(*゚ー゚)人間プラスチック爆薬
- 48 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:08:28 ID:WgAm1BmM0
- 吐く息が白い。
澄んだ空気の中、男子高校生達がフィールドに散って立っている。
ピッチャーが振りかぶって、白球を放った。
それはバットの下をくぐって、まっすぐ(後で解説を受けたところによると落ちてるらしい)キャッチャーのミットに収まった。
「ストライック!!」
o川*゚ー゚)o「おー!!」
(*゚ー゚)「早いねー」
私達は高校野球の応援に来ていた。
名前を出すのは色々問題がありそうなので、私の応援する方をA高校とする。
私は野球にうるさい方ではないし、むしろ正直ルールに怪しいところがある。
フライでなんでアウトになるのか、未だに納得いく説明にあったことがない。
ま、そんなわけでA高校が野球することと私が観戦に至る理由が誰にも想像付かないとこで、
淳ヒートという女性の存在を持ってくることになる。
ノパ⊿゚)「いいぞ! ○○(高校生の名前を勝手に出すわけにはいかない)!」
ベンチの前で、凛々しい顔つきの女性が声を張った。
彼女が淳ヒートだ。
- 49 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:09:17 ID:WgAm1BmM0
(*゚ー゚)人間プラスチック爆薬のようです
.
- 50 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:11:19 ID:WgAm1BmM0
- 四回の裏。
満塁――と、呼ばれる状況くらいは知ってる――のピンチ。
ノパ⊿゚)「~~!!」
ヒートちゃんが声を張って、ピッチャーの男の子を鼓舞する。
o川;゚ー゚)o「うー、お姉ちゃん、それ逆に緊張しないかなあ」
と、妹の方はハラハラしているようだった。
(*゚ー゚)「ヒートちゃんのやり方なら問題ないんじゃないかなあ」
私はヒートちゃんのことを、知り得る限り最高のスポーツ指導者だと思っているので、
どんな言葉が出てきても、それは最適な効果を生むのだろうと知っていた。
根っからの熱血女子なヒートちゃんは、万年ダメダメだったA高校の野球部を、
たった二年で作り変え、甲子園出場一歩手前まで持っていった素晴らしい監督だ。
その実績が認められて、A高校の近隣では、彼女は【勝利の女神】なんて呼ばれたりしてる。
A高校の一般生徒からの人気は、男女問わず高く、せっかくの休日を彼女の写真を撮りに訪れる子が絶えない。
ピンチはチャンス。
それは彼ら高校生にも言えることらしかった。
何故か。
- 51 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:12:06 ID:WgAm1BmM0
- case1
ノパ⊿゚)「~~!!」
熱が入るとヒートちゃんがベンチから出てくる
↓
手を振り回しての指示、声援、鼓舞
↓
ぶるんぶるんとFカップが揺れる
↓
男子大興奮、シャッター押しまくり、動画撮りまくり
case2
ノハ*゚⊿゚)「~~!!」
ピンチを乗り越える
↓
よくやった!という、部員を褒める優しい声
↓
満面の、綺麗な笑顔
↓
女子大歓喜、シャッター押しまくり、動画撮りまくり
case3
(略)
とにかく、色んな表情が見られるからいいんだそうな。
- 52 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:14:20 ID:WgAm1BmM0
- o川*゚ー゚)o「男の子って分かりやすくて可愛いよねー」
(*゚ー゚)「若さゆえの脂っこさあるけどね」
o川;>ー<)o「オヤジ連中よりマシ」
それは言えてる。
ノパ⊿゚)「球をよく見ろ、○○!」
叫びながら複雑なサインを出すヒートちゃん。
その姿は、女の私から見てもかなりかっこいいのだった。
「ふひひ、『タマ』をよく見ろ……」ヒソヒソ
「ごちっす! ヒーちゃん監督ごちっす!」ヒソヒソ
(*゚ー゚)「脂っこいねー」
o川*゚ー゚)o「まだ可愛いってばさ」
かきん。
ノハ*゚ー゚)「よーく打った! 回れ!!」
- 53 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:17:27 ID:WgAm1BmM0
- ヒートちゃんの指導方法にはすごいと思う点がたくさんある。
彼女が得意なのは、人を奮い立たせる言動。
一挙一動が人の心を燃やし、決して挫けさせない。
山本五十六の言葉をベースに、人の上に立つ存在とはいかなるものかーというのを実践しているだけ。
と、本人は言うけれど、決して万人が真似できるものじゃあないと私は思う。
だって本当なら落胆してネガティブな言葉を投げかけたくなる場面でも、
ヒートちゃんは気分を悪くさせるワードを自然に避けて声をかけるんだもの。
ノパ⊿゚)「大丈夫か?」
まずは、相手が申し訳なく思っている前提で話をする。
そして、その気持ちを傷付けないよう、人をよく見て盛り立てていく。
お調子者、一匹狼、気まぐれなやつ、真面目くん。
色々な相手を瞬時に見極め、それに適した対応をする。
天才的な能力で人を使うヒートちゃんは、人の上に立つべくして生まれてきた人間だった。
ノハ#゚⊿゚)「勝って気持ちよく帰りたいだろ! ここが踏ん張り時だ!」
- 54 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:18:31 ID:WgAm1BmM0
- ***
o川*゚ー゚)o「お姉ちゃんお疲れー」
ノパ⊿゚)「あたしは何もしてないよ。頑張ったのは」
ヒートちゃんが近くにいた部員の頭を脇に抱えた。
ノパー゚)「こいつら一人一人だよ」
頭を拳でうりうりとやられる部員は、みるみる顔が真っ赤になっていった。
それはまあ、おっぱいが顔の真横にあったらそうなるよね。
「か、監督……」
ノパー゚)「ん?」
ぱっ、と手を離された部員は、耳まで真っ赤になっていて、坊主頭の頭皮に至っては日焼けと合わせて赤黒。
o川*>ー<)o「か、かわいい……!」
その、梅干しみたら涎わく、みたいな条件反射のかわいいって価値あるのかな。
年下は私の趣味じゃないからよく分かんないや。
ノパ⊿゚)「ようし、あたしは今日は用事があるからここで解散! 皆気を付けて帰れよ! 寄り道は食事のみ!」
「うっす!!」
- 55 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:21:59 ID:WgAm1BmM0
- 一人だけ幸せな目にあった部員は、ヒートちゃんの目の届かないところでお尻を蹴られまくってた。
ヒートちゃんは部員同士のスキンシップはある程度激しい方がいいと思っているらしいので、見つかってもお咎めはないんだろうけど。
相手チームの監督や、他に応援に来ていた生徒、親御さん達と挨拶を交わすヒートちゃん。
彼女の裏表ない態度は、敵を好敵手に、味方を心強い援軍に変える。
そうして作った人脈を糧に、今回みたく練習試合を組みまくり、また、町内の支援を受けているそうだ。
すごい、ホントにすごいと思う。私には無理だ。
一通り挨拶を済ませたヒートちゃんが、ようやく戻ってきた。
(*゚ー゚)「どこに飲みに行こっか」
ノパ⊿゚)「この辺だと、美味しいもつ鍋出してくれる店知ってるんだ」
o川*´ー`)o「もつ鍋!」
(*゚ー゚)「シャワー浴びなくって平気?」
ノパ⊿゚)「時間かかるからとりあえず着替えだけでいいかな。待たせるのも悪いし」
- 56 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:25:12 ID:WgAm1BmM0
- と、言ってその場で脱ぎ出す。
(;*゚ー゚)「すとーっぷ!!!」
o川;゚ー゚)o「お姉ちゃん、お姉ちゃん、何度言ったら分かってくれるの!?」
ノパ⊿゚)「ほえ?」
ブラの下乳が見えたところで上着を脱ぐのを止めるヒートちゃん。
ノパ⊿゚)「今日確かに寒いけど、そこまでじゃなくないか?」
(;*゚ー゚)「そっちじゃない! そっちじゃないっていうか今日気温5度下回ってるよ!?」
ノパ⊿゚)「ああ、でも別にアタシの下着なんか見ても誰も喜ば――」
o川;゚ー゚)o「そう思ってるのお姉ちゃんだけだね! 間違いないね!」
彼女の欠点を一つ挙げるなら、貞操観念が未成熟なところ、だろう。
それは女系家族に育ち、その上、四姉妹という姦しすぎる環境が整っていたからかもしれない。
三女のヒートちゃんは、危険視されるほどの次女の性的な開けっ広げさから完璧に隔離されていたため、
無菌状態となり、受けるべき刺激というものがなかったのだと言える。
四女のキュートはちょっとませた女の子であったので、早い段階で男の子との距離感を掴み、
すくすくと正しいフワモテスリムの愛されガール(笑)へと育ったのだけど。
- 57 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:26:54 ID:WgAm1BmM0
- とにかく私は上着を下ろさせ、トイレで着替えてくるよう指示。
(;*゚ー゚)=3
ヒートちゃんいい人なんだけど、ちょっと危ないんだよね、色々。
生着替え写真に、高校生主導で一枚1000円で売ってるらしいよ? 大丈夫?
オナペット(下品?)的な意味ならまだいいけど、実害出してるからちょっとタチ悪いとこもあるんだよなー。
男の人に勘違いさせちゃう言動多いクセに、フリ方雑っていうか爆散させちゃうし。
女の子もその気にさせちゃうモテ女の割に鈍感だから結果的に爆散させちゃうし。
跡形もなく消し飛ばすハートブレイカーというか、【ハードブレイカー】なんだよね……。
彼女の歩いた後ろには骨すら残らないと言われた時期もあったってキュートに聞いた。
ノパ⊿゚)「お待たせー」
o川*゚ー゚)o「あ、着替えはやっ」
(*゚ー゚)「着替えはやっ」
o川*゚ー゚)o「ちゃんとユニフォーム畳んだ?」
ノパ⊿゚)
ノハ´ー`)
o川*^ー^)o「畳みなさい。洗濯するものでも畳みなさい。女として」
- 58 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:28:58 ID:WgAm1BmM0
- ***
「あら、いらっしゃい、ヒートちゃん!」
ノパ⊿゚)「おばちゃんこんばんわ! 三人だけど空いてる?」
「お座敷でも平気?」
こちらを見てから、大丈夫、と返すヒートちゃん。
席に通されて、私は店内を見回した。
(*゚ー゚)「昔ながら、ってお店だね」
ノパ⊿゚)「もつ鍋とぬか漬けが最高なんだ! えーっと、まず、飲み物は?」
o川*>ー<)o「私、明日日曜日だから! 飲めちゃうから!」
(*゚ー゚)「ビール二杯でへべれけになるじゃないのよ。あ、私ホッピーセットのー、白!」
ちなみにビール二杯ってのはグラス二杯。
ウィスキーだとシングルロック半分で潰れる。
酒好きだけど無類の弱さを誇るキュート。
舌は一番確かなんだけど、寝られるとめんどうなんだよね。
ノパ⊿゚)「生と白ホッピーとウーロン茶一つずつお願いしまーす!」
- 59 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:32:18 ID:WgAm1BmM0
- 乾杯! とジョッキをぶつけ合う私達。
ノハ>⊿<)「くーっ!!」
(*゚ー゚)「ん、おいし」
いまいちビールってのが苦手な私でも、ホッピーならイケるっていうのが不思議。
焼酎も甲類とか全然飲めないのに、割っちゃったら美味しくいただけるんだよね。
o川;´ー`)o「飲めるもん、私だってちょっとくらい」
(*^ー^)「はいはい、二軒目でね」
いじけるキュートの前にぬか漬け盛り合わせが出てくる。
それと茶豆。
ノパ⊿゚)「最近二人とも仕事はどうなんだ?」
豆をもりもり食べながらヒートちゃんが訊いた。
私は、ノータイムで「楽しいよ」と答えた。
ノハ^⊿^)「そうか、そいつはいいことだ!」
o川*゚ー゚)o「私は普通、かなー」
ノパ⊿゚)
ノパー゚)「キュート、人生ってのはな……」
(;*゚ー゚)「待って! 今回は何時間話すつもりなの!? っていうかキュートも受け答え学んでよ!」
- 60 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:33:10 ID:WgAm1BmM0
- ヒートちゃんは人に厳しく、身内に厳しく、自分に厳しい。
そのため一度スイッチが入ってしまうと人生を語るモードになってしまう。
前回は三次会までかかって結局結論らしい結論も出ないまま、
酔いつぶれたキュートを何故か川に叩きこむという暴挙に出たのだれど、
ノハ;゚⊿゚)「おお、いかんいかん。またキュートが川で入水自殺をはかってしまう」
酔っていたヒートちゃんの記憶は曖昧な、というか都合のいいように改変されているのだった。
さすがに酔いの醒めてた私は色々あったのを完璧に覚えている。
(;*^ー^)(あれは大変だった)
つc日
あ、ホッピーおいし。
o川*>ー<)o「もーつーなーべー!!」
(*゚ー゚)「おいしそう!!」
ノハ*゚⊿゚)+「だろう! 美味しいぞ!」
- 61 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:34:30 ID:WgAm1BmM0
- もつ鍋は、もつの脂が汁に溶け出していて、ニラやゴボウなどのダシと合わさり、素晴らしい香りを放っていた。
小皿に取り、スープをすする。
(*゚ー゚)
つ ずずっ
(*゚ー゚)
(*>ー<)っ☆
ばんばん
言葉が出ないほど濃厚な旨味。
もう無言でテーブルを叩くしかなかった。
ノハ*゚⊿゚)「美味かろうて!」
o川*´ー`)o「美味かろうて!」
キュート、なんかちょっと相槌としては違う。
けどまあいいや、おいしー!!
- 62 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:36:35 ID:WgAm1BmM0
- ノハ*゚⊿゚)「〆にはご飯もいいし、ラーメンも美味しいし、うどんも――」
(*>ー<)「きゃー、迷――」
ぴくり。
ノパ⊿゚)
(*゚ー゚)
o川*´ー`)o「ラーメンで食べたいなあ。塩ベースのスープでしょ? 絶対美味しいって」
- 63 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:38:19 ID:WgAm1BmM0
- (*゚ー゚)「ヒートちゃん、もしかしてさっき忘れ物しなかった?」
私はヒートちゃんに確認した。
彼女は、何かを探すように手荷物を見て、答える。
ノパ⊿゚)「ああ、アタシもそんな気がしてたんだ。ユニフォーム畳む時に出しちゃったのかな」
o川*゚ー゚)o「えー、お姉ちゃん、大丈夫? 何忘れたの?」
ノパ⊿゚)「まあちょっと、ね。すぐ見つかると思う」
外はすっかり暗くなっていて、かなり寒そうだった。
あんまり、独りで出歩くべきじゃあないと私は判断した。
(*゚ー゚)「私も行こうか?」
ノパ⊿゚)「いいよ、大丈夫。二人はここで食べてて」
んー。
(*゚ー゚)「二人で行った方がいいと思うな」
o川*゚ー゚)o「あ、じゃあ私も――」
ノパ⊿゚)「これ、代わりに飲んどいて」(*゚ー゚)
- 64 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:39:49 ID:WgAm1BmM0
- ***
びしっと敬礼をしたキュートに見送られ、私達は一路、練習試合をした野球場へ。
土手にあるそこはナイター設備なんてものもないので、遠くの街灯や月明かりだけが頼りの暗い場所となっていた。
ヒートちゃんはバットケースを背負い、その下にブルゾンを着ている。
ジーンズに包まれた、締まったお尻とそこから伸びる長い脚を後ろから見ると、ソフトボールのプロ選手みたいだ。
まあ、普通はバットケースを三本も持ち歩くことはないんだろうけど。
道中、ヒートちゃんは私に尋ねてきた。
ノパ⊿゚)「本当に覚えないのか?」
(*゚ー゚)「うーん、全然」
分からないものは分からない。
まあ最近、ちょっとした情報源を得たけれど、全然あれから連絡もないし。
ノパ -゚)、「そうか……。それだと困るな」
困り顔のヒートちゃんを見るのなんてなかなかないことだ。
写真に収めて売ったらいくらに――
いけないいけない、お金に目が眩んでいる。
- 65 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:41:36 ID:WgAm1BmM0
- そして、球場に到着。
私達は、とりあえずベンチボックスに荷物を下ろし、軽く準備体操を始めた。
ノパ⊿゚)「どれっ、くらいっ、だとっ、思うっ?」
(*゚ー゚)「二桁、いかない、くらいだと、思うっ」
背伸びをしていると、暗がりから複数の影が立ち上がった。
1、2、3……9か。
「ご明察!!」
そして、張り上げられるやたらハイテンションな男の声。
( "ゞ)「よくぞ気付いたよくぞ出てきたよくぞここまで参られたァ!!」
出てきたのは、野球のユニフォーム姿の男。
異様な集団のあり方に、私達は思わず動きを止めた。
まず、全員が背がひょろりと高く、手足が長いのは置いておこう。
そこまではまあ普通だ。
装備が変だった。
左手に着用したミットには短い刃が生えており、腰にはトゲの生えた黒い球が三個。
さらにスパイク。これが凶悪なデザインの刃に包まれていた。
- 66 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:42:22 ID:WgAm1BmM0
- ノブスマ
( "ゞ)「我らの名は! 【野無須磨】ァ!!」
「「「「@*#$¥!!!」」」」
(*゚ー゚)
ノパ⊿゚)
_,
(*゚ -゚)「え?」
_,,_
ノパ⊿゚)「え?」
さすがに九人同時に名乗られると全く何言ってるんだか分からない。
- 67 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:44:18 ID:WgAm1BmM0
- (#"ゞ)「だから! 我らの名は! 【野無須磨】ァ!!」
「「「「た@*け#$し¥!!!」」」」
(;*゚ー゚)(たけしだけ聞こえた)
ノパ⊿゚)(たけし……)
(#"ゞ)「一回で聞き取れよ! 声張ってるの結構疲れるんだから!」
そう怒られても。
(;*゚ー゚)「それで、えーと……あなた、たけしさん? なんの用?」
(#"ゞ)「誰がたけしだ! 俺はデルタだ!」
ノパ⊿゚)「なんの用かと訊いている、たけし」
( "ゞ)「かぁっち~ん」
口で言うんだ、そういうの。
- 68 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:46:40 ID:WgAm1BmM0
- (#"ゞ)「まるでこいつはアレだな? 小馬鹿にされてるな? 我々【虐凶ナイン】が小馬鹿にされてるなァ!?
まるで犬のクソのように! まるで猫のクソのように!」
ひょろ長い集団が不服そうに頷く。
その姿は木の棒の影が頭だけちょこちょこしてるみたいだった。
ぎゃっきょうないん。
ネーミングセンスはなんとも言い難いけれど、さっき店の中で感じた殺意は本物だった。
訓練を受けたプロにしか出せない、尖った殺気。
しかし、私には納得いかないことがある。
ヒートちゃんも同じことを思ったみたいだった。
(*゚ー゚)「【野無須磨】と言ったら、【死の六族】の中でも暗殺特化の集団でしょう?」
ノパ⊿゚)「それがどうして真っ向からぶつかろうとしてくるんだ? わざわざ自分の存在をアピールしてまで」
( "ゞ)「よくぞ尋ねた訊いてくれたァ! そこには深くて長くて黒くてヤヴァァァイ話があるんだよ!!」
でも、と野無須磨デルタ。
- 69 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:48:07 ID:WgAm1BmM0
- ( "ゞ)「話せないねぇ、全く、もって、は・な・せ・ま・せ・んっ! No speaking!!
まるで山に転がる岩のように! まるで野に咲く花のように!」
(*^ー^)イラッ
ノハ^⊿^)イラッ
( "ゞ)ニコッ
(*゚ー゚)「帰っていい?」
( "ゞ)「あー待て待て待て待て待てぇい!! ここで逃げたら後が面倒だぜぇ?」
(*゚ -゚)「えー」
( "ゞ)「えーじゃない! えー、じゃあ!」
ノハ-⊿-)=3
ノパ⊿゚)「――野無須磨が用あるのは私か? しぃか?」
- 70 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:49:49 ID:WgAm1BmM0
- ( "ゞ)「それはもう、お二人にでございますともォ! パチパチパチパチィ!」
拍手をする虐凶ナインの面々。
全く同じタイミングで手が打たれるので不気味だ。
ノパ⊿゚)「わかった。じゃあとっとと始めよう」
( "ゞ)「えっ、いいの? 何の用か、とか訊かなくていいの?」
(*゚ -゚)「どうせ殺り合おうって話でしょ?」
ぶすっ
( "ゞ)「そうなんだけど、そうなんだけどさ、もうちょっとお話しようよ」
こいつ絶対モテない。
断言する、こいつ絶対モテない!! あと女性経験ない!! 絶対ない!!!!
- 71 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:50:47 ID:WgAm1BmM0
- ノパ⊿゚)「しつこいな。よっ、と」
ヒートちゃんがバットケースから中身を取り出した。
それは、鈍い銀色の、俗に言う金属バットだった。
彼女の得物はそう、この金属の棒だ。
私は私でバッグの中からいつものナイフを取り出す。
ノパ⊿゚)「早く帰ってもつ鍋を食べよう」
(*゚ー゚)「うーん、そうだね。キュートも心配だし」
( "ゞ)「まさか、我らに勝つつもりか? この野無須磨・デルタ・関ヶ原率いる虐凶ナインに!?」
(;*゚ー゚)「ミドルネーム!?」
( "ゞ)「あ?」
ノハ;゚⊿゚)「こら、しぃ!」
(;*゚ー゚)「あ、いや何でも……」
めんどくさそうだから流してどうぞ。
- 72 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:54:32 ID:WgAm1BmM0
- ( "ゞ)「いいだろう、その度胸に免じて生き残るチャンスをやろう!」
親指と人差し指で輪を作り、残った3本を立てて、デルタ……関ヶ原?は言った。
( "ゞ)「三球だ、三球勝負! 三球凌げば貴様らの勝ちとして、身を引いてやろう!!」
ノパ⊿゚)「たった三球でいいのか?」
( "ゞ)「もちろん! そのバットで打ち返しても、避けてもいい!」
(*゚ー゚)「本気? そんな緩い条件出して裏が――」
( "ゞ)「プレイボォオオオオオル!!!!」
( "ゞ)「ピッチャー! 振りかぶってぇえ!!」
そして、「ピッチャー」となった野無須磨は、
- 73 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:55:47 ID:WgAm1BmM0
っていうか、虐凶ナインの全員が振りかぶって投球した。
( "ゞ)「スーパー分裂魔球!!」
.
- 74 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:57:52 ID:WgAm1BmM0
- 三球って完全に嘘だ!!
ノハ;゚⊿゚)「しぃ!!」
(;*゚ー゚)「きゃっ!!」
迫りくる黒い棘付ボールの行き先はてんでバラバラのようで、互いが互いをカバーし合い、
逃げ道をしっかりと潰していくように速度さえ調整されていた。
一瞬の内に状況を判断して、自らに迫る危険が四個であることを確認する。
自分に当たりそうな一番近い球を、身を捩って避ける。
二個目を、頭を下げて躱す。
三番目の球をナイフで受け流そうとして、弾かれる。これが予定外だった。
そして、四球目が腹部にめり込んだ。
(;*゚ -゚)「ぐっ!!」
重い、猛烈に一球一球が重い。
( "ゞ)「ん……?」
ノハ;゚⊿゚)「しぃッ!! 大丈夫かッ!?」
さすがヒートちゃん、全弾を捌ききったみたいだ。
- 75 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 22:58:59 ID:WgAm1BmM0
- ( "ゞ)「お前、食らっておいてなんで血が出ないんだ?」
この夜闇の中でも血が出たかどうか見えるのか。
妖怪野衾の名を引いているだけある。
(;*゚ー゚)「なんででしょうね?」
( "ゞ)「鎖帷子の類でも付けているのか、それとも……」
正解は、食らう瞬間に腹筋を超、力ませただけです。
ホントは棘刺さって血出てますし、それ気合で抑えてるだけですし、めっちゃ痛い。
すっごく痛い。
(;*゚ー゚)「ふふふ……」(すっごく痛い)
(;*゚ー゚)(すっごく痛い!!!!)
ノハ;゚⊿゚)「すまない、そちらにまで手が回らなかった」
私の横に着いたヒートちゃんが申し訳なさそうに顔を覗き込む。
その間にも、虐凶ナインが私達を遠巻きに取り囲み、投球フォームを完了させていく。
( "ゞ)「分身魔球その第二段! 振りかぶってぇええ!!」
- 76 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:00:45 ID:WgAm1BmM0
- ノパ⊿゚)「チィッ!!」
虐凶ナインのインチキ分身魔球第二段は、投手の内六人が等間隔に包囲し、
さらに、三人がジャンプして空中からも放たれる、かなりえげつない攻撃だった。
( "ゞ)「完全包囲! 犯人貴様に逃げ道はない魔球ゥウウウ!!」
だった、という過去表現を用いたのは、まあ、なんとか凌いだからなんだけど。
どす、どす、どす。
ノハメ - )「……ぐ、が、が」
(;*゚⊿゚)「ヒート、ちゃ……」
主に、ヒートちゃんが盾となってくれて、という最悪な方法でね。
- 77 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:01:52 ID:WgAm1BmM0
- ヒートちゃんの得物が地面にどしんと落ちる。
次いで、持ち主も地面に倒れ伏した。
私を庇ったせいで、背中、脇腹、太腿と棘付ボールが刺さったままになっている。
きっと急所だけは外せたのだろう、まだ息はある。
これはまずい、あと一球だなんて(厳密には九球というふざけた状況)耐えられない。
基本的に条件が同じなら数が多い方が勝つ。当たり前だ。
こんな時に限ってびぃお姉ちゃんは出てこない。
いや、もしかしたら前回と同じようにどこかでサブの部隊を叩いているのかもしれない。
ノハメ - )「しぃ、しぃ、きいてくれ」
(;*゚ -゚)「ヒートちゃん! 今は喋ると危ないよ!」
ノハメ - )「しぃ……聴け!!」
私は、はっとした。
クグツリ
彼女が、【傀儡里】ヒートが、私に何かを言おうとしている。
ノハメ - )「~~、~~、~~」
歌うように、その言葉の数々は紡がれていった。
そして、全てが私の鼓膜を震わせ、心を奮わせ、手足を振るわせた。
- 78 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:04:15 ID:WgAm1BmM0
- 私は、即座にヒートちゃんのめっちゃ重たい金属棒を、否、金属爆裂棒「ジバクくん」を持ち上げた。
そして、バッターの構えを取る。
( "ゞ)「ここがお前らの九回裏ァ!! 人生最後のバッターボックス!! サヨナラデッドボールで死ねえええええ!!!」
そう叫びながら、虐凶ナインは縦一列に並び、振りかぶる。
( "ゞ)「ヘビィマシンガン魔球ゥ!!」
要は連続投球であり、ぶっちゃけた話が避けられても次のヤツが追いかけて狙うという、
ああ、なに私冷静に分析してあげてるんだろう、こいつらの遊びを。
(* - )「あー、頭なんかすっきりしてる。ありがと、ヒートちゃん」
ノハメ ー゚)「~~~~」
歌のように続く言葉が私を突き動かす。
心が「戦え」「戦え」「勝て」「勝て」と言っている。
( "ゞ)「この間断なき黒い流星をどう防ぐ!!」
(* -゚)「防がないよ」
ホームラン予告のポーズってこうだっけ。
ま、間違ってもいいや。
(*^ー^)「――全部、打ち返したげる♪」
- 79 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:05:49 ID:WgAm1BmM0
- ***
【傀儡里】の能力の一つ、人体操作は凄まじかった。
初めに私の痛覚を麻痺。
次に神経信号を強くして、筋力を一時的に強化。
さらに、アドレナリン、エンドルフィンの分泌促進。
それらをたった数個の単語だけで操作する、ヒートちゃんが異常なのだとも言えた。
さすが【傀儡里四姉妹最強の傀儡師】。
こと、闘争能力強化に関してはまさに最強だった。
結果。
( "ゞ)「騙してないでしょ、結局一人だったんだからズルしてないでしょ」
(*゚ー゚)「はい、黙ってね」
たった一人の野無須磨・デルタ・関ヶ原を地面に正座させるまでに至る。
- 80 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:06:59 ID:WgAm1BmM0
- 原理は分からないが、いわゆる分身の術みたいなものを使っていたらしい虐凶ナイン。
結局のところ、本当は野無須磨・デル(略)1人でした、というのが手品のタネだった。
その発動時間の制限が、ちょうど三回投球するまで。
どうやら、全球打ち返されたことはないようで、完全敗北だ、と言って野無須磨(略)は膝をついた。
さすが暗殺集団、忍者っぽい。
というか、もはや大道芸人だね。
( "ゞ)「失礼な。これでも習得に命かけてたんだぞ」
ノハメ゚⊿゚)「……それで」
なんとか持ち直したヒートちゃんが、「ジバクくん」を喉元に突きつけながらすごむ。
( "ゞ)「それで、って?」
飄々とした態度のまま野無(略)が肩をすくめた。
ノハメ゚⊿゚)「なんでアタシ達を狙った」
( "ゞ)「ははは、それね。言おうかな、どうしよっかな、どうしてほしい?」
(*゚ -゚)「……」
ノハメ゚⊿゚)「……」
- 81 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:07:42 ID:WgAm1BmM0
- ヒートちゃんが無言のまま「ジバクくん」を振りかぶった。
(;"ゞ)「あー、ちょっと待った待った、それ、結構アレだろ? 飛び散るんだろ?
まるで犬のクソのように、猫のクソのようにさ」
ノハメ゚⊿゚)「そんなこと気にすることもなく逝ける。気にするな」
(;"ゞ)「そんな脅されたら喋る気も萎えちまうよ、得物下してくれないか?」
ノハメ゚⊿゚)「しぃ?」
(*゚ー゚)「……なんかもういいかな。実際情報持ってなさそうだし」
( "ゞ)
(;"ゞ)「わー!! ちょちょちょ――――」
ノハメ゚⊿゚)「南無三」
- 82 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:08:25 ID:WgAm1BmM0
- 【 「ジバクくん」 】
・一般人が扱うとただのクソ重い金属バット。
・ジャストミートした際にグリップを絞るように捻ると、爆裂する。
・爆裂時に使用者が怪我をしないよう、火薬の位置・方向が設定されている。
・爆裂すると本体が消し飛び、ぶつかった物も爆散する。
・最後に、某有名ネコ型ロボット(旧)の声で「じゃすとみぃとぉ」と声がする。
- 83 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:09:36 ID:WgAm1BmM0
「じゃすとみぃとぉ」と聞こえる頃、(略)はちょうど肉片になっているのだった。
.
- 84 名も無きAAのようです 2013/12/31(火) 23:12:05 ID:WgAm1BmM0
- その後、服装を整え、血や汗を拭って店に戻ると、キュートは完全に酔いつぶれていた。
煮えてスープの蒸発したもつ鍋にダシを足してもらったはいいけど、
目の前でちょうど人のもつが爆散するのを見ていたので、ちょっと食べられなくなっていた。
ヒートちゃんは気にせず食べてた。美味しそうに。
- 87 名も無きAAのようです[sage] 2014/01/01(水) 01:59:17 ID:E0IhcojE0
- おぅ...爆散....乙
- 88 名も無きAAのようです[sage] 2014/01/01(水) 04:02:34 ID:mXzbSCH20
- ぐろいわ
乙
- 89 名も無きAAのようです[sage] 2014/01/01(水) 18:51:44 ID:sgfK1Ygk0
- じゃすとみぃとぉつ
おもろい
前 次 目次