。
彼はパニック状態に陥っていたが、ドクオの望んでいる結果を表示することができた。
(´;_ゝ;`)「DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>様は<334号室>でブリーフィングとなっていますうう」
('A`)「そうか、わかった」
ドクオは階段へ走ろうと振り返ったが、
素早く踵を返してレーザー銃を男へ向けて引き金を引いた。男の首から上がなくなった。
('A`)「職務怠慢はコンピューター様への反逆行為だ。
コンピューター様への奉仕活動を怠るなんて、同じ住民として見過ごせないな」
今度こそドクオは階段へと駆けた。
全力で足を動かし、階段を数段飛ばしで上る。
ミッションアラームの放送から、もう、一時間は経過しているだろうか?
- 92 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 01:56:12 ID:yW7ZTCcI0
- 11.<ブリーフィングルーム>
( ,,^Д^)
( ^ω^)
川 ゚ -゚)
ξ゚⊿゚)ξ
(;'A`)
( ,,^Д^)「住民DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>。四分十二秒の遅刻です。
我々全員が納得できる理由を述べてください」
- 93 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 02:00:52 ID:yW7ZTCcI0
- (;'A`)「あ……」
( ,,^Д^)「それでは、こちらから質問しましょうか。
住民DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>。あなたはどうして遅刻したのですか?
最も大きな理由と考えられるものを挙げてください」
(;'A`)「……招集地点から、自宅が離れていたためです。
ミッションアラームを受けたのは自宅でしたので、移動に時間がかかってしまいました」
( ,,^Д^)「よろしい。では、住民DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>。
確か、あなたの住居は<第一総合案内区画>ですね。それは何故ですか?
どうして、最先端技術が多く使用されている最新の<奉仕区画>に住居を移さないのですか?」
(;'A`)「それは……私の書く作品の雰囲気に関係があります。
数多くの人と楽しく交流し、華やかな雰囲気に包まれているような作品ではありません。
孤独な世界で生き抜く硬派なサイエンスフィクション小説ですので」
( ,,^Д^)「なるほど。
つまり、退廃した世界観作りを描くのに必要な環境だと言うのですね?」
(;'A`)「そうです。
流行のはるか後ろに身を置き、暗闇を感受しなければ私はあの作品が書けないのです」
( ,,^Д^)「とても良くわかりました。道理にかなっていますね」
(;'A`)「……」
- 94 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 02:04:23 ID:yW7ZTCcI0
- ( ,,^Д^)「住民DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>。あなたは幸福ですか?」
(;'A`)「もちろんです《Collector》様!」
( ,,^Д^)「作者は素敵な作品を書き、そして読者に感情を与える。
伝える物語の手法は自由で、受け取る側の解釈も自由ですが、
あなたの作品には反逆的性向が見受けられました。あなたはそれを理解していますか?」
(;'A`)「そんなはずはありません!」
( ,,^Д^)「ほう。それだけ元気良く発言したのですから、余程の自信があるのですね。
つまり、コンピューター様により近いわたしが間違っていると考えているのですね?
《Collector》よりも《Author》の方が正しい、と。なるほど。意思は尊重せねばなりませんね」
( ,,^Д^)「トラブルシューターたち!」
( ^ω^)「ハッ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ハッ!」
川 ゚ -゚)「ハッ!」
- 95 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 02:08:37 ID:yW7ZTCcI0
- ( ,,^Д^)「今から、住民DOKUO-A-MELANCHOLYー<3>の作品、
『マジックスタディ』から文章を抜粋します。
それを聞き、理解した後に、感想をわたしに聞かせてください」
( ,,^Д^)「『やァ、参ったな。その時おれは思ったものだ。まったくの暗闇の中にたったひとりきり。
いったいこの世界からどうやって脱出するんだってね。だけど簡単なことだった。
鍵は懐疑による否定さ。“懐疑”から“意”を得たら“鍵”となるのはいつの世も同じ。
その“意”が、自我の暗闇の檻の鍵となって世界へおれを解き放つのだ。拒絶こそが自由への扉』」
(;'A`)(三ヶ月前に更新した文章だ……)
( ,,^Д^)「これは、自分の部屋に閉じこもった男の心情描写です。
今から、あなた達に感想を伺いますが、感想に嘘や偽りを混ぜ込むことは、
決して許されない反逆行為だと、あなた達は理解していますね?」
( ,,^Д^)「それでは、住民BOON-A-NAITO-<1>。何か感想はありますか?」
( ^ω^)「あまりにも愚かしい、唾棄すべき文章だと感じました。
この【シュガー・ボード】への懐疑を抱かせ、反逆を促しています。
都市を想うこころが一切存在しないからこそ綴ることが可能な文章です」
- 96 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 02:12:00 ID:yW7ZTCcI0
- ( ,,^Д^)「TSUNDERE-A-TTACK-<3>はどうでしょう?」
ξ゚⊿゚)ξ「疑いようもなく反逆的なものだと思いましたわ。
特に、『いつの世も同じ』だなんて、まるで遥か昔の時代を知っているようです。
個人で調べたものなのか、仲間がいるのかはわかりませんが、
禁止されているにも関わらず、旧世界について調べているのではないでしょうか」
(;'A`)(遅刻によって“おれそのもの”の評価が下がり、
今までは読まれても“そうやって解釈されなかった”場所がひっかかったのか)
( ,,^Д^)「その通りです。
どうやら、他のトラブルシューターたちには問題はないようですね。
わたしも、概ね同じ意見を抱きました」
( ,,^Д^)「読者にこのような感想を抱かせる作品を書くこころを持っている
DOKUO-A-MELANCHOLYー<3>は、【シュガー・ボード】の住民として失格でしょう。
あなたは、この都市に相応しくありません」
(;'A`)「ま、待ってください! 誤解です!」
( ,,^Д^)「愚昧なるあなたでも、コンピューター様の素晴らしさは知っているでしょう?
コンピューター様は、この世のすべての事象を分析できます。
人の些細な所作からでも同様です。つまり、コンピューター様が下した結論はまったく正しい。
翻って、分析できないものがあった場合、それは反逆的な隠蔽であるということです」
(;'A`)
- 97 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 02:14:11 ID:yW7ZTCcI0
- ( ,,^Д^)「住民DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>はブリーフィング後に処刑します」
(;゚A゚)「そ、そんな……」
( ,,^Д^)「さて、それではブリーフィングを開始しましょうか。
わたしがこのブリーフィングを進行していきます、TAKARA-C-GIKO-<6>です。
トラブルシューターのみなさん、よろしくおねがいしますね」
( ^ω^)「よろしくおねがいします」
ξ゚⊿゚)ξ「よろしくおねがいします」
川 ゚ -゚)「よろしくおねがいします」
(;'A`)「よ、よろしくおねがいします」
( ,,^Д^)「まずは、大前提からいきましょうか。みなさんご存知の通り、
コンピューター様に庇護されたこの完璧な【シュガー・ボード】ですが、
中にはこの環境を幸福と感じず、コンピューター様に不満を抱く嘆かわしい者が居ます。
そのような反逆者を発見し処刑するのが住民の義務ですが……」
( ,,^Д^)「しかし、彼らも浅はかではありません。非常に狡猾であるのです。
我々の中に溶け込み、巧妙に姿を隠しているのです。
それを暴き、見つけ出すのが我々住民の義務なのは、言うまでもありませんね?」
- 98 名前:名も無きAAのようです:2013/01/01(火) 02:15:52 ID:yW7ZTCcI0
- ( ,,^Д^)「それでは、今回のミッションについて説明させていただきます。
期待していますよ。ここにいるのは、優秀なトラブルシューターばかりですからね」
( ,,^Д^)「『ブラックマーケット』という作品スレッドを知っていますか?
読者参加型形式のほのぼのとした作品でしたが……
途中から作者が作品内に介入するようになりまして、作品の空気が一変します」
川 ゚ -゚)「作者が作品に登場する作品は、これまでにもあったのでは?」
( ,,^Д^)「……」
川;゚ -゚)「あ……」
- 102 名前:名も無きAAのようです:2013/01/02(水) 01:39:53 ID:vkcebjSY0
- ( ,,^Д^)「このわたしの説明を遮るとは……
住民COOL-A-STRAIGHT-<4>、あなたは“書き込みの件”もありますし、
後で個人的に“おはなし”する必要があるみたいですね。あははっ」
川;゚ -゚)「も、申し訳ありません!」
( ^ω^)(書き込みの件……?)
( ,,^Д^)「黙りなさい、《Author》のゴミが。いくらでも換えがいる《Author》如きが、
許可なしにその汚らしい口を開くんじゃあありません。黙って聞いてくださいね?
二度目はありませんよ? あははっ」
川;゚ -゚)「寛大な御処置、誠にありがとうございます!」
ξ゚⊿゚)ξ(何? これだけの無礼を働いたのに処刑されないの?)
川;゚ -゚)(危なかった。本当に、危なかった。死んだかと思った……。
TAKARA-C-GIKO様と過去に面識があったことが幸いだったのか?
今のわたしの作品にスレ立ての許可をくれた人だから、少しだけ判定が甘いのだろうか?)
- 103 名前:名も無きAAのようです:2013/01/02(水) 01:43:46 ID:vkcebjSY0
- ( ,,^Д^)「それでは、話を戻しますね。
空気が一変したというのはですね、要するに“攻撃的”になったのですよ。
はじめから、そうするつもりの作品だったのか、
思うような人気が得られなくて苛立ったのかはわかりません」
( ^ω^)(愚かしいお……)
( ,,^Д^)「そして、問題が生じます。
“他のスレッドに自分のスレッドの調子を持ち込む行為”や、
“コンピューター様への挑発的な態度”に“都市に対する否定的言動”など、
数多くの反逆行為を重ね始めたのです」
('A`)(ほう……)
( ,,^Д^)「これはもう<思考公言規制>であがなえる域を超えていましたので、
すぐにコンピューター様――気落ちしておられました――がアクセス元を調べ、
作者のもとに優秀なトラブルシューターが派遣されました……が」
ξ゚⊿゚)ξ(やはり、相手がその気になれば何から何まで全部調べられるのですね)
( ,,^Д^)「住居はもぬけの殻でした。パソコンを放置して、作者が失踪したのです。
悲しみにくれる読者を出さないため、
コンピューター様はすぐに作品を<打ち切り>扱いにしました」
川 ゚ ー゚)(文字通り、旧世界の言語で言う<逃亡>じゃないか)
( ,,^Д^)「さて、表面上では解決したように見えるこの問題ですが、
実は一切解決していませんね?」
- 104 名前:名も無きAAのようです:2013/01/02(水) 01:46:32 ID:vkcebjSY0
- ( ,,^Д^)「ここからが本題です! よく聞いてくださいね?」
( ,,^Д^)「その作者が先日、<第二総合案内区画>で発見されました。
彼はコンピューター様の目を逃れてどこかに隠れ潜んでいるようです。
逃げている最中に得たのかどうかはわかりませんが、複数の仲間の存在も確認されています。
あなたたちは<第二総合案内区画>へ向かい、速やかに彼らを殲滅してください」
( ,,^Д^)「以上です。質問があれば許可します」
( ^ω^)「《Collector》様、その反逆者の名前や顔はわかっていないのですか?」
( ,,^Д^)「もちろん、わかっていますよ。
名前はSYOBON-A-BROWNCHILD-<6>。こちらが顔写真です」
『(´・ω・`)』
( ,,^Д^)「八の字の眉に、うつむきがちな態度から気弱そうだと侮ってはいけませんよ。
反逆者は確実に粛清しなければなりませんからね。しっかりとお願いします」
( ^ω^)「お任せください。必ずや仕止めてごらんにいれます」
- 105 名前:名も無きAAのようです:2013/01/02(水) 01:49:24 ID:vkcebjSY0
- ( ,,^Д^)「他のトラブルシューターは何かありますか?」
ξ゚⊿゚)ξ「わたくしはありませんわ。
BOON-A-NAITO-<1>の的確な質問で疑問がすべて解決しました」
川 ゚ -゚)「右に同じです」
('A`)「すいません、ひとつ、よろしいでしょうか?
先日発見したとおっしゃいましたが、どこから得た情報なのでしょうか?
発見現場の様子がわかれば、重点的に調べるべき場所が判明すると思うのですが」
( ,,^Д^)「……」
(;'A`)(何かマズいことを言ったか……?)
( ,,^Д^)「……効率良く反逆者を処刑しようと考えれば、当然抱く疑問ですね。
よろしいでしょう。やはり反逆者は、反逆者の思考がわかるということでしょうか」
(;'A`)(おれの評価が悪いから、何をしても悪い印象へと受け取られてしまうのか……)
( ,,^Д^)「まず、どこから得たという情報については、あなたたちの階級には開示されていません。
SYOBON-A-BROWNCHILD-<6>を発見した現場の映像を、
発表が許可されている部分のみ、今から流しますので、よく見て記憶してくださいね」
タカラの言葉が終わると、ブリーフィングルームの明かりが落ちた。
それからすぐに壁の一面が真っ白に光り出した。スクリーンだ。映像が始まる。
どこかから細かやな機械音が聞こえてきた。映像を投射しているプロジェクターの音だ……。
- 106 名前:名も無きAAのようです:2013/01/02(水) 01:51:43 ID:vkcebjSY0
- 12.<SYOBON-A-BROWNCHILD-<6> ―― ショボン=(´・ω・`) ―― >
(´・ω・`)
( ・∀・)
<ヽ`∀´>
ノパ⊿゚)
廃墟同然の光景が映しだされた。音声は入っていない。
民家の壁や地面は黒ずんだ灰色をしており、
映像越しであったが現場の空気が用意に察することができる。
三人の男とひとりの女が、周囲を警戒しながら歩いていた。
時折背後を振り返り、尾行している者がいないか気にしている。
- 107 名前:名も無きAAのようです:2013/01/02(水) 01:52:36 ID:vkcebjSY0
- ( ・∀・)
(;´・ω・`)
端正な顔をした男が、気弱そうな男――ショボン――へと何かを口にした。
ほころんだ表情と大仰な仕草から、ショボンを怖がらせ、からかったようだ。
小さな身体をより縮めたショボンは助けを求めるように女に顔を向ける。
ノパー゚)
(;´゚ω゚`)
女がにっこりと微笑んだ。
反してショボンの目が見開かれ、より一層怯えた表情になる。
大柄なその男にすがるように、四人組の最後のひとりを見上げた。
<ヽ`∀´>
(´・ω・`)
角ばった顔立ちをした男だ。
落ち着いた空気を纏っている佇まいだが、どこか、すべてを諦観しているようにも見える。
彼が口を開き、ショボンの肩を叩くと、ショボンが気を取り直した。
どうやら、ショボンが厚い信頼を寄せる男らしい。
(´^ω^`)
ショボンが笑顔を見せた。
先ほどの彼の印象――気弱で卑屈で、闘争を好まないであろう――とは違った、
人の神経を逆なでする笑顔を最後に映像が終わる。
- 108 名前:名も無きAAのようです:2013/01/02(水) 05:31:59 ID:sOccfdwc0
- ZAPZAPZAP
- 109 名前:名も無きAAのようです:2013/01/02(水) 14:49:25 ID:awLcfanU0
- 茶器坊か
乙!
- 110 名前:名も無きAAのようです:2013/01/03(木) 03:30:51 ID:n3qObux.0
- 13.<役職>
( ,,^Д^)「映像は以上です」
ξ゚⊿゚)ξ(全員、階級を表すベストを着ていませんでしたね。
顔まで判明している反逆者ですのに、何も言及されないんですの?
だとすると、完全に管理されていない都市住民……? 《Reader》でしょうか?)
( ,,^Д^)「ああ、そうそう。
『ブラックマーケット』の作品スレッドを立てる許可を出した者は、
クローンナンバーをひとつ増やして、
再教育プログラムを受けている最中ですから安心してくださいね」
川;゚ -゚)(なるほど。さっきわたしが助かった理由も、そのあたりが関係しているのか)
( ,,^Д^)「それでは、今からチームの“役職”を決めたいと思います。
みなさんは《Author》に成り立ての新参者ではありませんから、
適性テストを行うこともないでしょう。過去の実績から決めますね」
- 111 名前:名も無きAAのようです:2013/01/03(木) 03:35:44 ID:n3qObux.0
- ( ,,^Д^)「BOON-A-NAITO-<1>には[チームリーダー]をお願します。
冷静で的確な行動がとれ、反逆者の発見が得意なあなたにぴったりの役職ですね」
( ,,^Д^)「もしかすると、トラブルシューターのチームの中に、反逆者が潜んでいるかもしれません。
ですが、あなたならば見つけ出して即座に始末できるでしょう。
それによってチームメンバーが減ってしまっても、
完璧にミッションをこなしてくれると信じていますよ」
( ^ω^)「承りました」
( ,,^Д^)「TSUNDERE-A-TTACK-<3>には、[幸福係]をお願いします。
チームみんなが幸福にミッションに取り組み、完璧に遂行できるようにするのが、
[幸福係]という役職の仕事です」
( ,,^Д^)「士気はミッションの成功に重要な要素ですから、気を配ってくださいね。
あなたの場を盛り上げるギャグや、陽気な歌に反応しない者は士気が低下しています。
そんな状態では到底ミッションの成功は望めそうにありませんね」
( ,,^Д^)「そんな事態は、ただちに是正されなければなりません。
これから後、あなたがたはコンピューター様から支給される道具を受け取るのですが、
その時に[幸福係]の権限で扱える“クスリ”を渡します。
それは“幸福になれるクスリ”ですので、士気が低い者に独断で投与し、不幸を是正してください」
ξ゚⊿゚)ξ「かしこまりましたわ」
- 112 名前:名も無きAAのようです:2013/01/03(木) 03:39:30 ID:n3qObux.0
- ( ,,^Д^)「DOKUO-A-MELANCHOLY-“<4>”には、
[記録係]と[忠誠係]をお願いします」
(;'A`)(<4>……“おれ”じゃあないんだな……)
( ,,^Д^)「いわゆる、チームの監視係ですね。
[記録係]としてミッションの映像を記録し、[忠誠係]としてミッションの様子を記してください。
あなた達がしっかりとコンピューター様のために働いているかどうか判断しますからね、
きちんとお願いします」
( ,,^Д^)「DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>。クローンナンバー<4>が、
目覚めたクローン施設で装備を受け取れるように、今、手配していますので、
“次のあなた”はそちらで受け取ってくださいね? あははっ」
(;'A`)「わ、わかりました」
- 113 名前:名も無きAAのようです:2013/01/03(木) 03:41:42 ID:n3qObux.0
- ( ,,^Д^)「COOL-A-STRAIGHT-<4>には、[装備管理係]をお願いします。
あなたは、四人の中で一番優れた運転技術を持っていますからね。適任でしょう。
他には、チームの乗り物や装備品を扱う役職ですね。
レーザー銃やベストの修理などもお願いしますよ」
( ,,^Д^)「必要だと思ったときには、チーム全員の装備品を点検してくださいね。
武器が壊れたままですと戦闘時にまったく無力になりますから。
そんな者は生かしておく価値がありません。即座に“次の者と交代してもらいましょう”」
( ,,^Д^)「あと、支給されていないはずの不審な装備を持っている者がたまに居るようです。
どこから手に入れたのか知りませんが、支給物以外を所持しているということは、
紛れも無い反逆者ですので、相手が隠している装備を見逃さないようにしてくださいね」
川 ゚ -゚)「任せてください」
( ,,^Д^)「これで全員に役職が行き渡ったようですね。
では、今からみなさんのチームに支給される装備や道具を渡します」
( ,,^Д^)「まずはみなさんに、レーザー銃を一丁ずつ。要するに、予備ですね。
予期せぬ出来事が起きてひとつ壊れてしまうなんてよくありますから。
そして次に、“超能力感知器”です。今は電源を切ってありますが……」
('A`)(なんだと!?)
ξ゚⊿゚)ξ(なんですって!?)
川 ゚ -゚)(そんなものがあるのか!?)
( ^ω^)(……)
- 115 名前:名も無きAAのようです:2013/01/03(木) 04:05:46 ID:n3qObux.0
- ( ,,^Д^)「これは、近くで超能力が使用されると、感知して音が鳴り、力の出処を示します。
具体的な効果範囲はあなたたちの階級には明かせない情報ですが、
反逆者である超能力者を発見するには非常に有用な代物ですので、うまく扱ってくださいね」
( ,,^Д^)「そして、こちらが[幸福係]が管理する“クスリ”です。
注射薬で、全部で十本あります」
( ,,^Д^)「“クスリ”はトラブルシューターの間では『幸福薬』だとか、
『ハッピードラッグ』だとか、そのような名前で呼ばれていますね。
まあ名前なんてどうでもいいですが、効果は折り紙つきですよ。
摂取すれば間違いなく“幸福な状態”になりますので、士気が低い方に注射してください」
( ,,^Д^)「最後に、“最新技術”が使用された新装備をひとつ支給します。
トラブルシューティングを通じて、新装備のテストと結果報告を行なってくださいね」
( ,,^Д^)「“今のところこの装備が何らかの問題を起こしたという報告は上がっていませんが”、
科学の発展にはデータが必要ですので、使ってくださいね? 奉仕は義務ですよ。
テストする人物は[装備品係]が決めてください。使用レポートを提出するのを忘れずに」
( ,,^Д^)「さて、以上でブリーフィングも終えたいと考えています。
何か質問はありますか? まさか、これだけ長い間わたしが時間を割いて説明したのに、
まだわからないことがある住民なんていませんよね?」
- 116 名前:名も無きAAのようです:2013/01/03(木) 04:14:36 ID:n3qObux.0
- ( ^ω^)
ξ゚⊿゚)ξ
川 ゚ -゚)
('A`)
( ,,^Д^)「よろしい。それではトラブルシューターたち、期待していますよ。
初対面の方もいるでしょうから、お互いの自己紹介から始め、
チームメイトとして親睦を深めてからミッションに臨んでくださいね」
( ,,^Д^)「それでは、DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>」
(;'A`)「は」
「い」、と続くはずだったドクオの返事よりも早く、黄色い光線が彼を覆い尽くした。
床に大きな焦げ跡だけを残し、DOKUO-A-MELANCHOLY-<3>は蒸発した。
その瞬間、クローン施設でDOKUO-A-MELANCHOLY-<4>が目を覚ました。
( ,,^Д^)「大丈夫。次のクローンはもっと面白い作品を書いてくれるでしょう」
- 119 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 02:18:10 ID:tNwbwsD20
- 13.<解散>
( ,,^Д^)「それでは、COOL-A-STRAIGHT-<4>はこちらの部屋へ。
他のみなさんは解散してもらって構いません。
<第二総合案内区画>へと直行してもいいですし、一旦帰宅して装備を整えても良いですよ」
( ^ω^)「ぼくは都市の図書館に寄って<第二総合案内区画>の地図を調べたいお」
ξ゚⊿゚)ξ「ではわたくしは、近くの書店で地図を探してみますわ」
川;゚ -゚)「そ、それじゃあ、わたしはどうやって合流しようか……?」
( ^ω^)「処罰を待っているのは時間の無駄だから、そうだおね……
各自用事を終え、一時間後にまた、このビルの入り口で集合しようお。
DOKUO-A-MELANCHOLY-<4>も恐らくここに帰ってくるだろうし」
ξ゚⊿゚)ξ「あら? どうして、彼がここにまた帰ってくるのですか?」
( ^ω^)「《Collector》様にぼくたちがどこへ行ったのか聞かなければ、
どこへ行っていいのかわからないじゃないかお。
まさか、たったひとりきりで反逆者の始末に向かうなんて命知らずな人なのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「あの人のことは知りませんが、普通に考えるとそうですわね。
こんなに素晴らしく理知的に思考の組立ができる方が[チームリーダー]だなんて、
感激しましたわ! これはもうミッションは成功したも同然ですわね!」
- 120 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 02:29:38 ID:tNwbwsD20
- “最新技術が使われた”新装備といって渡されたものは、細く短い棒だった。
ブーンもツンデレも首を傾げている。
少し長い発煙筒のように見えるが、外れそうな蓋はない。
( ^ω^)(《Collector》様から支給された物だから、
都市に貢献できる素晴らしいものに違いないお。
何もそんな難しいことは考えないでいいか……)
( ^ω^)「それじゃあ、超能力感知器と新装備のこれはぼくが持つお。
クスリは[幸福係]のTSUNDERE-A-TTACK-<3>が持っていてほしいお」
ξ゚⊿゚)ξ「無くさないようにしますわ」
ブーンは新装備をポケットに入れておくことにした。
ポケットは深く、新装備は小さいものなので、動きに支障はない。
飛び出し、落とす心配もなさそうだ。
- 121 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 02:32:06 ID:tNwbwsD20
- ブーンが超能力感知器の電源を入れた。
二十センチほどの扇形の盤に様々な数値があらわれる。
今はゼロを示しているので『〇.〇〇』と表示されていた。
盤の左右の隅に細やかな穴がいくつも開いていた。警告音はそこから鳴るらしい。
扇形の盤からつながって下に持ち手が伸びている。
しっかりと握れるように持ち手は太く、柔らかな素材でできていた。
下に向かうほど細く、小さくなっていくのでベストのポケットに差し込むことが可能だ。
( ^ω^)「それじゃあ、一時間後に。
全員が揃ってから、改めて自己紹介をしようお」
ξ゚⊿゚)ξ「わかりましたわ」
川;゚ -゚)「あ、ああ……」
ブーンが超能力感知器の電源を切ると、各々が行動へ移った。
ブーンとツンデレはブリーフィングルームを出ていき、
クールはタカラに連れられて隣の部屋へと入っていった。
- 122 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 21:22:16 ID:tNwbwsD20
- 14.<『V.I.P』>
( ,,^Д^)「COOL-A-STRAIGHT-<4>」
川;゚ -゚)「ハッ! いかなる罰も受けます、《Collector》様!」
( ,,^Д^)「本当ですか?
ここは、コンピューターすら目の届かないわたしの私室ですよ?」
川;゚ -゚)「えっ?」
クールは思わず声を上げた。階級が高いほど、
コンピューターへの絶対なる信奉者――コンピューターにより近い人間――だと思っていたからだ。
どんな状況だろうと絶対に、「コンピューター」と呼び捨てにするなんてありえない、と。
( ,,^Д^)「質問をします。いいですか? あなたの知識を総動員させて答えてくださいね?」
川;゚ -゚)「は、はい」
( ,,^Д^)「スレッドに一定時間書き込みが途絶えた場合、
書き込み不能になる現象を何といいますか?」
- 123 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 21:26:38 ID:tNwbwsD20
- 川;゚ -゚)(なんだって? どういうことだ? ……本気で言っているのか!?)
疑問がクールの頭を埋め尽くす。なんと答えるべきなのだろうか。
この【シュガー・ボード】で書き込み不能――発表も感想も出来ない――になるだなんて、
コンピューターから<思考公言規制>を受けない限り、起こり得ない。
更に、スレッドに一定時間書き込みが途絶えた場合、と《Collector》は言った。
そうなってしまっても――丸一日、一週間、一ヶ月と経過しても――書き込めなくなることはない。
読者はいつでも続きを求める声を書き込め、作者は発表の目処を伝えることができる。
川;゚ ー゚)(二ヶ月以上投下の間が開いた場合はコンピューターから警告が届き、
三ヶ月以上の場合は義務を果たさない反逆者として処刑されるから……
『そんな現象は起こり得ない』が正解だろう。いや、しかし……もしかすると……)
正直に、今頭の中にある答えを口にするべきだろうか? クールは自問する。
一番はじめに思い浮かんだ考えを……? しかし、そう答えれば“間違い無く”反逆者と判断される。
次の“自分”に再教育プログラムを施されるかもしれないし、今の“自分”は死んでしまうだろう。
川;゚ -゚)(超能力を使うか……?)
( ,,^Д^)「おっと、超能力を使うのはなしですよ。
ここに超能力感知器がありますから、反応すればすぐに処刑します。
質問の答えも、あと十秒以内に答えられなければ蒸発させましょうか」
川;゚ ー゚)(何を考えている? いや、一緒だ。どうせ、このままじゃあ死んでしまう!
わたしに反逆者の疑いをかけていて、尻尾を出す餌としての質問だろう?
しかしこのまま、悩んでいても同じじゃないか! なら、その可能性に……ああしかし……)
- 124 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 21:33:14 ID:tNwbwsD20
- 川;゚ ー゚)「だ」
( ,,^Д^)「だ?」
川;゚ ー゚)「<DAT落ち>……です」
クールが持ちうる限りの勇気を振り絞り、回答した。
彼女の震えた声がタカラへと届く。タカラの表情は変わらない。
引きつった顔の彼女と、薄い笑顔のままの彼の間に、沈黙が流れた。
( ,,^Д^)「よろしい!」
そしてタカラが、弾む声とともに“本物の笑顔”を作り、クールの手を握った。
川;゚ ー゚)「え?」
( ,,^Д^)「“旧世界”についてしっかりと調べているようですね。
<DAT落ち>。これは、今ではもう、なくなってしまった言葉のひとつですよ」
- 125 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 21:45:54 ID:tNwbwsD20
- 川;゚ -゚)「もしかして……」
( ,,^Д^)「改めて自己紹介しましょうか。
秘密結社『V.I.P』に所属しているTAKARAです。
COOLさん。あなたに指令を下すように上から指示されています」
川;゚ -゚)「……《Collector》様よりも上の立場の人間がいるのですか?」
( ,,^Д^)「《Collector》というのは、コンピューターが作った階級制度ですよ。
秘密結社『V.I.P』にはまた別の階級制度があるのです」
秘密結社に属する者たちは、通常、【シュガー・ボード】で使われている
階級名――《Reader》、《Author》、《Planner》、《Collector》――を、結社内では使わない。
彼らは“二重思考”を憎んでいる。
しかし、打ち倒すべき相手が決めたしきたりに従わなければ、この都市の中で未来はない。
二重思考とは、ふたつの相矛盾する信念をこころに同時に抱き、
その両方を受け入れる能力である。都市で生き延びるためには絶対に必要な思考技術だ。
意識的な欺瞞を働きながら――【シュガー・ボード】で殺されないよう、こころにもない言動をとり――、
完全な誠実さ――【シュガー・ボード】のコンピューターを敬愛する――を伴う、
目的意識の強固さを保持する行動。
秘密結社では、誰もが飾り気なくありのままの自分でいなければならない。
世間にさらけ出せない思考を共有し、いつの日かそれが認められる時を目指して、
【シュガー・ボード】内で秘密裏に活動を行う……それが、秘密結社だ。
- 126 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 21:48:54 ID:tNwbwsD20
- 川;゚ -゚)「そうだったんですか……」
( ,,^Д^)「あなたの考えは我々と非常に近いものです。
『良い点だけではなく、悪い点も感想として作者に伝えるべきだ』という考えですね?」
川 ゚ -゚)「はい。『より良い物語を作るために、改善点を伝えるべきだ』と考えています」
( ,,^Д^)「相手が望んでいなくても?」
川 ゚ -゚)「相手が望んでいなくてもです。
作者が自分で考えて、読者の意見を受け入れるかどうかを判断すれば良い。
それがわたしの考えです。
肯定意見以外は排斥するコンピューターの考えには賛同できません」
( ,,^Д^)「非常に素晴らしい考えです。
しかし、『サポートフェアリーズ』にあのような書き込みをしたのはいただけませんね」
川;゚ -゚)(削除された書き込みか……)
( ,,^Д^)「『登場人物に魅力が感じられません。もっと丁寧に人物描写してはどうですか?』
このような書き込みは最も危険なものです。“魅力的な人物”を描写するということは、
読者が憧れ、真似をする……影響力の大きなキャラクターということですね」
( ,,^Д^)「そんなキャラクターがいれば、現実にどういうことを引き起こすか、わかりますか?」
- 127 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 21:55:15 ID:tNwbwsD20
- 川 ゚ -゚)「作中の人物の行動次第で、現在の構造を疑問に思わせてしまう可能性がある、と?」
( ,,^Д^)「その通りです。“その方向に作品が成長されては困る”のです。
“成長した物語を読んで、読者がその方向に成長”する……
これをコンピューターは最も危惧しています。
創作に支えられているこの都市は、創作に最も脆いのですからね」
( ,,^Д^)「“狂った”コンピューターへと捧げている創作意欲がこの都市を回しているのですよ。
良い物語が読みたいから都市内で労働に勤しみ、
良い物語を読んだから都市内で労働に勤しめるのです」
川;゚ -゚)「書き込み時の文面には、より一層気を遣いたいと思います……」
( ,,^Д^)「COOLさんの、その考えは“向上心”があるということです。
それがあったからこそ、旧世界の記録を調べようとしたのでしょう?」
川 ゚ -゚)「どうでしょうか……正直な話、はっきりそうだとは言えません。
『この都市はなんだか堅苦しいな』と思ったのが、
旧世界の歴史を調べるきっかけではありましたが……」
( ,,^Д^)「現状に満足せず、新たな意見を求める。素晴らしいことですよ。それが向上心です。
向上心がなければ良い創作物は生まれにくいですから、
是非、すべての都市住民に持ちあわせて欲しいものですね」
- 128 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 22:00:18 ID:tNwbwsD20
- ( ,,^Д^)「しかし、今の【シュガー・ボード】はコンピューターに征服されています。
その現実的圧力が創作作品の方向性を決めてしまっているのですね」
( ,,^Д^)「言葉がなければ、知識がなければ、思考はできません。
言葉が破壊され、新たに作り変えられているのもそのためですし、
知識が制限され、求めるものが粛清されるのもそのためですから」
川 ゚ ー゚)「なるほど……」
( ,,^Д^)「未だ考えなかった作品の発想を得る……現実から離れる……」
( ,,^Д^)「つまり、そう、“幻想的”になるには、
今ではもう、過去に起こった出来事を、かなり正確に理解するしかありません。
現在のこの都市には、“妄想”はあふれていても“幻想”は存在しませんから」
( ,,^Д^)「今やもう打ち捨てられた<第一総合案内区画>の図書館。
その内にある、誰もが忘れた、コンピューターすら目が届かない本棚に並ぶ本や……」
( ,,^Д^)「口外は反逆だと理解しながらも、
旧世界の世界に思慕の念を抱き続ける老人から話を聞きだすしか、
旧世界の知識を得る方法は残されていません」
川 ゚ -゚)「わずかに残されている旧世界の断片を集めるのが、
秘密結社『V.I.P』の目的……というか、方針なのでしょうか?」
( ,,^Д^)「今はそうしていますが、最終的な目的なコンピューターを止めることです。
薄暗いこの檻を壊し、コンピューターの支配から脱するのです。
旧世界の幸福な状態に戻らなければ、この世界に未来はありません」
川 ゚ -゚)「……全面的に、賛成します。どうか、わたしにもそのお手伝いをさせてください」
- 129 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 22:03:09 ID:tNwbwsD20
- ( ,,^Д^)「もちろん、そのつもりですよ!
あなたに指令を伝えにきた、と先ほども言ったでしょう?
そのトラブルシューターチームでやってもらいたいことがあるのです」
川 ゚ -゚)「ハッ!」
( ,,^Д^)「我々の仲間にかつて『NOT-P-WATCH』という男がいまして、
《Reader》たちへと啓蒙活動を行うのを生きがいとしていたのですが、
先日、とうとうクローンが尽きてしまいました」
川 ゚ -゚)「すいません、少し、よろしいでしょうか?
お言葉ですが、《Planner》様がそう何度も処刑されるのでしょうか……?」
( ,,^Д^)「彼は、“橙色”のベストを着て活動していては、伝わらないと考えていたようです。
同じ位置に立って伝えない限り、しっかりとこころから理解はされないとよく言っていました」
川 ゚ -゚)「……賢いとは、言えませんね」
( ,,^Д^)「その通りです。
都市内で苦労して、ようやく得た力をすべて放棄して活動しているのですからね」
川 ゚ -゚)(……)
- 130 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 22:06:29 ID:tNwbwsD20
- ( ,,^Д^)「そして、あなたにやってもらいたいことは、彼と無関係ではないのですよ。
NOT-P-WATCHの最後のクローン――NOT-P-WATCH-<6>――を殺害したのは、
つい先ほどまで顔を合わせていた、BOON-A-NAITO-<1>ですからね。時期も、つい先日です」
川;゚ -゚)「な……」
( ,,^Д^)「BOON-A-NAITO-<1>は狂信的なコンピューター信者だと、我々は考えています。
彼は【シュガー・ボード】内で“完璧に幸福”であるため、非常に厄介な人間です。
今でも十二分に脅威ですが、これから先、力を身に着けてしまうと手におえません」
( ,,^Д^)「よって、あなたには、彼を殺していただきたいと考えています」
川;゚ -゚)「……」
( ,,^Д^)「今回のトラブルシューティングで彼を“完全に”殺すことができれば最高ですが、
それは難しいでしょう。彼はまだクローンナンバーが<1>。
<2><3><4><5><6>と残っています。まだ、ひとりも自分を失っていない……
つまり、一度も失敗を犯したことがないのです。これが何を意味するかわかりますね?」
川;゚ -゚)「はい」
- 131 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 22:09:24 ID:tNwbwsD20
- ( ,,^Д^)「達成は困難を極めるでしょう。しかし、あなたにはやり遂げて貰いたい。
この時代の申し子……現代の環境が――コンピューターが――作り上げた創作者……
BOON-A-NAITOを、ここで殺しておかなければ、“我々の理想郷”は成し得ません」
川;゚ -゚)(出来るのか? わたしに? BOON-A-NAITOを殺し尽くすことが?)
川;゚ -゚)(“わたしひとりを使って相手をひとり殺す”方法が確実だろうが、
わたしはもうクローンナンバー<4>だ)
川;゚ -゚)(となると、殺害方法も考えなければならない……理由もなく発砲した場合、
『善良な住民を殺した』反逆行為となるため、他のメンバーからわたしも殺されてしまうからな。
このトラブルシューティングで死ぬわけにはいかない。ならば、この方法は使えない……)
( ,,^Д^)「達成してくれますね?」
川;゚ ー゚)(だが、このまま今のような日常を繰り返していても同じじゃないか。
毎日仕事終わりに危険を犯して廃墟へでかけ、本を読んで旧世界の知識を集める……。
いつか、絶対に、死んでしまう、今の環境を変えるしか生き延びる道がないのなら!)
川;゚ ー゚)「はい! 任せてください!」
( ,,^Д^)「ともに力をあわせ、いにしえの栄光時代を現代に蘇らせましょう!」
川;゚ ー゚)(あの頃へと戻るために……わたしの理想の環境を作るために、やるしかないじゃないか。
失敗してわたしが死んでしまっても、わたしの肉体は新時代への糧となる。
ひとりでも多くBOON-A-NAITOを殺害し、少しでもコンピューターの評価を下げてやる……)
- 132 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 22:17:31 ID:heLogK9s0
- 秘密結社か
いいね
乙!
- 133 名前:名も無きAAのようです:2013/01/04(金) 22:52:46 ID:8Evbhl3A0
- 一層楽しみになってきたわ
次 目次